椅子取りゲームは終わっている「この村と、Kの一族について話そう」
ダイニングテーブルには今日も6つの椅子が綺麗に並べられていた。龍太郎と一人は向かい合う形でその椅子に座る。
「はあ……村と、けーの一族……」
龍太郎の頭には「冥土の土産だ、教えてやろう」と魔王が演説している映像が流れていた。
前々から変な村だとは思っていた。深く知ろうとしなかったのは、単に「なにも知らない研修医」というポジションが楽だったからで、決して配慮などではない。
全て聞いたあとに龍太郎の口から出たのは「そうなんスね」という呆けた言葉だけだった。目の前の上司も不真面目な返事だと思ったのか、若干眉を顰めている。
「お前がこれを聞いて、この診療所から出るというのなら止めない」
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