ショタくんと悪の象徴今日もクソ親父の拳が降ってくる。
俺は、ただただ耐えた。
ちっぽけで弱々しい俺は、小さく縮こまる事しか出来ないから。
いつものように、ちいさくちいさく。
「…やぁ、こんにちは」
俺の上から降ってくる、優しく心地良い低い声。
思わずそろりと顔を上げると、さっきまで居たクソ親父はいつのまにか居なくなっていた。
そして、俺のそばにしゃがみ込んだ…スーツ姿の、男性。
誰だろう、この人は。俺を、殴ったりしない?
「初めまして。今日から君の家族になる者だ…そうだなぁ、先生とでもよんでくれるかい?」
「せん、せえ…」
「そう、良い子だ」
そう言った“先生”と名乗る人物は、俺の小さな身体を軽々と抱き上げた。
全然ブレず、安定した腕…凄く安心する。あったかい。
表情を伺うように見上げると、先生の顔はなかった。
…あれ、もしかしてこの人。
「僕の名前はオール・フォー・ワン、今日から君は…死柄木命(みこと)と名乗りなさい」
拝啓、前世の父さん母さん、友人達。
皆より先に死んでしまってごめんなさい。でも俺、何処かの誰かに生まれ変わりました。
姓は死柄木、名は命…どうやら俺、今日から敵になるみたいです。
まぁいっか、衣食住はちゃんと補償してくれそうだし。
「せんせえ、これからよろしくねぇ」
「あぁ、勿論…宜しく、僕達の可愛い命」
これは、俺が最高の魔王の右腕になるまでの物語だ。