story集落から少しばかり離れた街に住まいを移し150年と少し、これといった事件が起こることも無くただただ平穏に生きてきた。
「さて、今日は何をしようかね」
使役している妖精に声を掛ければ、鈴の音と共に周囲をクルクルと回られる。
日長一日、本を手に取り過ごすことの多い日常。
そんなたいそう"つまらない"日常を愛していた。
---ダンダンダンッ…
乱暴に叩かれた扉に驚き妖精が本棚の陰に隠れた。
「誰だろうね…不躾な挨拶をするヤツは」
思い当たるのは1人しか居ない。
50年前に我が家に転がり込んできて、あっという間に私の知識を喰らい尽くして出て行った弟子。
再び、早く開けろと言わんばかりに扉を叩かれれば肩にかかるストールの位置を直し扉を開ける。
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