陽だまりで花冠を またか。
眼前の暖かな日差しを浴びて艶やかに輝く黒髪を眺めながらシルベストは背筋を伸ばしていつもの営業用スマイルを維持するようにつとめた。我が主君は不躾で不快極まりない文言を涼しげな笑顔で流している。まあ大抵この手の輩が話すのは相手にする価値もない利己的で無意味な話だ。
ただ、うちの主君は優しすぎる。今だってすぐに追い返してしまえばいいものをうんうんとうなづいて相手が望む言葉を与えてやっている。そのべとついた汚れた手で陛下に触れるな俗物め。
調子に乗った奴はニタニタとただでさえ不出来な顔をさらに歪めて、そのはち切れそうな腹を揺らした。
「いやぁ、エルハーシャ殿下と話していると時がたつのを忘れてしまいますな」
1993