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    HishiPotti_3

    @HishiPotti_3

    菱形◇ぽっちのポイピク

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    HishiPotti_3

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    はぐ座達で遊んでいる時に思いついたお話です。
    ・擬獣化(🔥がペンギンで❄️がサメ)
    ・ファンタジー
    ・細かいことを気にしたらだめ
    ・❄️🔥❄️と言い張る

    【ペンじゅろうとはぐシャーク】「おなかすいたなぁ」

     周りを海に囲まれた小島の岩場で、ペンじゅろうというペンギンが釣りをしていました。ペンじゅろうは、レンゴクペンギンという見た目は普通のペンギンなのですが、それはそれは珍しく希少な種類のペンギンでした。普通のペンギンなら海の中をすいすい泳いで魚を捕まえるのですが、レンゴクペンギンは水の中を泳げません。しかし泳げない代わりに羽で器用に物を掴むことができ、口から火を吐くことができました。

    「お、きた!」
    釣りを初めておよそ一時間、ようやく魚が引っ掛かりペンじゅろうが、釣竿(虫を差した枝)を引き上げると、岩場の上で吊り上げた大きな魚が元気良く跳ねました。
    (今日は焼き魚にしようかなぁ)
    杏寿郎がお腹を鳴らしながら魚を眺めていると、クアァと空からカモメがやって来て、ペンじゅろうの魚を奪おうとしました。
    「やめろ、これはおれの魚だぞ!」
    カモメはペンじゅろうの言葉には耳も貸さずにクアァクワァとペンじゅろうの頭をつつきます。
    「この、ちょっと飛べるからって!」
    飛べない羽でぺちぺちとカモメと応戦していると、
    「わぁあ!?」

    ペンじゅろうは濡れた岩場から足を滑らせ、
    ドボンと海へ落ちてしまいました。ペンじゅろうは溺れないように必死で岩場にしがみつきます。しかし、
    「あ…!」
    せっかく釣れた魚が、海の中にふよふよと沈んでいきました。
    (あぁ、おれの昼ごはん)
    ペンじゅろうはペンギンなのに泳ぐことも出来ず、ただただ沈み行く魚を見送っていると、魚が不意に浮かび上がった大きな影に吸い込まれました。
    「ひっ!」
    明らかな捕食者の影にペンじゅろうは肝を冷やします。ペンじゅろうはその影の形を見たことがありました。
    (サメだ!)
    それはサメの影だったのです。ここらへんのサメはよく岩場にいるペンギンを拐っていきます。サメはペンギンが大好物なのです。
    (早く海から上がらないと!)
    ペンじゅろうが足をばたつかせ、岩場に上がろうとしますが、白くてふんわりしたおなかがつっかえて、なかなかうまく上がれません。そうしているうちにも、ススーッと恐ろしいサメの背ビレが眼前に迫ってきます。そして…
    ザバァッ!

    「みゃぁああ!?」
    ペンじゅろうは恐怖のあまり目を摘むりながら、バタバタとペンギンキックでサメを蹴ろうともがきました。ですが、一向に海に引きずりこまれる気配がありません。ペンじゅろうが不思議に思って恐る恐る目を開けると、

    「…大丈夫か?」
    それはそれは可愛らしいサメがペンじゅろうの様子を伺っていたのです。そのサメは、サメとは思えない綺麗なピンク色をしていました。サメは、ペンじゅろうが岩場に上がれなくて困っているのがわかると、
    「おれに乗って上がれ」
    と、自らの背中を差し出しました。

    「嫌だ!きみはおれを食う気だろ」
    杏寿郎が警戒して言うと、
    「いや、食わない。ほら、じっとしてるから」
    サメは岩に噛みついて身体を固定します。このまま一羽でもがいていても、体力を消耗して海に流されるか、サメの餌食になるかだと悟ったペンじゅろうは、
    (ええい、なんとでもなれ)
    と、思いきってサメの背に足を着きました。すると、サメは本当に大人しくして、ペンじゅろうが岩場に上がるのを待っていました。やがて無事岩場に上がることができたペンじゅろうを見届けると、
    「よかった!上がれたな」
    と、サメは岩から口を離してニコニコ嬉しそうに笑いました。彼はどうやら悪いサメじゃないようです。
    「…ありがとう。疑って悪かった。助かったよ。おれはレンゴクペンギンのペンじゅろう。きみは?」
    ペンじゅろうがサメに心を開いて自己紹介すると、
    「おれはあかざ。はぐシャークだ!」
    と、サメは元気良く答えました。はぐシャークはサメの中でも超小型で非常に珍しいピンク色をしています。その熱帯魚のような綺麗な色から、マニアの間では観賞用として注目されつつありました。はぐシャークの主食は魚なので、ペンギンや他の動物を襲うことはなかったのです。
    ペンじゅろうとあかざが意気投合して いろいろな話をしていると、
    「みゃぁーみゃぁー」
    と、ペンじゅろう達と離れた岩場から、ペンギンの群れが騒がしく動きだしました。
    「……」
    ペンじゅろうは、遠くで他の種のペンギンたちが次々に海へ飛び込み、気持ち良さそうに泳いでいる様子をどこか寂しそうに眺めています。
    その様子を見ていたあかざは、
    「ペンじゅろうは、群れで泳いで狩りをしないのか?」
    と、尋ねました。すると、
    「ああ、実はおれは泳げないんだ。ペンギンの癖にふがいない。飛べもしないし泳げもしない。せいぜい火をふいて魚を焼き魚にできるぐらいだ。全く…なぜご先祖様は泳ぐのを捨てて火なんて吹こうと思ったんだろうな」
    と、ペンじゅろうは悲しげに話します。レンゴクペンギンは泳げないので狩りにとても苦労しました。故に知恵のある限られたレンゴクペンギンしか成鳥になることができず、その個体が少ない為レンゴクペンギンは群れを作ることができないのです。ペンじゅろうは巣だってからはいつもひとりぼっちで生きてきました。その話を聞いてあかざは、
    「ペンじゅろう、おれのうしろにのるか?」
    と、提案しました。
    「おれがペンじゅろうを乗せれば、どこへだって狩りに行けるぞ」
    「それはありがたい!」
    その素晴らしい提案に同意し、ペンじゅろうがあかざの背ビレをきゅっと掴むと、
    「じゃあ潜るぞ!息止めててくれ」
    と、あかざは一声かけ、勢い良く水面に潜ります。海の中には見たことのない色鮮やかな魚がうじゃうじゃ泳ぎ、ペンじゅろうの口からよだれが流れました。ペンじゅろうはすいすいと岩を避けて泳いで行くあかざの背に捕まりながら、一匹の大きな魚を咥えることに成功しましたました。そして、あかざは尾ビレで思いきり水面を蹴りあげると大きく宙を跳びました。

    「わぁああっ!」
    海上から初めて見る海はキラキラと宝石のように美しく光輝いていました。それらの光景は、ペンじゅろうが今まで生まれてこのかた見ることができなかった素晴らしい光景でした。
    「ペンじゅろう!どうだ、魚とれたか?」
    あかざがペンじゅろうに尋ねると、
    「うん、とれた!楽しかった!」
    と、ペンじゅろうは満面の笑みで答えます 。
    その笑顔をみてあかざは、
    「ふふっ良かった!ペンじゅろうが笑った!」
    と、嬉しそうに笑いました。ペンじゅろうとあかざは、仲良く焼き魚を分けあうと、その日を境にともだちになりました。





    そして3ヶ月後、
    「ふんふんふん♪」

    (楽しみだなぁ)
    あかざは鼻歌を歌いながら、すいすいと穏やかな海を泳いでいました。あかざはペンじゅろうとともだちになってから、ほぼ毎週といって良いほど、一緒に遊びや狩りに出掛けていました。あかざはともだちのペンじゅろうと過ごす時間が何よりも楽しみになっていたのです。そして今日は、ペンじゅろうと隣の島まで遊びに行こうと約束した日です。
    (着いた!)
    あかざがたどり着いた先はペンじゅろうと初めて出会ったいつもの岩場でした。予定よりだいぶ早く着いてしまった為、ペンじゅろうの姿はまだありません。
    「早すぎたかなぁ…」
    あかざは暇潰しにせびれで水面を切ってくるくると泳いでいると、水面の上から黒い影がみえました。
    「あ、ペンじゅろう!来たの…」
    あかざが、嬉しくなってひょこっと水面から顔を出すと、

    「ワァーッ!!」
    あかざはいきなり何かに身体をからめとられ、水の上に引き上げられてしまいました。
    「やったー!とれた」
    人間が高らかな声で喜びます。あかざは人間の網に引っ掛かってしまったのです。人間は、この辺りにはぐシャークがいる聞いてやって来た、サメマニアでした。
    (誰かたすけてっ!)
    あかざは尾ヒレを動かしてピチピチともがきますが、網が絡まって動けません。
    「ふへへ。こいつぁ良いはぐシャークだ。色も活きも良い」
    「やめろ!…ふぅ、ふぅ…」
    あかざのエラから水が抜けていき、息がとても苦しくなってきます。エラ呼吸のあかざにとっては水から引き上げられるというのは死活問題なのです。
    「可愛いなぁ。はぐシャークちゃんの為に、とっておきの水槽を用意してあげるからね」
    「…うぅ」
    人間がご機嫌に何かを言っていますが、水を失ったあかざは苦しくて意識が朦朧としていました。
    (あぁ…もうダメだ息が、出来ない…)

    あかざが諦めかけた、その時でした。
    「みゃぁあ!」
    と、いうけたたましい鳴き声と同時に、人間の上から何かが降ってきました。人間が驚いて鳴き声の方を見ると、
    「なぁんだ、ペンギンか」
    岩から飛び降りてきた、なんとも可愛らしい珍客に人間は笑います。
    「可愛いペンギンだなぁ。ほら、おいでおいで」
    人間はペタペタと近付いてくる可愛らしいペンギンを手招きで呼びます。しかし、
    「グワァアア!!」
    「え?」
    ゴウッと人間の頬をものすごい熱気がかすめました。同時に、あかざをとらえた網に穴が開いたのです。あかざはぽちゃんと海に落ちました。

    「な、なんだ?何が起こった?」
    人間が驚いて網を確認すると、なぜか網が焼き切れていました。そして、人間が海を見ると、せっかくつかまえたはぐシャークが、水中へふよふよと沈んでいきます。
    「あぁ、俺のはぐシャークちゃんが!」
    と、人間が海の中に咄嗟に手を伸ばしますが、
    「おれのあかざに近付くな!」
    「わぁああ!なんだこのペンギン!」
    ペンじゅろうは、ものすごい勢いで人間を追いかけつつき回すと、パクリと鋭いくちばしで人間の指に噛みつきました。そしてそのまま、
    「食らえ!」
    と、火を吹きました。
    「熱ちぃい!!」
    人間は熱さと痛さのあまりに腕を振り回すと、勢いよく飛ばされたペンじゅろうは、ボチャンと海に落っこちてしまいました。

    「な、何だったんだ…?まぁ、いいか。ペンギンだから泳げるだろうし」
    と、人間は再び別の網を持って、はぐシャーク探しを始めるのでした。



    「っ!ッ…!!」

    海に落ちたペンじゅろうは、パタパタと海面で羽を動かしてみますが、一向に浮き上がる気配はありません。もがけばもがくほど下へ下へと沈んでいきます。やがて力尽き、ブクブクと海中に沈んだペンじゅろうは、潮の流れのまま流されていきました。
    (あぁ…綺麗だな)
    うっすら目を開けると、太陽の光を吸い込んだ海面がキラキラと輝いています。
    (あかざ。無事だと良いけど…)
    ペンじゅろうは、海に沈んでいったあかざのことが気がかりでなりませんでした。ペンじゅろうがいよいよ意識を飛ばしかけたその時、

    「ペンじゅろう!」
    ピンクの影がペンじゅろうの目の前に現れたのです。
    (あかざ…あかざだ!)
    「つかまれ!」
    ペンじゅろうが、力を振り絞ってあかざの背ビレを掴むと、あかざはものすごいスピードで泳いでいきます。そして、ペンじゅろうを海面へと導いたのです

    「ぶはぁっ!はぁ、はぁげほっ、かは…」
    ようやく呼吸ができたペンじゅろうは、酸素を大きく取り込み、むせました。
    「ペンじゅろう大丈夫か?」
    あかざは上に乗っているペンじゅろうに心配そうに話しかけます。すると、
    「あかざ、君が無事でよかった」
    と、杏寿郎はあかざの頭を羽で包み込み、優しく撫でました。
    「ペンじゅろう…ありがとう。おまえが、助けてくれたおかげだ」
    あかざは照れ臭そうに笑って答えます。ペンじゅろうとあかざが、元居た島の岩場の方を見ると、豆粒のような人間の影が見えました。人間はまだはぐシャークを探しているのです。

    「あいつ、まだ探してる…きみの仲間が危ない」
    「大丈夫だ。この辺りはおれの他に、はぐシャークは居ない」
    「そうなのか、でも捕まる前に早く遠くに逃げた方が良い」
    「あぁ、そうだな…もうあんな目にあうのはごめんだ」
    そう言って苦い顔をするあかざを見て、ペンじゅろうは悲しい気持ちになりました。ペンじゅろうの脳裏に今まであかざと一緒に過ごした楽しい思い出がよみがえります。ペンじゅろうは、何もできない自分にとても優しくしてくれたあかざのことが大好きだったのです。
    (もうお別れか、つらいなぁ)
    ペンじゅろうは、遠くに行ってしまうであろうあかざに涙ぐみながらお別れの言葉を口にします。
    「あかざ、今まで本当にありがとう…」
    するとあかざは、
    「…え?ペンじゅろうも一緒に行くだろう」
    と、目を丸くして尋ねました。

    「い、良いのか?俺は泳げもしないし、飛べもしない。…きみの負担になってしまう…」
    「何を言ってるんだ!おれはおまえと一緒にいるとすごく楽しいし、嬉しい!それだけじゃダメなのか?」
    「でも俺は魚をとるのも下手くそで、何もできやしない…」
    「何もできないなんていうな!…さっき誰が網を焼いて俺を助けてくれたんだよ?おまえしかいないじゃないか…」
    あかざは杏寿郎に真剣な顔でこう言いました。

    「ペンじゅろう。おれと一緒にこい!」
    「あかざ…ありがとう!おれもきみといっしょに行きたい!」





    そして、遠く離れた海の真ん中にたどり着いた一羽と一匹はいつまでも助けあい、幸せに暮らしましたとさ。


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