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    meepoJlo

    @meepoJlo

    呪術の狗🍙棘 夢小説をこそこそ書いています。

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    側にいて欲しいうつろな意識の中、コンコンと扉が叩かれた気がした。次第に頭がハッキリしていく。見慣れた部屋の景色に、唯はまだ少しだけ気怠い身体を起こす。
    時計を見れば時刻は間もなく16時を迎える頃だった。

    枕の隣にあったスマホがメッセージを知らせて揺れた。


    [寝てる?]

    [スポーツドリンクとゼリー、ドアに置いとく。よかったら食べてね]


    扉の向こうからカサカサとビニール袋の音がして、唯は立ち上がった。
    薬を飲んで1日ゆっくりしたのでだいぶ身体も楽になっていた。少しだけまだ、ふわふわした感覚がある。

    「棘?」

    鍵を開けてノブを回し扉を開く。
    そこにはやはり、見覚えのある後ろ姿があった。

    「ツナ」

    学校の帰りだろう。制服のままの棘がそこにいた。驚いた様子で唯を振り返る。

    「こんぶ?」

    「うん。1日寝てたからだいぶ元気になったよ」

    笑って答える。
    棘はドアノブに掛かった袋を外して唯に手渡した。

    「明太子」

    「ありがとう」

    中身はスポーツドリンクのペットボトルとゼリーだろうか。受け取ると、唯の好きなチョコレートのお菓子も1つ入っていた。それに思わず笑みが溢れる。

    顔を上げて、棘を見た。
    疲れから来る体調不良だと言われたけれど、病人の唯があまり引き止める訳にもいかない。

    「ツナ、こんぶ?」

    微かに目元が細くなる。困ったような棘の顔。
    心配してくれたんだろうな、と思った。

    棘は手を伸ばし、唯の前髪に触れる。髪を退かして額に手の平を置いた。たぶんもう熱はないと思うけれど、何だか顔が熱くなる。

    「………っ?」

    棘の手は額から唯の頬に移動して優しく触れた。顔を覗き込んで、首を傾げる。

    「こんぶ。高菜?」 

    触れられた頬が熱を帯びる。
    言われた言葉が理解出来ずに、唯は棘を見た。

    「大丈夫、だよ?」

    熱はもうないはず。
    でも、視界がぐらりと揺れた。

    「…ツナっ?!」

    直後、真っ暗で何も見えなくなる。
    ふわりと香る嗅ぎ慣れた棘の匂いと背に回った腕に、すぐに状況は理解出来た。

    「…ご…、ごめん…」

    体制を立て直そうとするが、足がふらつく。

    「ツナツナ」

    呼び掛けられて顔を上げると、瞬間、唯は宙に浮いた。膝と背に手を回し、棘が唯を難なく抱え上げる。

    「…棘っ?ごめん、1人で大丈夫だから」

    棘の肩に手を置いて叩いてみたけれど。

    「おかか!」

    眉間に皺を寄せて、少し怒ったような表情を見せる。
    そのまま唯を連れて部屋に入り、ベッドに寝かせた。布団を掛けると、また小さくおかか、と呟いて唯を見た。

    …情けない。迷惑をかけてしまった。

    棘は立ちあがり、何も言わずにベッドから離れる。唯の位置からは見えないが、扉に向かったようだ。パタンと戸が閉まる音が聞こえた。

    部屋を出たのだろうか?
    と、一瞬頭をよぎったが、人の気配はまだあった。
    棘は優しいから、どんな状況でも放置はしないだろう…。それが今は余計に申し訳なくて辛い。

    唯は棘が掛けてくれた布団を頭から被る。
    朝に比べれば身体はかなり楽だが、まだ本調子ではないのだろう。薬のせいか、少し頭がぼんやりしているのも確かだった。


    ガサガサと袋を触る音と、何かが置かれた音が聞こえた。足音が唯に近付く。

    「ツナ?」

    言われて布団からゆるゆると頭を出し棘を見ると、床に膝を付いて座る棘は、冷たいスポーツドリンクのボトルを唯の頬にくっつけた。

    「すじこっ」
    「…ひゃっ?!」

    思わず声が出る。冷たくて気持ちがいい。
    棘はいつものように笑っていたので、唯はそれに安堵する。

    身体を起こす唯の背に、棘は手を添えた。ペットボトルを渡されて、それを素直に受け取る。蓋を開けて一口飲めば、スポーツドリンクの独特の甘さが口に広がった。ゼリーを指さされたが、唯は首を横に振る。

    「…ありがとう」

    そう告げると、棘はピースしてくれた。

    「ツナマヨ」

    唯は笑ってペットボトルを枕元に置く。

    「風邪、移っちゃうから…、後はひとりで大丈夫。本当にありがとう。夕飯まで寝るね」

    優しい棘に、あまり甘えてばかりもいられない。
    少し眠たいのは事実で、唯は笑って遠回しにさよならを告げた。もう一度ベッドに転がり、鼻先まで布団を被る。

    ちらりと、隣のその人を見れば、棘はその言葉に複雑そうに眉を寄せている。

    「…おかか」

    呟いて、唯を見た。その手が唯の頭に伸びる。
    棘は座っていた膝を伸ばして、ネッグウォーマーを片手で少しだけズラした。唯の前髪をかき上げるとゆっくりと顔を近付けて、そっと額に口付ける。
    唯は真っ赤になって顔の半分を隠している布団を握りしめた。

    棘の顔はすぐに離れて行ったが、男性特有の骨張った大きな手が唯の頭を優しく撫でる。そのまま腰を上げて、ベッドの端に座り込んだ。
    温かくて、柔らかくて気持ちがいい。

    「ツナ、こんぶ」

    しばらくいる、らしい。
    でも、と言い掛けたが棘は動かないし、その手は唯の頭に触れたままだった。おかかー、とネッグウォーマーの中から声が聞こえる。
    何回か唯の頭を撫でると、反対の手で唯の手を握った。優しく笑う。



    唯は目を閉じた。
    温かい。








    End***









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