My Honor〜another〜ハングマンは久しぶりにハードデックを訪ねていた。
マーヴェリックの特別訓練が終わり、元の所属基地に戻ったハングマンだったが、上官の使いでまたノースアイランドの地を踏んでいた。
上官から預かった機密書類はサイクロン宛で、引き続きトップガンで教えているマーヴェリックにも会うことができた。
その彼から、ルースターも休暇で訪ねてきており、今日は家(サイクロン宅)に居るから来るか?と誘いを受けたが、断ってこのハードデックのカウンターで一人ビールを呷っていた。
ハングマンはルースターに会いたくなかった。あの任務の後からルースターに特別な想いを抱いてしまったから。この秘めた想いは誰にも知られたくなかった。
「あれ?ハングマン?」
静かにボトルを傾けていると、後ろからいきなり声をかけられた。
「?!ルースター、なんでここに・・・。」
振り向くと、そこにいたのは今一番会いたくない人物、ルースター本人だった。
もうすぐクリスマスだと言うのに、相変わらずアロハシャツを着ている。流石にシャツの下に長袖のTシャツを着ていたが。
「休暇でマーヴのとこ来てんだよ。お前は?」
「俺は、上官の使い。・・・マーヴェリックのところに帰らなくて良いのか?」
ハングマンがそう言うと、ルースターは気落ちしたように撫で肩をさらに落とし、隣に座った。
「ハングマン・・・ちょっと聞いてくれないか?」
「な、なんだよ。」
ルースターの余りの落ち込みぶりにハングマンは慄きながらも彼の分のビールを注文した。
ルースターの話は名前こそ出さなかったものの、マーヴェリックの話だとすぐにわかった。
恋人ができたこと、すでに一緒に住んでいること、幸せになってもらいたいが初恋の人で今も想っていること。
なかなか気持ちの整理がつかないのだろう、酔いも相まってグダグダととりとめない話が続いた。
そして、どんどんビールを呷りあっという間に酔い潰れてしまった。
ハングマンは自力で立つことができないルースターを支え、自分が泊まっているモーテルへと連れ帰った。
自分より体も大きく体重も重い相手を運ぶのは流石に大変だった。
ベッドにドサリと横たえると、ハングマンは大きく息を吐いた。
その時、ルースターのセルフォンが鳴った。
着信画面を見ると、そこには”マーヴェリック”と表示されていた。
この状況を説明しないと、と思いハングマンは電話に出ることにした。
「マーヴェリック?ジェイク・セレシンです。」
『あれ?ハングマン?ブラッドリーに掛けたつもりだったんだけど・・・。』
「あなたの坊やは酔い潰れて俺の部屋で寝てます。このまま泊めるので、ご心配なく。」
『ごめん。ハングマン。頼むよ。・・・その、ブラッドリーはどんな様子だった?」
恐る恐ると言った様子でマーヴェリックは尋ねた。ルースターからサイクロンとのことを聞かされたと思っているのだろう。ハングマンはマーヴェリックとサイクロンのことは知らないふりをして答えた。
「あなたには幸せになってほしいって、ずっと言ってましたよ。」
『っそう、か。』
マーヴェリックは言葉を詰まらせながらもなんとか返事をした。
「もう遅いですから、あなたも休んでください。」
『うん、そうする。・・・ハングマン、ありがとう。』
「どういたしまして。おやすみなさい。」
『おやすみ。』
通話を切ると、ハングマンはベッドで気持ちよさそうに眠っているルースターの顔を見つめた。
しばらく眺めていたが、あまりの間抜け面にだんだんと苛立ちが込み上げてきた。
(こっちの気も知らないで!)
ルースターの高い鼻を摘むとハングマンはシャワーを浴びようとバスルームへ向かった。