誰が為に 前編「ミスタ、私と別れてくれ」
「は?」
平日の夜。なんてことないひとときに、大きな爆弾が落とされた。否、私が落とした。ソファに座って膝に肘をつき、両手を顔の前で合わせる私の姿は、ミスタにはどう写っているだろう。
飲み物のおかわりをとってきたミスタは、全ての動きを停止させ片目をつり上げる。その反応になるのも当然だろう。先程まで仲良く映画を見ていたのだ。脈絡もクソもない。
「…すまない。頼む。」
「なにに謝ってンのか知らねぇけど、やだ。ぜってぇ別れてやんねー」
へっと反抗的な表情で中指を立てるミスタ。その姿に愛しい気持ちを抱きつつ、やはり無理かと苦笑した。当たり前だ。付き合うまであれほどアプローチしたのは私だ。
「少し無理やりになるが、許してくれミスタ」
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