猫の魂9つ 俺は、現在は猫である。
名は鍾離と名乗っていたが、いつの間にか「帝君」と呼ばれている。誰が呼び始めたものなのかまだ知らないが、確かに因果とは存在するものなんだろう。
岩神であることをやめ、璃月が名を変え地形を変え、長いときが経っていた。葬儀を行う往生堂の客卿を始めとし、軽策荘にて商いを営み、時に仙人のように山岳に混じりながら暮らし、また市井へと潜んで茶を飲む。そんな日々と、旅人を始めとした渦中での出来事を積み重ねていく内に、初めて凡人となった送仙儀式から随分と文明は変化を遂げた。数えれば幾年経ったかすぐ分かるが、もうあえてそうする機会もなくなった。世はすっかり人の手へと渡り、俺もまた人の身となり……今は悠々自適な猫として暮らしているが、少し前までは暇を持て余して筆を執っていた。
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