承太郎誕生祭承太郎は苛立っていた。
最後の一本になったタバコを乱暴に咥え、空き箱をくしゃりと握り潰して道端へ投げようと手を上げた。が、いつも隣にいる優等生の顔が頭をちらついて、その手をポケットに突っ込んだ。
『今日からしばらく一緒に帰れない』
そう、花京院から言われたのは新学期が始まってすぐの事だった。
どうしてだと訊ねると新しいゲームが発売されるらしく、それに向けてバイトを始めたらしい。バイト先は旅の途中幾度となく世話になった財団で、勤務日数は週に土日を含む四、五日程度。仕事内容は建物の詮索といった危険なものではない。と、花京院は事細かに説明をしてくれていたが、本音を言えば不満だらけだ。
しかし、目的のあるバイトを止める権利も無い承太郎はその言葉に首を横に振ることは出来ず、黙って学帽の鍔を下げるしか出来なかった。
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