🍰イメソン ストーリー【ベテルギウス / 優里】
Ikeは星を眺めるのが日課になりつつあり、LucaはもちろんIkeとのんびり過ごせる時間が大好きなので、横に並んで星を見上げているが、なぜそんなに熱心になるのかがわからずある日尋ねる。
「ねぇIke、なんでそんなに毎日星を眺めてるんだい?あっ、いや、決して退屈とかではなくて。」
Ikeは長いまつ毛を数回瞬かせ、ゆっくりとLucaの顔を見た。
「星って何十年・何百年前に爆発して光になったもの達が、今こうして肉眼で見えるように輝いているんだって。もしかすると僕たちのいた時代のものもあるのかなって。別に今が退屈だとかそんな事はないけれど、元の時代の事も忘れないように、どんなに小さな繋がりでも見ていたいんだ。」
「へぇー!Ikeは物知り!」
「そんな事ないよ」
Ikeはくすっと笑って、また夜空を見上げる。その横顔はただ綺麗なものを眺めるだけでなく、寂しさや憂い、そんなものも含まれているように見えた。
Lucaはそういえばと幼少期に父親に言われたことを思い出す。
「昔から人が死んだら〝星になる〟って言うじゃん?」
「ん?うん。」
「だったらもし、過去に戻る事になっても俺たちがおじいさんになって、その後、隣同士に星になれば、こうして眺めてくれる人達がいるってこと!POG!」
Ikeは少しだけ瞳をキュッと縮こませ、一度大きく息を吸う。
「またLucaは突拍子も無いこと言うね…でも、うん。そうだね。」
「もしかするとリスナーも俺たちを見れるかも!」
「でもまずは、同じ空で星にならなきゃ」
「それは~……できる!!」
Lucaは時折夢のような事も自信満々に言うものだから、Ikeもいつも本当にできるように感じてしまう。
「俺が~こうしてIkeの手をひっぱって~」
大袈裟にLucaが繋いだ手をグルグルと回して笑う。
「大丈夫だよ。同じ空の下、生きてるんだから。」
僕たちが手を取り合っていれば大丈夫。
【アンコール / YOASOBI】両片思い💙目線
元の時代に戻る方法が見つかった。
そんな事を聞かされたのは、久しぶりにLuxim全員が一堂に会した時だった。
何よりこの集まりも、Voxから「皆に話したいことがある」という言葉で集まったのだけれど。
僕は難しい言葉でもないはずなのに、理解するのに時間がかかった。
それは他の皆もそうみたいで、すぐに喜びで声を上げる者は誰一人としていなかった。
いや、皆嬉しくないはずはない。
ただ、この世界で手に入れたものも大きすぎるものなのだ。
準備期間は1ヶ月。
それまでに皆に報告をして、身支度をする。
帰る方法は同じくして過去から来た、この5人が揃っていないといけないらしい。
僕の我儘で皆の決意を揺らがせたくない。
重い首をほんの少しだけ僕は縦に振った。
それから時が経つのは本当に早かった。
まさに瞬きをする間に過ぎていった。
そして遂に明日、僕達は元の時代に戻る。
明日、僕の世界は終わりを告げる。そう思うと晴れているはずの空も、淀んで見えてしまう。
Lucaへの想いは告げられずにいた。
本当は離れたくない、ずっとずっと好きだった。
準備期間中もできるだけ他のメンバーともコラボを行い、沢山話した。
でもLucaにはもっと話したい事が沢山ある。
もう数日前に枯れてしまったと思ったけれど、また一筋の涙が頬を伝った。
特に意味もなく街を歩く。
この景色も見納めかと思うと、いつもと違って見えた。
ふと目の前にストリートピアノがあった。
公園の中心に置かれたそれは、雨や風に打たれて見た目はボロボロだったが、指を白鍵に滑らせると音が鳴った。
僕はそのピアノの椅子に座り、ここが外だということも忘れて歌っていた。
すると突然またポーンとピアノが鳴った。
目を瞑っていた僕は後ろから近付いてくる存在に気付けておらず、ふと横を見るとLucaがいた。
驚いて歌を止めてしまった僕の目を見て、Lucaは「続けて」と言い、歌っていた曲のメロディーをピアノで続ける。
誘われるがままに、Lucaのピアノと音を重ねる。心地よくて、なんだか懐かしくて、溢れてくる想いが止められなかった。
曲が終わり、音が止む。
僕はまた泣きじゃくってしまった。
どれだけ泣き虫なんだろう、恥ずかしいなぁ。
するとふわりと抱きしめられる。
「大丈夫、大丈夫」と何度も子供をあやす様に背中をトントンと一定のリズムで優しく叩かれる。
「明日元の時代に戻るんだよ?」
「うん」
「Lucaは寂しくないの?」
「寂しいよ」
「じゃあ…!どうして、そんなに冷静なのさ!?」
どうしようもない事なのに、Lucaに怒鳴っても意味がないのに。悲しくて声を荒らげてしまった。
「僕はLucaが好き。友達としてだけじゃなく、一人の人間として。だから離れるのが寂しいんだよ。」
遂に口から出てしまった。でももういいや、明日にはもう会えないんだから。
「俺もIkeが好き。もちろん友人としても、一人の人としても。ずっと、ずっと好き。」
そうして唇がそっと重ねられる。
「なんで……なんで今日なの?」
「大丈夫だから。」
「なにがさ?」
「この世界で俺やIkeが紡いだ言葉も音も全部なくならない。いや、俺がなくさない。絶対にどんな事があっても覚えてるし、元の時代に戻ったとしても俺は必ずIkeを探し出す。」
「なんでそんな自信を持って言えるのさ…」
「んー?何でだろう。でも俺、子供の頃からワガママだから、やる!って言ったら絶対やるよ?」
Lucaはふふんと鼻を鳴らして胸を張る。
でも彼ならそうだと不思議と思う。
「ううん、僕も。僕も絶対にLucaを忘れない。また会いに行く。」
「もちろん!」
どんな場所でも、たった2人きりでも、僕とLucaが音を紡げば大きな舞台になる。
もう一度、続きをならそう。