ショタくんとコアろきくん「お」
道端に座り込んでいる、ふわふわの生き物。
俺の方をじっと見つめた後、ゆっくりと近づいてくる。
俺は驚きと疑問でその場から動けなくなっていて…ぴた、俺の足元でその生物が動きを止めた。
そっと抱き上げると、思っていたよりふわふわであったかい。
「お」
そんな変な鳴き声を上げた生き物は、ぎゅっと俺を抱きしめた。
◇
「…愛咲陽お前ェ、拾った場所に戻してこい!」
そう教室で俺に怒鳴るかっちゃん。
ふるふると首を左右に振れば、俺の腕の中の生き物…コアラになった焦ちゃんを奪い返そうと手を伸ばしてくる。
俺は咄嗟に“個性”を発動し、かっちゃんの動きを止めた。
「だめ!こあろきくんはおれがめんどうみるのー!」
「コアろき…?」
不思議そうに首を傾げたデクくん。
俺は先刻目の前で起こった“個性”事故を話した。勿論驚かれたけど、納得もしてくれて。
左右違う色のコアろきくんの頭を、デクくんが優しく撫でた。
コアろきくんは、不思議そうにデクくんをじっと見ている。
「デクくんだよ、こあろきくん」
「お?」
「でーくーくーん!」
「お」
俺たちのそんなやり取りを、A組の皆は微笑ましそうに見ていた。
◇
「駄目だ、戻してきなさい」
「なんで!ひとりじゃかわいそうだよ」
「なんでもだ。轟、お前もいい加減愛咲陽から離れろ…」
そう言った消太さんが、コアろきくんを俺から引き剥がそうと掴む。
いくら引っ張ってもコアろきくんは離れない。
っていうか痛い!痛いよ!握力どうなってんのコアろきくん!
俺が痛がる素振りを見せたので、消太さんはため息を吐きながら諦めた。
「へへ、こあろきくんもおれとはなれたくないよねぇ」
「お!」
「全く…じゃあ今日は俺が寝袋で寝るから、愛咲陽と轟はベッドで寝ろよ」
「うん、消太さんありがとお!」
翌朝、コアろきくんは焦ちゃんに戻ってた。ちょっと残念だなぁ。