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    mayura_BL

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    mayura_BL

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    月刊日報のいわてさんがあまりにも可愛かったのでつい。
    某友人が「いわて(宇品)さんの前では広島弁になる山陽さんが見たいですなう」(原文ママ)とメールしてきたので、返す刀(返信)で書いた話。携帯で書いたので短いです。
    メールには「常にハートフルボッコな山陽さんに宇品さんという名の愛の手を!」とも書いてあったけど気にせずボコボコにした。むしろ兄がボロボロになった。

    #青春鉄道二次創作
    youthRailroadSecondary

    形而上を泳ぐ魚形而上を泳ぐ魚


    「じゃけんよう!東海道も九州も、俺がおらんかったらなんにも、なあんにも!でけんのじゃ!」
    「そうじゃのう」

     ツイてない。
     ツイてない?
     東北本線に儲け話をもらったので、東北と話を詰めた訳だが、そのあとの飲み会が高級居酒屋だからって、ひょいひょいついて来るのではなかった。

    「ここ2、3日、そうめんしか食っとらんかったからじゃ」

     おれは酔い潰れかけているJR高速鉄道の上官(ではないが。個人的には)を横目に、自分自身に言い訳した。
     ここ数日、家計を切り詰めるためにそうめんしか食っておらず、だから東北本線の儲け話に引っ掛かったうえ、JRの上官共しかいない飲み会に間違って参加してしまった。
     東北本線が笑顔で勧めてきた理由も考えなかったおれが阿呆じゃった。

    「東北」
    「…なんですか」
    「お前、東北本線に幾ら払ったんじゃ?」
    「いえ…金品では…」

     馬鹿正直に取引したことを吐いた弟がミラクルに腹立たしかった。

    「宇品ァ!おまんちゃんと聞いとんのかァ!」
    「聞いとるわ。あと今は宇品じゃないわボケナス」
    「宇品は宇品じゃあ…」

     ペイッとしがみついてきた推定上官を殴る。痛い痛いと大仰に喚く彼に、ひどく腹が立つような気がした。

    (気がした。気がしただけ)

     本当は腹など立ちもしない。







    「あれはなんだ東北」
    「山陽だ」

     東海道の問いに簡潔に答えたら、東海道は面倒そうにビールを煽った。

    「……軍事の宇品か」
    「兄だ。今は宇品線ではない」
    「知っている……貴様が山陽を気遣うとはな」
    「仕方ないだろう」

     山陽が、最近随分と八高線に会いに来ている、と宇都宮に言われたのは先日のことだ。
     一芝居打つのも吝かではないと宣った宇都宮は、兄があまり得意ではないから、復讐の機会でもうかがっていたと見える。
     乗った自分も自分だが…

    「のう、上官殿」
    「なんじゃ!」
    「おれみたいな三セクにとって、実際問題お主ら高速鉄道は上官ではないんじゃ」
    「宇品ァ!連れんこと言うなぁ…!」
    「どうでもええんじゃ。いまさら宇品なんぞと呼ばわるな、山陽上官」

     兄は、彼を"篠山"とは決して呼ぼうとしなかった。

    『おれはな、東北』

     ふと言われた言葉を思い出す。

    『山陽を、否定する権利なぞないのに否定したんじゃ』
    『どういう…』
    『形而下に最早"篠山"なんぞという者がいないのを知りながら、おれは"山陽"を否定したんじゃ』

     おれたちは、と兄は静かに続けた。

    『形而上と形而下で、無い物ねだりを繰り返すんじゃ』

     望まれてあるお前には、分からん話だ、と。







    (形而上おれは宇品)

     形而上?
     違う。
     そんなに御大層なもんじゃない。

    「おい!こいつ、回収してかんか!」
    「え、ああ。寝せといたらいいんじゃないですか」
    「高速鉄道の上官様々を潰したなんぞ体裁が悪かろう」
    「宇品ァ…阿呆がぁ…俺ぁまだ飲むぅ…」
    「いや、もう潰れてますよね」
    「完全に潰れる前なら白じゃ!」

     押し付けた形而上篠山を、東北が面倒そうに受け取った。

    (じゃけどな、篠山)

     形而下でおれたちはもう違う存在で。

    「帰る。代金はお前らで払えよ!」
    「分かりました」
    「……」
    「どうしました?」
    「…山陽上官によろしく」

    (いや、形而上にすら)

     もうお前はいないとおれは知っている。


    理想と現実と形而上と形而下の話
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