ショタくんと番くじ「愛咲陽、いい加減俺のスマホ返してくれ」
「だめ!まだみるの!」
「オイオイ愛咲陽、本物の俺たちよりフィギュアのが良いってのか〜?」
そう揶揄うように俺の頭をつついたひざしさん。
勿論答えはNOだ。生身の消太さん達に敵うグッズなんて存在しない。否、存在し得ない。
だけど、だけど…このフィギュアは別だ。めちゃくちゃ欲しい。今すぐ欲しい。全国の販売店舗買い占めたいくらいには欲しい。
そう言った意味も込めて、俺は二人をキッと睨みつけた。
「ただでさえ消太さんのぐっずすくないのに、こんなにかっこよかったらかいしめられちゃう!ひざしさんもかっこいいし、このふたつせなかあわせでかざったらぜったいかっこいい!」
「愛咲陽、何体欲しい?」
「ちょ、待て待てイレイザー!早まるなって!」
「離せマイク、俺は今すぐ制作会社に行く」
「落ち着けってば!」
そんな二人を放置して、俺は一人職員室から出る。勿論イレ先も一緒に。
向かうは1年A組の教室…そう、こんかいのくじの協力者を得る為だ。
その人の名前は、緑谷出久…彼は真正のヒーローヲタクだから、俺の気持ちを分かってくれるはずだ。
グッと拳を握り締めた俺は、無意識に口を開いた。
「ぜったいぜっっったい、消太さんとひざしさんのふぃぎゅあてにいれてやる!」
そんな俺を、偶然廊下を歩いていた生徒達が優しい目で見守っていた。