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    JIN

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    JIN

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    黒猫ちゃんがボスフラグと聞いて考えたお話。

    アメジストに映る世界ここの箱庭はとても不思議な場所です。

    彼がここにきてそれなりに経った。
    いろんな人がいる、この湿った匂いの場所はいつも薄暗い。独りぼっちが嫌いな彼はいつの人の多い場所で寝泊まりしてる。

    この穴蔵を守っているウサギさんを見る。彼はいつもウサギさんがいる場所が好きなんだって。たまに鉄臭いことになってるけど、彼はそれを手伝うの。なんで?それはあのウサギさんの仕事でしょう?

    ああ今日もあの子たちがきた。青と薄い紫のネコ。彼の場所で食べ物をいじるの。でもいい匂いがするし、嬉しそうに彼が食べるからきっと悪いネコではないんでしょう。

    退屈で散歩を始めてみかけた大きな大きなわんちゃんと、小さな小さなカラス。いつも放し飼いにされてるの。羨ましい、そんな姿でも愛されて。でもわんちゃんは力加減をもうちょっと知ってほしい。彼が傷ついたら許さないから。

    白黒のウサギさんと灰色のウサギさんはいつもうるさい。遠くからでも聞こえる下品な声は品性のかけらもない。耳障り。でも元気に走り回る姿は少し彼の昔を思い出す。

    あら、舌切りのお兄さん。今日も澄ました顔で見苦しい。まるで値踏みするかのようにみるその目が嫌い。いつかあなたも最低金額で叩かれるといい。

    湿気が気になって毛づくろいをしていると、ひ弱なウサギさんがせっせとお掃除していた。ここでは生き残れなさそうなのに今も生きているのが不思議。

    …同じ顔が二つ、よく似た顔?片方が目を隠しているからわからない。双子?なら彼と一緒ね、忌々しい。早く片割れのために死んでもらえないかな。

    白いウサギさんはいつも変な匂い、嫌い。でも彼を落ち着かせてくれる。どうして?

    フラフラと散歩を続けたどり着いたのは、ここを統べる黒いウサギさん。よくわからない人。
    ここへ彼を導いたのは私。でも私じゃない。わからない。黒いウサギさんが導いたの?

    「そうだよ」

    私の口から私でない低い声がでた。
    なに?これ?

    「守りたかったんだろ?」

    そうよ

    「でもお前はやり方を間違えた」

    どういう意味?

    「双子であることを拒絶し、敵だと認識して彼の大事な物すべてを奪った」

    …違うの?

    「そのまま君のシナリオを演じ続ければどうなるか?わかるだろ?」

    知ってる。私も元へ来てくれる。

    「ああ、わかってないのか。きっと彼はこない。また君を殺してくる。」

    どうして?外の大人は汚いの。みんな彼を騙そうとしてる。

    「どういう風に?」

    ここの連中みたいに、いたぶって苦しめて、いつか彼は殺される。

    「ならなぜここに来た時、彼は影に追われていた?」

    ………

    「忘れられないからだ、楽しかった時を。逃げようとした、その時に。閉じこもって。」

    ウソ。
    ならこの台本は偽りだって言うの?

    「そうじゃない、あるはずの未来の一つ。どこかの英雄が運命を変えたのなら、彼も台本をすり替えてもいいんじゃないんか?」

    …ぼとりと白紙の本が落ちてきた。まだ始まりしか書かれていない、台本のなりそこない。どうせ同じよ、ここも。

    「なら、あんたの思う結末も変えられないんだな。彼が世界に罵られ、世界を恨んで首をくくられる。大喝采ののち彼は惨めに泣きながら息絶える」

    違う…違う!そんなの望んでない!!彼は幸せにならなきゃいけないの!!!

    「押し付けられた幸せより自分で選んだ幸せが好きだな」

    じゃああなたは変えてくれるの?彼の台本を。

    「書き足すのは彼次第だ。違うかい?」

    「彼の人生は彼のであって君のではない」

    「そうだろ?」

    「君も、彼に殺されたくないだろ?」

    私は

    「愛されたい」

    そう、見てほしかった、最後まで愛してほしかった。

    「でも大事なものを奪った罪は消えない、彼みたいに」

    …わかってる

    「じゃあ、君はどうする?」

    声はいつの間にか前から聞こえてきて、見れば黒いウサギさんが屈んでこちらを見ていた。真っ黒に塗りつぶされた顔に唯一鮮やかに光る紫の目が探るような、試すような視線を向けている。
    なぜ私のように真っ黒で同じ紫の目を持っているのにこうも違うのだろうか。悔しい。
    悔しくてたまらない。
    でも彼が楽しんでいるのは事実。

    「私は…」












    ここへきてしばらく経つが、最近幻覚に変化が起きてきた。
    まず影。つぶやく内容も声も変わらないのだが、姿が少しずつ形にを得てきたような気がする。もやのようになっていたのが人らしくなったというか。その姿が、ここの連中に似てるような気もする。多分気のせいだとは思うが…

    それから、俺を導いた黒猫。ときおり姿を現せてはただこちらを眺めていたり、どこかへ去ったりと影と違う行動をしていたので気にはなっていた。最近耳が伸び、しっぽが縮んだ気がする。ウサギのように。歩いてる姿とかは猫そのままなのだが、こちらに返事をする時、時折「にゃあ」ではなく「ぷぅ」と鳴くのも気になる。あの鮮やかに浮いたアメジストの目もそのままだ。

    「さあここが宝物か、地獄か。教えて、ヴェルト」
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    JIN

    DONEヴェルト幸せになれとうちの子達との清算を
    うちうち系
    助けてと愛してをとあるウルダハの午後。
    昼の太陽が傾き日差しが一層強くなってきた外から避難するように、冒険者ギルドを兼ねるここクイックサンドは賑わっていた。

    「完了した依頼書はこれ、収集品のブツはこの袋に小分けで梱包している」
    「うん、全部揃ってるね。ご苦労様」

    小分けされた依頼品を確認しつつカバンにしまうララフェルの老人と、荷物が減ってカバンが軽くなった俺は、共に頼んだクランペットを齧りながら依頼の報告作業をしていた。長めの髪を後ろで団子状にまとめているミミジという老人は、元軍人のよしみでこうして依頼を流してもらっている。探し物から魔物の討伐、中には表に出しづらい暗殺の依頼も流してくれてる。
    ミミジの交流網は非常に広く、表裏関係なくそれなりに力のある人物と太いパイプをいくつも持っている。あえて深くは踏み込まず、しかし情報網で知らず知らず組織の根元を掴んでることもあり害成す者には情報を武器にこの世から追放したこともあるらしい。表向きは個人経営の孤児院で院長をしているが、元衛生兵で軍師だったコネで黒渦団で兵士の育成や、国を問わず解剖依頼をしたりと彼自身のスペックも非常に高い。特に問題なければ良きビジネスパートナーであるが、裏切った時の代償が計り知れないのが牽制になっている。…恐らく那落迦のこともだいたいは把握してるだろうな。
    7012

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