小春日和布団二人の住む屋敷は洞窟の中にあるのだが、完全なる閉鎖空間ではない。
所々に穴があり、そこから外部の日差しや雨粒が入ってくる。
なので、晴れた日は洗濯物も干せる。
乾いた頃合いを見計らい、洗濯物を取り込むクジンシー。
後で一気にたたむからと、縁側にポイポイと投げていく。
最後に布団を掴み、どっこいしょーっと縁側にボスッと置く。
干したて独特のぽかぽかさと柔らかさと匂いが、彼を誘惑する。
(ダメダメ、せめて他の洗濯物をたたんでから)
ウズウズするも耐え、縁側に座り衣服等をたたんでいたが……
(……ちょっとだけなら……)
時間が経てば、ただのお布団。
この楽しみを堪能出来るのは、今だけ。
すぐ起きるからと自分に言い訳をしつつ、クジンシーは布団にダイブ。
思っていた通り……いや、それ以上の心地よさに思わず目を閉じうとうとし……
「……って、危ねぇ!!」
ガバッと起き上がる。
危うく眠るところだったと胸を撫で下ろしていると。
「起きたのか」
すぐ側から声が聞こえ、そちらを振り向くとノエルが縁側に腰かけ本を読んでいた。
「あれ、ノエル?いつの間に……『起きたのか』?」
聞き捨てならない言葉に、クジンシーは眉をひそめる。
「え、あれ……もしかして俺、寝てた?」
「ああ、ずいぶんと気持ち良さそうな寝顔だったぞ」
「うっそ!?」
気づかぬうちに夢の中へ旅立っていた事実に、驚きを隠せないクジンシー。
キョロキョロと辺りを見回すと、布団以外の洗濯物が見当たらない。
「洗濯物なら、もうたたんで仕舞っている」
「マジかよ、俺ガチで眠ってたのか……」
クジンシーはあちゃー……と頭をかき、ノエルに代わりに仕事をさせてごめんと謝罪する。
「それは構わない。ただ……」
「ただ……?」
「独り占めは、ズルくないか?」
「次は、俺も呼んでくれ」と優しく笑いかけるノエル。
思いがけないセリフにクジンシーはきょとんとなるが、すぐに笑顔で「オッケー!!」と返したのだった。