☘️💚『あの子たちが愛されていると知ることが出来ますように』トードの部屋のドアを、音が立たないよう静かに閉める。
溜まった息を吐き出した途端にふと身体から力が抜けて、僕は思わずその場に座り込んでしまった。
━━━━━本当の親じゃねぇくせに!
トードが僕に吐き捨てた言葉を反芻する。
その声は怒鳴っているに等しいものだったのに、まるで迷子の子供みたいに今にも泣き出してしまいそうな顔をしていたトード。
僕の横を走り抜けていく彼を、僕は引き留めることができなかった。
…だって、トードの言う通りだ。僕は彼の本当の親じゃない。
血の繋がりもなければ精霊の種族も違う、僕はただ彼を育てただけ。
箱に入れられ、捨てられていた彼らを拾って。
本当に偶然でしかなかった、僕らの出会いは。
僕があの日コーラを買いに外に出なければ、あの道を通らなければ。
僕より先に誰かがトードたちを拾っていたら。
そうしたら彼らの育ての親は、僕らじゃなくてどこかの誰かだったんだ。
そんなぽっと出の他人のことを、親だと思えないのは当然のことだと思う。
兄弟との距離感すら測り得ないトードなら尚更だろう。
それに彼には随分口煩いことも言ってきたし…もしかしたら彼にとっては鬱陶しい存在でしかなかったのかもしれないな。
━━━━━━━━━でも。
例えそうだったとしても、あの子たちをここまで育ててきたのは他の誰でもない僕とマットだ。
毎日、毎日…トードの火傷の手当をしたのも、トムの涙を拭ったのも。
紛れもない僕らなんだ。
知らぬ間に頬を伝っていた涙を乱暴に袖で拭って、僕は立ち上がった。
あぁ、いつまでも泣き言なんて言っていられない。
だって、僕は親だから。
誰がなんと言おうと、僕はトードとトムの親なんだ。
あの子たちが笑ったら、一緒に笑って。
あの子たちが泣いたら、受け止めてやって。
あの子たちが苦しんでいるなら、助けてやる。
そして何より、沢山の愛をあの子たちにあげるんだ。
もう要らないって、お腹いっぱいだって言うくらい沢山。
あの子たちが自信を持って、『自分たちは愛されている』と言えるくらい。