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    Shai_mk

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    Shai_mk

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    新快夏祭り開催お疲れさまでした!夏祭り開催時に載せていたものです。
    浴衣最高!って思ってるムッツリ新くんと、不覚にもときめいてる快くんをどうぞ!

    #新快
    newFast

    夏祭り 心地いい大きな太鼓の音と、夏独特の湿った生ぬるい空気の中を黒羽と歩く。夜店の眩しい電球に誘われる蛾のように、似たような服を着た人々が集まっていた。
     オレ達も例に外れることなく、同じように明かりに吸い寄せられていく。顔も判別しにくく、似たような恰好、そしてこの人混み――「こんな状況じゃ犯人の特定に時間がかかりそうだ」――頭の中で浮かんでいた考えが自分の声で聞こえてきてびっくりする。思わず隣を見れば、いつの間にか手に入れたらしいたこ焼きを片手に、呆れたような顔の黒羽がいた。
    「人の考えを読むんじゃねーよ」
    「オメーの頭ン中物騒すぎだろ」
     せっかく祭りに来てんのにとボヤく同じ顔に、ほんの少しだけ申し訳なくなるが「しょーがねーだろ、職業病なんだよ」と憎まれ口を返してしまう。そんなオレの様子に黒羽は酷く楽し気に笑いながら、オレの口に熱々のたこ焼きを押し込んできた。熱っ!

     服部が文句を言いそうなたこ焼きを分け合って、焼きそばや白馬には食べ方が分からないであろう焼きトウモロコシと、育ち盛りのオレ達は目についた食べ物を雰囲気と共に口に運んでいく。時々、いつ買ったのか分からないベビーカステラを渡されたり、見覚えのあるお面が増えていたりして驚かされたりするのが面白い。
     そんな調子で騒がしい人混みをゆるゆると歩いていると、浴衣の袖を軽く引かれる。視線を向ければ、目の前の男がニヤリと笑った。
    「勝負しようぜ」
     齧りかけのリンゴ飴が指さした先は射的屋だ、確かに先ほどの型抜きよりはいい勝負ができるかもしれねー、が。
    「いいけど、マジック禁止な」
    「なら、オメーも事件禁止」
    「オレは別に好きで事件と遭遇してるわけじゃねぇだぞ」
    「えーどうだかぁ」
     勝負を仕掛けるような笑いを浮かべると同時に、食べかけのりんご飴がどこかへ消える。しまった先がベタベタになりそうだな、おい。
    「おっちゃん、2人分よろしく」
    「はいよ、千円ね」
     渡された木製の銃に一発百円のコルクを詰めながら、ルールを適当に決めていく。
    「小さい菓子は一点」
    「でかいのは三点な」
    「玩具はどーする?」
    「いらねーしパスで、あの変わったウサギの人形は……」
     言いかけた所で「やだー!」と女の子の大きな声が聞こえてくる。先客の親子がどうも揉めているらしい。
    「ミルクちゃんとって!」
    「んー、とは言ってもなぁ」
     父親らしき男が困り果てて頭をかいている。とうとう涙目になり始めた子供に、黒羽がしゃがんで手を差し伸べた。ポンッと軽い音と共にさっき取ったピンクのヨーヨーを出現させ「どうしましたお嬢さん」などと聞いている。キザヤローめ。
    「ミルクちゃんがね、ミルクちゃんがいたの……」
     要領の得ない説明に、父親に話を聞いてみると、困った表情で話してくれた。
    「実は先月無くなった娘の人形にそっくりで」
    「無くなった?」
    「ええ、洗って干していたら無くなっていたんです。ぬいぐるみの作家さんから買った一点ものなので、間違いは無いと思うんですが……」
     その台詞を受けて黒羽とおっちゃんの顔を見つめると、慌てたように「ネットで適当に買ったから知らないよ」と弁明した。
     これはどっちの話も鵜呑みにできない。親子は似たぬいぐるみと間違えているのかもしれないし、おっちゃんが盗人でなければ善意の第三者だ。返すかどうかはおっちゃんの気分次第といったところだろう。
    「工藤、ミルクちゃんを落としたら何点?」
    「十点」
    「負けたら?」
    「……何でも言う事を一つ聞く、とか?」
    「いいぜ」
     返答をした瞬間軽快な音が響いて、コルクが人形にぶつかる。それはもうばっちり重心から少し上のウィークポイントにだ。しかし人形は僅かに揺れただけで元の位置に戻った。
    「あり?」
    「ははっ、見た目より重いみてーだな」
     黒羽が呻いているうちに大きめの菓子を一つ落としておく。はい、三点。無言で人形をじっと見つめる黒羽の目は真剣だ、これはマジで取られるかもしれねぇ。女の子に人形を取ってやりたい気持ちもあるが、いう事を聞かせる権利の方がオレは欲しい。なので姑息に菓子を撃ち落としていく……別に勝負外で狙っても良いわけだし。
    「なぁ」
    「どーした、降参か?」
    「んなわけねーだろ、これ十発勝負にしねぇ?」
    「却下」
    「なら一発貸してくれ」
    「それこそ却下だっつーの」
     恐らく黒羽の脳内で人形を落とすのに五発必要と出たんだろう、しかしこれは勝負だ、負けられねーんだよ。
     じっとりとした視線を感じつつも点数を稼いでいると、ため息と共に研ぎ澄ました気配が強くなった。
     ガチャ……ガチャ、ガチャッ
     銃の仕掛けが跳ねる音、それが立て続けに三回響く。恐ろしい速度で射出を続ける鈍色の筒から飛び出したコルクは、的確に人形の急所に当たり、重心がゆらゆらと大きくブレ始める。それでもまだ少し、足りない。しゃーねーな。
     素早くおもちゃの銃を構えて、やや上部を狙い撃つ。ほぼ同時に黒羽の放った最後のコルクがぶつかり、ウサギの人形はくるりと踊って倒れた。
    「おおっ!」
     ドンドン! とおっちゃんが太鼓を叩いて歓声を上げている。不安げな顔をする女の子に、黒羽が取ったばかりの人形を差し出し、安心させるように笑いかけた。
    「ほら、帰ってきたぜ」
    「ミルクちゃん!」
     ぬいぐるみに抱き着き、心底嬉しそうに破顔する少女は力を入れ過ぎて変形した人形と同じように聞き取れない言葉で喜びを表し、それを黒羽は相槌を打ちながらオレをちらっと見ていた。
    「娘の為にありがとうございます、本当に、なんとお礼を言っていいか……」
    「いえ、こちらこそ勝負の対象に入れてしまってすみません」
     オレの平謝りに父親はとんでもないです、何かお礼をと言うので、人形が無くなった大まかな場所と日付を聞いておいた。ついでにおっちゃんにもどこで買ったのかを問い詰めておく。窃盗事件だし、後で中森警部に相談してみるか。

     戦利品の菓子をビニール袋に詰めて、手を振る親子に別れを告げつつその場を離れる。
    「工藤、事件禁止って言っただろ」
    「オレが起こしたわけじゃねーし」
    「おっちゃん引きつってたぞ」
    「それより黒羽」
    「あん?」
    「オレの勝ちだな」
    「……ソーデスネ」
     黒羽は十点、オレは菓子四つで一二点。これで一つ、黒羽にいう事を聞かせることができる。さて、非常に貴重な権利を得たわけだが、どうしてくれようか。
     前に黒羽に迫った時、大した抵抗も無かったからOKなんだとばかりに好き勝手した結果、マジ切れされて一週間も無駄な追いかけっこをする羽目になったのは記憶に新しい。うまく条件を出さないと、また面倒くさいことになりそうだ……これは難題なんじゃねーか?
     うんうん悩んでいると、隣から小さく笑う気配に顔を上げる。
    「オメーさ、カッコつけすぎ」
    「なんだよ急に」
    「べっつにぃ」
     格好つけていたのは黒羽の方じゃねーかと思いつつ、やけに機嫌の良さそうな横顔をじっとみつめた。掴めそうで掴めない、鳥のような存在だったアイツが、オレの隣に居る事に高揚感が湧き上がってくる。

     ひゅるるる……パーン

    「おっ、花火」
    「……もうそんな時間か」
     参道を進んで階段を上り、境内の中に入ると、そこには既に大勢の人が空を見上げていた。
     あたりの人々も空に咲く光の花をスマホで撮ろうとしたり、カップル同士でくっついたりと様々に楽しんでいる。誰もが光に魅入られたように、口を少し開けて花火を見上げているのが不思議だ。いつかこれを利用した毒殺事件が起きるかもしれない。
     隣を伺うと、青い瞳に夜空の光を映した黒羽が居る。これはチャンスだ。今なら誰もこちらを見てはいない、多分。
    「黒羽」
     素直にこちらを向いた黒羽の、僅かに開いた唇がりんご飴で赤く染まっている。甘そうだ。そう思いながら顔を寄せて――「キャーー!!」――花火の合間に悲鳴が響いた。
     酷く白けた顔をした男がオレを押しのけ、大きくため息をつくのと同時に、オレは悲鳴の出所へと駆け出した。イイ所だったのに!



     高速でひったくりをとっ捕まえ、運営のテントに突き出すと、白けた顔をぶら下げて背後でわたあめを片手に黒羽が立っている。良かった、花火も終わっちまったし、帰られてるかと思った。
    「そんな顔しなくても置いて行ったりしねーって」
    「よく逃げ出すじゃねーか」
    「そりゃぁどっかの誰かさんが鬼の形相で追ってくるからだろ」
    「そんな顔してねーって」
    「よくしてるっつーの」
     こういう顔だと黒羽らしかぬ凄んだ表情をしたが、どうにも覚えがないので首をかしげていると、もういいと言わんばかりに白い綿を口に運び始めた。
    「えーっと、まだ回りたいとこあるか?」
    「目ぼしいもんは食い終わったし、さっき中途半端になった高台とか?」
    「あとあれだろ、きんぎょ」
     すくいと言いかけて、叩きつける様に口を手でふさがれた。痛ぇ!

     石の灯篭のぼんやりとした灯りの中、人の流れに逆らってオレ達は歩いていく。先ほどまで人で溢れていた境内は、もうほんの数人しか残っていなかった。
    「さっきの勝負だけどよ」
    「……おう」
    「一分、お前に触っていいか?」
     あんまり調子に乗った事を言うとマジで逃げられる可能性がある、家に帰ったらどうせさっさと着替えられちまうし、浴衣の黒羽を堪能できるのは今しかねぇ。
     ポーカーフェイスに手を伸ばし、ゆっくり目元を親指でなぞると、瞳孔が猫の様に広がっていく。
    「っ、ここで?」
     僅かに掠れた声にゾワゾワする。流石に人がいつ来るか分からない場所でボーナスタイムを邪魔されたくはない。引きずる様に社の陰に連れ込んで、石の段差に座らせる。やべぇ、興奮してきた。
     ペロリと唇を舐め、そのまま舌を割り入れて歯列をなぞれば、思っていたよりも甘ったるかった。さっきだったらリンゴ味だったのに。
     太ももを探る様に手を置くと、抵抗されるかと思いきや、腕が背に回される。なぜかいつもより積極的な黒羽を不思議に思いつつ、裾から手を差し入れ、しっとりとした肌を撫で上げた。
     やっぱり浴衣はいい、なんでこんな無防備な格好で夜道を歩けるんだ。自分も同じ格好をしていることを棚に上げて、そんな事を思う。
    「っ、はぁ」
    「、もう、一分経ったんじゃねぇか?」
     回されたままの腕に若干の期待をこめて聞いてみると、目を反らしてむにゃむにゃと言葉が返ってくる。
    「射的の、さ」
    「おう」
    「手伝って貰ったし……オマケ」
    「オマケ」
     あれか、人形を撃ったあれのお陰なのか。ほんとコイツの感覚わかんねぇ……。
     でも、貰えるものはありがたく頂いておく。首元に顔を埋めると、いつもよりも強く黒羽の匂いがする気がした。
    「っ、犬みてぇ」
    「ワン」
     ふざけて首筋に軽く歯を立てると、笑った気配と共に、触れた舌先から塩気を感じる。甘じょっぱいとか、やっぱりこいつは菓子かなんかじゃないだろうか。
     背中を支えていた手を襟元に差し込んで、鎖骨から肩へ滑らせてると、隠されていない傷跡の感触がした。
     オレも黒羽も、年の割に消えない傷が多い。
     はだけた浴衣から覗く痕を軽く引っかいていると、黒羽の手がオレの胸を軽く押し「くすぐってぇ」と文句を言った。決めた、後でよーく調べてやる。
     脚の内側に沿って指を進めて、芯を持ち始めたそこに突き当たった。下着越しに揉みながらその事を伝えると「オメーこそっ」といつの間にか侵入したマジシャンの手がオレの息子を鷲づかんできてギョッとする。
     初めて触られた時に「ヘタクソ」なんて言ったからか、次からどこで何を調べたのか怖くて聞けないけれど、格段に上手くなっていてちょっと引いた。
    「っ器用だな」
    「どーも、マジシャンなもんで」
     笑ったその顔とはアンバランスな手の動きに堪らない気持ちになる、ぐちゃぐちゃに泣かして、請わせてやりたい。
    「え、工藤、なんか目がマジ、んっ」
     膝を持ち上げ、体をいっそう密着させて下半身を押し付けた。黒羽の手ごと、二人分をまとめて扱いていく、緩い抵抗をねじ伏せて、あやす様に頬を寄せて名前を囁いた。   
    「、黒羽」
    「ぁ、くど、やっ」
     ポタポタと黒羽の内ももに白濁した液体が伝い、石段を汚していく。
     出し終わると不思議なもので、蒸し暑さ共に、周りの音が聞こえる様になってきた。騒がしい蝉の声、出店でかかる祭囃子、近づいてくる子供の声。やっべ。
     黒羽の様子を伺えば、気だるそうに石段に寄りかかっている。襲われましたと言わんばかりのエロい格好にムラっときた瞬間、剣呑な視線を浴びた。
    「おい」
    「え」
    「かき氷」
    「か、かき氷?」
    「買ってこい」
    「かき氷って、入り口じゃねーか」
     ぱぱっと身なりを整え、オレの浴衣も直し、もう一度「買ってこい」と告げてくる。これは絶対に譲らないやつだ、なんだってんだ急に。
     オレが理解してない事を感じたのかそれはもう大きなため息を吐いてきた。
    「1分過ぎてたじゃねーか」
    「オマケって言ってたじゃねーか」
    「それがぶっちぎりで許容量を越してんだよ」
     許容量ってなんだよ……などと口に出したら、もうこの続きは望めない。なんたってまだコイツを最後まで頂いていないのだ。
     帰ってからのお楽しみを守るため、オレは石段を駆け下りた。

     財布を黒羽に掏られているとも知らずに。
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