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    rica_km

    @rica_km

    👹滅:💎🔥/🔥🧹中心リバ含雑食、時々作文。ねんどーる&オビツろいど歴2周年(ねん🔥兄弟持ち、💎×2)。かなり20↑成人済

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    rica_km

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    「ドロライお題:ホストクラブ」で書いた話に加筆した全3章を支部で全文公開しています(ここに掲載しているのは2章までです)

    歪な夜を越えて
    https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=19968050

    お題:ホストクラブ01
     今、宇髄はこれまでの人生で最も酔っていた。
     煌びやかな内装がぐるぐる回って見える。これまで酒には極めて強く、ザルとかワクとか称されるほどだったし、自分でもそう思っていた。だが、ほとんど休む間もなく飲み続けていれば自分も酔うことを初めて認識した夜だ。
     ここはホストクラブである。宇髄はホストではなく、客だ。
     お目当てはこの店の煉獄という男。同じ大学の学生だ。

     煉獄と初めて会ったのは学食で、宇髄の友人の友人だった。彼は非常に目立つ風貌をしていたが、その派手さに反して実に品行方正な学生である。——と、周囲には思われていた。
     知り合ってから学食で顔を合わせるたびに、どうにも読みきれない彼の表情が気になって幾度か声を掛けたこともある。その後、彼をホストクラブの情報誌上で見かけた。その特徴的な風貌で人違いということはないだろう。そう思って煉獄本人に尋ねると、苦学生である彼は割のいいアルバイトとしてホストクラブのボーイをやっていたが、その店でもっと身入りの良いホストをやらないかと誘われたそうだ。最初のうちはそう悪くもない売上が立っていたのだが、売掛金の三百万ほどを踏み倒したまま客に飛ばれた事から、今ややめられなくなっているということだった。
    「どーすんの、それ……」
    「働いて返すしか方法はないな」
     苦学生で三百万もの借金を抱えているくせに、そう言った彼は笑うのだ。一体どんな精神構造をしているのか分からない。
    「例えば、自己破産するとかさ」
    「あれは人生で一度しか切れないカードだぞ。それを三百万ごときで使うのは勿体無いと思わないか」
    「じゃあいっそ、もっと借金増やす?」
     宇髄の言葉に笑って首を振った煉獄は、今なら頑張れば返せると言うのである。宇髄はうーんと唸った。自信があるのか馬鹿なのか。煉獄に対する興味がまたさらに上乗せされた。
    「心配してくれるなら、きみも飲みにきてくれると嬉しい。初回は五千円で飲み放題だ」
     きっと煉獄も本気ではなかったんじゃないかと思う。それに、宇髄だってその瞬間は「面白そう」と口では言いつつも、金を払って野郎と飲むのは酔狂にもほどがあると思っていたくらいだ。

     だがしかし、あまりにもつまらなかったサークルの飲み会を早々に抜けた日、この近くに煉獄のいるホストクラブがあったはずだと思って訪れたのだ。
     その店は老舗の部類の店で、若いホストもかなり教育されているのか話術も巧みだった。煉獄もまた、話をするのも聞くのも実に巧い。その日はとりわけ酒が旨く、つまらなかった飲み会に感謝するくらい気分のいい時間を過ごせた。客もよく教育されているのか、ただ騒がしいだけではないし、思っていたよりも品のいい店だったこともある。
     友達が働いている店だからと、気軽な気分で宇髄は幾度かその店へ顔を出した。せめて友達の成績の足しにでもなればと本指名も煉獄にして。

     ところで学生の宇髄にそんな金があるのかといえば、ある。
     宇髄の家はややいかがわしい方面の業種であり、ホストクラブこそないが、女に稼がせるような店を何店舗か経営していた。宇髄は成人してから学生ながらにその店を手伝ってもいる。給料は微々たるものだが親からカードを渡されており、それなりの「小遣い」が使える立場だった。
     というわけで、毎月ちょこちょこと煉獄を目当てに飲みに行った。学食で話す時よりもずっと打ち解けて、親身に話を聞いてくれたり、二人で思わずバカ笑いするような話に興じたこともある。煉獄と飲む酒は美味かった。それが全て宇髄の支払いでも気にならない。他の女へ気疲れするような接客を煉獄にさせるよりも、自分と気楽に話して彼の売上になるなら悪くないと思ってもいた。もちろん、そもそも宇髄の親の金を使っているわけだが。



     さて、ある春の日。その日は唐突な暑さで、初夏のような気温だった。
    「来月はおれのバースデーなんだが、」
    「あ、そうなの。おめでとう」
     ありがとうと答えた煉獄の笑顔は普段より控えめで、宇髄は思わず何かあったのかと聞かずにはいられなかった。
    「きみ、おれのバースデーイベントに来てくれないか」
    「あ、店に? いいけど」
    「まぁ、今月はナンバーから外れてしまうかもしれないから、ちょっと微妙なのだが……きみに会えればそれだけでも元気が出る」
     確か煉獄の在籍する店では売上十位までがナンバー扱いだ。もちろん規定の売上を超えていることが条件になるが。ここはかなりの太客を掴んでいる手練れの多い店なので、上位への壁は他店よりも厚い。だが煉獄は新人の中ではかなり頑張っている方で、どうにかギリギリ入っていることが多かった。
    「今月、ギリギリなの?」
    「うむ。締日にさらに追い上げられるかもしれないがな」
     そう言って肩を竦める。悲壮感もないし、あまり順位にこだわりがあるようにも見えない。だがどうあっても売上は出さなきゃいけない立場だ。決して楽観できる状況ではないのだろうが、煉獄はそういったネガティブな感情をほとんど見せたことがない。
    「じゃあ、誕生日の前祝いで、締日に行ってやろっか」
    「本当か! きみが来てくれるなら心強いし、何より、楽しく過ごせる」
     心から嬉しそうな笑顔を見せる煉獄に、宇髄は心躍った。喜ばれるってこんなに嬉しいものか、とこそばゆくなる。頼られているとか、煉獄の手助けができるということが純粋に嬉しい。せっかくなら、誰よりも早いバースデープレゼントとして、煉獄にナンバーをプレゼントしたい。
     まるで季節外れの気温にすっかりのぼせてしまったようだった。



     ——そう思って店へやって来た、今日は締め日だ。今月の最終営業日。これで今月の売上順位が決まる。煉獄は来月のバースデーイベントをナンバーで迎えるか否かの岐路にいる。
     もう既にベロベロになっている宇髄は、他の客からシャンパンを入れてもらっていた煉獄を呼び戻すために、追加のオーダーを入れた。すると煉獄はくすくすと笑いながら宇髄の隣にやってきた。
    「きみがそんなに酔っているのを初めて見た。もうやめておけ、身体に障るぞ」
    「触っていいの?」
    「酔っ払いめ。そういう店じゃない、駄目に決まっているだろう」
    「店の外なら?」
     宇髄の目には煉獄の顔が二重に見えてきている。困ったように笑う顔が少しずれて二つある。煉獄が増えた、お得だな、と思って、宇髄はふふふと独り笑う。
    「店外はしないぞ」
    「こんなに飲んでもだめ? 今日だけ特別に俺とアフターしよ」
    「おれはしない」
     あぁそうだ、別に煉獄は好き好んでホストをやっているわけじゃなかったと宇髄は思い出す。追加で頼んだボトルが届いたが、もう飲める気がしない。こんな風に思うのは初めてだった。くらくらする。
    「店の外できみと遊ぶのなら、この店を辞められた時だろうな」
    「そっか……」
     マイナスを埋めて、それなりのプラスがなければ、学生の傍らでこんなしんどい仕事してられないよなと宇髄は思う。
    「あとどのくらい売上あればいいの」
     尋ねた宇髄の耳元へ煉獄の唇が触れそうなほど近づいて、秘密だぞと囁く。そしてそっと指を四本立てて見せた。
    「あー……、なるほど……」
     四百か、と宇髄は蕩けそうな脳で反芻する。さすがに親から勘当されるだろうなと思うと笑いが漏れた。でもいいかな。別にどうなっても構いやしない。そもそもそれだけ払えるカードを持たされてるんだから、使える時には使ってやればいい。
    「じゃあ、バースデーで派手にやろっか。今日でナンバー獲ってさ、誕生日は花も出すし、シャンパンタワーもするし、」
    「本当にいいのか? 無理することないんだぞ」
    「それで来月目標達成したら、俺とアフターしよ。ずーっと、アフターしちゃうの……」
     この店から煉獄を連れ出して、それで、俺は煉獄とずっと一緒に……末長く。


     店のソファで寝落ちてしまった宇髄に肩を貸してやった煉獄は、ボーイにチェックを頼んだ。届いた伝票を見れば、今月の目標には充分達していると思われる。
     宇髄が店に足繁く通ってくれるようになってから煉獄の売上は安定するようになっていた。煉獄がやっと掴んだ太客はまだ宇髄だけだったが、充分な戦力があった。何しろ太客がいるという精神的安定が接客の余裕を生み出して、良い循環が生まれたのだろう。
     このままでいけば、本当に近々この店を卒業することが出来そうだ。
    「すまないな、宇髄」
     宇髄がなぜ自分に対してここまでするのか、煉獄は分からないわけではない。だがこの仕事をしている以上は、彼を金蔓以上のものにはできないだろう。そういう場所だと理解して彼も踏み込んでいるはずだが。

     まさかきみまでガチ恋営業にハマってしまうとは。よもやよもやだ。


    02
     宇髄が目を覚ますと、そこは見知らぬベッドだった。糊の効いた白いシーツは清潔な匂いがする。
     寝返りを打ってみれば、向こうにもう一台ベッドがあった。室内は遮光カーテンのせいで薄暗いが、閉じ切れていないところから午前中の日差しが差し込んできている。この清潔そうな部屋は、察するにビジネスホテルのツインルームらしい。
     どうやってここへ辿り着いたのか、全く記憶がない。思い出そうとするだけで頭痛が酷いし、胃袋は石のようにガチガチで重い。これは二日酔いに違いない。宇髄にとっては人生で初めての経験だ。
     不意にガチャリとドアが開く音がした。出入口ではなく、浴室のドアだ。乾燥した室内に白くけぶる湯気が放たれるのが見えた。次いで姿を現したのは煉獄。肩からバスタオルを掛けた濡れ髪姿で、視線は一向にベッドへは向かず、宇髄へ背を向けている。肉付きの良い尻が露わで、宇髄は布団の隙間から瞬きも忘れてそれに見入った。
     身体を少し前傾させた煉獄は、バスタオルを頭から被る。髪を混ぜるように水分を拭き取っている姿を後ろから見ている宇髄は、尻肉の間が見えそうだと思わず息を詰めた。
     煉獄はこちらに全く関心を向けていない。宇髄にこうして視姦されているなど思いもよらないのだろう。その背徳感がより宇髄の劣情を煽って、下腹が熱を持つのを感じた。
     風呂上がりでよほど暑いのか、煉獄は空調のパネルの前に立って室温の設定を変更しているようだった。角度的に今度は煉獄の性器が丸見えになる位置になり、宇髄はそれを見ながら自分の下着の中へ手を入れた。下着を少し下げ、立ち上がっていた自分のものを強めに握る。だが大きく動かせばシーツが擦れる音でバレかねない。そのままじっと息を潜めていた。
     煉獄は冷房を強めに入れたようで、室内へ冷気が噴き出す音が響き始めた。
     室内にはライティングデスクが設えてあり、その前の壁には大きな鏡がある。煉獄はそこへ立ってドライヤーをかけ始めた。濡れ髪から見え隠れする横顔は端正で、そこから続く身体は均整が取れている。見てくれだけではない使える筋肉が程よく乗った肢体は、美しい陰影に彩られていた。
     ドライヤーの騒音に室内が満たされているこの間、宇髄はふうふうと弾む息を布団の中へ押し隠しながら、自分の性器を扱き続けた。二日酔いで体調は最悪だが、それを凌駕する性欲に取り憑かれていた。
     手櫛で髪へ温風を通していた煉獄の肩から、タオルが滑り落ちる。それを拾うためにドライヤーを止めた煉獄は、宇髄へ背を向けたまま床へ手を伸ばす。その瞬間、腰を突き出した姿勢のせいで秘所の奥までもが垣間見えた。ベッドの中の熱気で宇髄の額にはびっしりと汗が浮く。
     拾ったタオルを椅子へ掛けた煉獄は、素っ裸で何も隠す様子すらないまま、ベッドの方へ近づいてくる。初めて目にした煉獄の身体に釘付けだった宇髄は見ている光景に現実感が希薄だった。自分のいるベッドへ煉獄が歩いてきているのだと、やっと気付く。煉獄の腹直筋の下から生え揃う陰毛と、そこに平時の状態で収まっている太い陰茎までもが隠されることもなくもう目の前にあった。完全に手遅れだ。
     思い切り布団を剥がされ、宇髄は煉獄の何の動揺もしていない視線と出会したその瞬間に、射精した。それは煉獄の腹まで勢い良く飛び散る。最悪だ。煉獄の腹へ飛んだ宇髄の精液は、ゆっくりと下垂して肌を淫猥に穢してゆく。
     全く馬鹿みたいな光景だった。下着を半端に下ろしてベッドへ潜り込んだままガキみたいなマスかきをし、視姦していた当人に見つかったのだ。言い訳の余地もない。せめてそれを拭って始末して謝ろうと宇髄は跳ね起きる。
    「ごめん煉獄、あの、」
    「起きるな」
     宇髄は煉獄に肩を抑え付けられ、再び背をシーツに戻した。煉獄の声も表情も、言い含めるような響きで、不思議と怒りの色はないようだった。あるとすれば、無関心だろうか。
    「おれはきみの家を知らないし、おれの家へ連れて行くわけにもいかない。普段なら酔客は店でスタッフが対応するのだが、今日は店の事情でそれができなかったんだ」
     それゆえ、近くのビジネスホテルまで宇髄を運んできたのだと煉獄は言う。その落ち着き払った様子はおよそ全裸とは思えぬ普段通りの堂々とした態度だったし、宇髄のみっともない半裸姿も目に入っていないかのようだった。だが、煉獄はふと視線を下げて自分の腹を見遣る。白濁はゆるゆると煉獄の毛にまで絡み付き、汚らわしくも淫靡だ。
    「もう一度シャワーを浴びたら、おれは帰る。おれが部屋を出るまで、きみはベッドから動くな」
    「怒っ……たよね」
     恐る恐る口にした宇髄の言葉に、煉獄は首を横へ振った。
    「昨夜言ったように、おれは客と店外はしない主義だ。今回は事情があったとはいえおれにとって不本意であることに変わりはない。このことは互いに綺麗に忘れる方が良い関係を続けられると思うが、どうだろう」
    「——そう……ね。煉獄の言う通り。俺もそう思うよ」
     今この状況を不問に付した上に忘れてくれると言うのなら、宇髄にとって悪い条件ではない。つまり煉獄は仕事の延長線上のプライベートタイムに宇髄とこれ以上のコミュニケーションは取りたくないということなのだろう。
    「ところでここは前払いだったので、既に支払い済みだ。きみはチェックアウトまでゆっくり過ごすといい」
    「そ、それは俺が出すよ」
     こうなったのも俺のせいだし、と言った宇髄に煉獄は掌を向けて制止した。
    「それも忘れていい」
    「でも……」
     宇髄の呟きへ被せる勢いで「あぁでもきみがそこまで言うのなら、」と言って煉獄が笑顔を見せた。人懐っこく見えるが、これはきっと本心ではない作り物の笑顔だと宇髄は理解する。
    「次に会う時は期待してしまうかもしれないな」
    「そうだな。そうしよう。バーズデーイベント、絶対行くよ。花も出すし、プレゼントも用意する」
    「大丈夫だ、そういうのは要らない」
    「でもせっかくイベントなんだし」
     言い募る宇髄に小首を傾げて見せた煉獄は微笑を見せて、シャワーを浴びてくると背を向けた。
    「きみが身ひとつで来て、楽しくたくさん飲んでくれる方がおれはずっと嬉しいんだ」
    「わかった。——そしたら当日は俺もちゃんと盛り上げるよ」
    「楽しみにしてる」
     そう言い残して、バスルームのドアがパタンと閉まる。
     宇髄には今の自分の対応がセーフなのかアウトなのか、皆目わからなくなっていた。



     勢いよく熱めのシャワーを出した煉獄は、強めに肌へと当てる。
     シャワーヘッドを手にして下腹へと翳し、乾き始めていた白濁を指で撫でた。引っかかりを感じる少し固い感触が緩み、指へ絡み付いてくる。その指を口元へ運びながらシャワーヘッドをフックへ戻す。空いたもう片方の手は下生えを掻き分けて、膨らみ始めたペニスを掬い上げるように撫で始めた。
     静かに吐いた溜息は水音で掻き消されているはずだ。宇髄にもあれだけ言い含めたのだ、覗きにくるような大胆な真似などさすがにしないだろう。煉獄は目を閉じ、指をしゃぶりながら自分が己に齎す感触に集中する。
     初めて知る宇髄の味と匂い。さっき目にした宇髄の熱り立ったペニスは長大で、大柄な彼の身体にあって存在感のある逞しさだった。自分の指などとは比較にならないなと思いながら口に入れる指を増やした煉獄は、あれが欲しいなと思いながら舌を伸ばし、ペニスを扱く手を早めてひとり行為に没頭した。

     初めて宇髄に会ったのは大学の学食で、友人を介してだった。その長身と人目を引くルックスに、煉獄もまた一瞬で目を奪われたのだ。
     煉獄はゲイである。ホストクラブのスタッフからホストへと転身する決心がついたのも、指向からして公私をきっちり分けられると踏んだからだ。稼ぐという目的のためだけに集中するなら上手くやれる。そう思って始めたし、やるならばきちんと稼がなくては意味がないと思っていた。学びの時間を幾許か削って効率良く稼ぐのなら、奨学金を繰上げ返還できるくらいにしたい。
     そういうわけで、煉獄の目標額は奨学金の三百万円である。宇髄へ言った売掛金の踏み倒しもあったが、実際の金額は十万ほどである。煉獄が月に三百万も引っ張れる客がいたなら、とうにナンバー常連と張り合えるだろうが、新人アルバイトがそこまで戦えるはずもない。だがしかし、ホストクラブで遊び慣れている女性ならば察しが付きそうな話も、どうやら宇髄は業界に疎いせいなのか素直なのか、言葉通りを信じているらしかった。
     つまり、宇髄はあれほど恵まれた容姿と、学生としては有り余るほど自由になる金を持ちながら、少々歪な世間知らずさを併せ持っている。彼はとても可愛い。人は皆、宇髄を見た目からクールなタイプだと判断するようだが、彼はまるで大きな子供だ。
     宇髄が店へ来るのを煉獄が楽しみにしているのは本当の本音だ。会えるのなら、会いたい。酔って口が軽くなり、彼はぽろりと愚痴やら失敗やら弱音を吐露することがある。そんな時に煉獄は、彼と友達でも恋人でもないのに容易く本音に触れられた自分の立場を嬉しく感じることもあった。
     だが、売上については全く別だ。宇髄からも引っ張れるだけは引っ張らなくてはならない。客の誰かをえこ贔屓してやっていけるほど自分が売れっ子な訳ではないことなど、バックヤードに張り出される成績表を見るまでもなく煉獄は思い知っている。
     目標貯蓄額は三百万円。バースデーイベントという大舞台であと四十万円ほど余剰が作れれば、ホスト卒業の日も見えてくる。
     売上額によってバック率は変わるが、イベント日にはできれば百万円の売り上げを作りたい。これは煉獄の通常の成績からすれば、およそ一日で達成できる額ではない。だが、宇髄と、彼に張り合う女性たちを上手く使うことがもしできたら可能性があるかもしれないと踏んでいた。

     シャワーの水音に紛れながら、声を殺して静かに達した煉獄は、虚脱感でバスタブの中へ座り込んだ。
     宇髄が自分をどう見ていたのかは、少し前から気付いていた。それは煉獄にとって喜ばしいことではあったが、同時に彼からも容赦なく売り上げを作らなくてはならないことに罪悪感も生まれた。だが、きちんと目標を達成できないならすぐにホストなどやめるべきだ。金のために選んだ仕事なのだから。
     そう思って、宇髄とのいつ途切れるとも知れない蜜月を営業時間だけ煉獄も楽しむことにした。今日が最後かもしれないと見送りをする度に思いながら。
     だが意外なことに、宇髄は本当に煉獄に対して劣情を抱けるらしい。今日宇髄の前に身体を晒したのは、それを確かめるためだった。

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    rica_km

    PROGRESS宇煉・天桃前提の💎🏅です
    💎🏅・🔥🍑は、どちらも従兄弟関係(年齢設定とか詳細は齟齬が出そうなのでw、ふんわりで…)
    🏅19歳(大学生・成人)・🍑16歳(高校生)の3歳差。両思いながら🍑が未成年の上、🏅が注目を浴び易い状況であることから色々堪えているところ
    💎🔥はいずれも社会人で恋人同士
    💎が一人暮らししている部屋へ🏅は泊まりに来るほど懐いているし、秘密も共有している…
    ひみつとつみひとつ◆01◆01 Tengen side
     俺のマンションには、従兄弟の天満が時々泊まりに来る。いや。時々よりは、もう少し頻繁に。
     立地が便利だからというのは理由のうちほんの一部に過ぎない。
     天満は抜きん出た才のせいで少々注目され過ぎているもので、自宅近辺には大抵マスコミ関係の誰かしらが潜んでいるらしかった。横柄だの生意気だの好き放題に言われやすい天満だが、あれで結構繊細なところもあるのだ。注目の体操選手として世間の注目を浴びるのも無理からぬことだが、衆目に晒され続けて疲弊するメンタルが有名税とは到底思えない。フィジカルにだって影響を及ぼすことくらい想像に難くないはずなのに、それでも世間様は若干十九歳の青年を好奇心の赴くままに追い回して好き放題に書き立てる。
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