「盟友」
甲板の柵に背を預け、空中を優雅に飛ぶテンジンを見上げた間々、盟友は動かない。
だがテンジンを熱心に観察している訳ではないようだ。
宙を旋回する姿に目を向ける訳でもなく、ただ頭上を眺めて動かない。こういう事が盟友は時折ある。
まるで主電源を落とした機械のように、身じろぎさえしなくなるのだ。
他のオペレーターから注意されたと、本人からも聞いているが、何度も目にすると心配にはなる。
今度は名前を呼んでみたが、やはり反応はない。
そっと肩を抱いてみたら、びくっと盟友の身が飛び上がった。
「…すまない」
「ううん。私こそ、ごめんね。またスイッチを切ってたよ」
盟友はコートのフードを、すっと外した。
透けるような頬を膨らませて、息をおおきく吸い込み呼吸をしている。
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