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    meepoJlo

    @meepoJlo

    呪術の狗🍙棘 夢小説をこそこそ書いています。

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    もうすぐ死んでしまう私と君のお話 12 その距離※死ネタを含むオリジナルです。
     自己責任でご覧下さい。
     
    何でも許せる方向け。








    ***


    目が覚めると医務室だった。
    ぼんやり見える天井に、記憶を辿る。


    一番最初に目に入ったのは、泣きそうな顔でこちらを見る唯だった。覆い被さるように棘の顔を覗き込み、落ちる彼女の髪が顔に触れそうな距離で瞳を揺らす。

    「棘くん…っ?…棘くんっ!!」

    「………っ?」

    慌てて身体を起こすと、一瞬視界がぐらりと揺れる。唯は手を瞬時に伸ばして肩を掴み、棘の身体を支えた。

    「棘く…っ!ほら、急に動いたら危ないよ」

    頭を抑えるとそれはすぐに治ったが、靄が掛かったように思考を奪う。心配そうに眉をひそめて棘を見る唯。

    「貧血だって。家入さんが言ってた」

    「………?」

    その言葉に唯を見上げれば、彼女は棘の肩を持って身体を支えて立っていた。華奢な身体の何処にそんな力があるのか、細く長い腕はしっかりと棘の体重を支える。

    「良かった。目を覚ましてくれて…」

    唯はほっとしたように温かな声で呟く。
    目に入ったのは、胸元にある見覚えのある唯の私服に着いた乾いた赤色。


    姉妹校交流戦で特級呪霊と遭遇して、恵と京都校の加茂と共闘して負傷した。無意識に喉に手を伸ばすが治療が済んでいるのだろう、痛みは既に無い。
    貧血と言う事は、無理をして多量の血を流したのか。何となく覚えているが、それからの記憶が一切ない。

    そこから繋がる記憶は、必死で自分の名前を呼んでいた、唯。涙を堪えて、棘を見ていた。

    思い出すと胸が痛んだ。
    そんな顔をさせてしまったのは、他でもない自分だから。

    術師として、死ぬ事もある程度は覚悟している。自分はもちろん、他人も。きっとそれは今日でも、明日でもおかしくはないと理解して高専にいる。
    それは彼女もたぶん同じ。
    もしくは、それ以上に。


    でもあの時唯を見た自分は、何と思っただろう。



    唯に会えて、その顔を見て安心した。

    嬉しかった。





    唯は棘の肩からからそっと手を離す。

    「家入さんいるかな。誰か呼んでくるね」

    笑い掛ける彼女は棘に背を向けるが。棘はその手をぎゅっと握った。

    「ツナ」

    呼び掛ければ、唯は不思議そうに棘を振り返る。

    「ツナ」

    その手に力を入れて引っ張ると、唯の軽い身体は簡単に棘のベッドに倒れ込む。腕を背に回して、棘は唯の身体にしがみ付くように抱き止めた。

    「…棘くん…?」

    離したくなくて。触れていたくて。
    彼女の首筋に顔を埋めて目を閉じる。
    温かい。優しい、少し汗の混じった、でも彼女の独特な甘い香り。

    「………ツナ…」

    唯は棘の頭に触れる。そっと撫でてくれた唯の手は、少しくすぐったくて気持ちがいい。



    今日はもう少し一緒にいたい。

    手に入れてしまえば、もう離したくなくて。
    もっと近くに感じたい、と。

    願ってしまう。












    **


    カーンと、ボールが辺りに響く音が心地良い。
    野球のルールは実はよくわからないけれど、唯は観覧の許されたグラウンドの端でフェンス越しに野球を見ていた。風のない、木陰のベンチに座る。

    実際状況はあまりよくわからないけれど。
    姉妹校交流戦2日目は野球と言う形で決行された。亡くなった人もいたし負傷者も多かったが、学生は誰一人欠ける事なくここにいられる。その事実は素直に嬉しい。
    むしろ東京校に関しては1年生が一人増えていた。朝挨拶はしたが、人の良さそうな男の子だった。その間棘はずっと唯の隣にいた。



    不意に棘と目が合えば、笑顔で唯に手を振る。隣のパンダも手を上げて、真希もこちらを見てニッと笑う。
    唯もそれに応えて手を振った。楽しんでいるようで何よりだ。
    …と、笑顔に花を咲かせる反面、唯の胸には重くて黒いものがつっかえる。本来ならあの場所に、自分も居たはずだった。居なきゃいけなかった。

    ーーなのに。

    誰ひとり、それを責める人はいないし、優しく唯に接してくれる。
    来年は、と笑ってくれる。

    応えて振ったその手をグラウンドに向けて伸ばして見た。フェンスの向こう側、笑い合う後輩同級生は野球に夢中で。


    「…遠いなぁ」


    唯は小さく呟く。
    誰よりも何処にいる時よりも、みんなを遠くに感じた。


    「…………?」


    一瞬、視界が揺れた。


    伸ばした手が、何重にも見えて、色を失っていく。

    「……ん…?あれ、なんか…、眠い…?」

    唯は伸ばしていた手で目元を擦る。昨日は疲れたけれど、遅くまで起きていた。

    次第に視野がぼやけていく。
    瞼が重く今にも閉じてしまいそうな、強い眠気が唯を襲った。

    寝不足?

    野球ボールがバットに当たり、小気味良い音が辺りに響く。歓声がやけに大きく聞こえた。











    「ツナ?ツナー!!」

    大きく呼び掛けられて目を開く。
    何だか頭が痛い。くらくらする。

    「こんぶ」

    ゆっくりと身体を起こすと、心配そうに覗く棘。
    目が合えば、ホッとした様子で唯を見ていた。

    「…あれ…?寝ちゃった…」

    まだ眠たい目を擦りながら棘を見上げた。少し土の着いたユニフォームを着ている。似合ってるなぁ、と思う程度には頭がハッキリとしてきた。

    「明太子?」

    「…うん。大丈夫。ちょっと眠くなっちゃっただけ」

    言った唯は、自分の言葉に微かな違和感を覚える。
    眠ってしまったと言うより、むしろ途中から記憶がない。思考が追い付かずに、微かに鈍く痛む頭を抑えた。
    そんな仕草に何かを感じたのか、棘は唯の頭に手を伸ばす。唯よりも大きなその手が優しく頭を撫でた。

    「ツナマヨ」

    言いながら優しく触れる棘に。

    「…不甲斐ないね。昨日も今日も、闘ってるのは私じゃないのに」

    その言葉に目を見開いた棘の手が止まる。

    「おかか」

    違うと呟いて、首を振った。

    「おかかー」

    「……っ?う、ぁあっ?!」

    頭をくしゃくしゃと掻き回された。

    「おかか!明太子!」

    ニッと笑う棘の言葉はいつも通りハッキリしないけれど。唯も此処に一緒にいると、告げてくれたのは確実に理解出来た。
    唯はそれに目を細める。温かい言葉。

    「…ありがとう」

    笑った唯に、棘は親指を立てて返した。

    「しゃけ」

    もう一度唯の頭をぐしゃっと掻き撫でてから手を振り、棘はグラウンドへ戻って行った。休憩中だったのか、ゲームは一旦止まっていた。














    それから急な任務が入ったのは、2週間が過ぎた頃だった。

    ぼんやりと頭に膜がかかったような微かな違和感を感じながら、唯は資料に目を通す。

    小さな山間の村に死者は既に3名。
    確認されている呪霊はその殆どが3級、4級相当。一貫性はなく群れた様子も無いが、同じ村にただ多くの数が留まって災いとなっていた。
    原因はおそらく、村の深部にある洞窟と思われるが詳細は不明。どの程度の数がいるかも不明だった。

    同行するはずの先輩が、別の任務に単独で就くことが決まり、後任にに入ったと告げられたのは準一級術師のーー

    「棘くんだ」

    実習はよくあるけれど、任務で一緒になるのは少し久しぶりだった。

















    キャラクター設定メモ_φ(・_・


    [ 茗荷 唯 ]

    4級。(たぶん本当は2級くらい)

    呪術師の家系で育った。
    それなりの名家のお嬢様。
    茗荷家の呪術師は隔世遺伝。
    短命なので当主にはなれない。


    呪術師になると言う敷かれたレールを進む為に、呪術師になる事だけを目指している。選択肢はたぶんない。

    天与呪縛なのか、術式の反動なのか、体質なのか(目を瞑って適当に解釈してください)呪力を使うと何らかの形で寿命を削って行く。

    茗荷家の呪術師が短命なのは元々知っていた。
    短い生涯の内に「術師になり国に忠義を尽くす事を良しとする」古い考え方を持っていたりする。

    でもやっぱり死ぬのも怖い、普通な所もある。
    時代背景から、そんな古い考え方に迷いもあったりもしてなのか強い術式は使わないようにしている。

    敷かれたレールを進むだけ。
    与えられた課題をこなすだけ。

    良くも悪くも朗らかに笑う。


    *術式
    (名前ないよ!誰か考えて!)

    99の『文字』を組み合わせて使うので使い方は無限大かと思われる。
    茗荷家相伝で、数式のような梵字のような形の独特な『文字』。何処に書いても有効。
    紙に書けばお札になる。

    唯は任務前によく使うお札を数十枚単位で作って持ち歩いてる。(細かい設定はない)
    その他、何処にでも書けて消せる便利アイテム、チョークと白紙のお札と筆ペンを持ち歩いてる。


    書く行為にはタイムラグがあるけど、何年も続く相伝の術式なので使い勝手は勿論考えられているはず。特に攻撃性がある強いものはタイムラグの少ないものもある。





    ※追加あったらまた変更します。
     自分メモ程度の設定です。今更(´⊙ω⊙`)

    (術式が呪言に似てしまったのは偶然の産物で、書き始めてから気付いた。この設定は使わん手はない!と使い倒した)
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