前略 軍曹殿見える看板の文字、聞こえてくる空港アナウンスが慣れ親しんだ日本語であることに、漸く帰国したのだと実感し始める。
「お兄ちゃーん」
到着口から押し出されるように到着ロビーを出たところで、遠くから聞き慣れた声がして辺りを振り返った。見れば人混みの向こうから、見覚えのある顔が手を振っている。
久しぶりに見た『妹』はすっかり少女ではなく、年頃の娘の顔になっていた。少し見ないだけで成長が早いものだと感慨深い。
「どうしたの?ぼっとして」
ぼんやりと思いに耽っていると寄ってきた妹にひょいと顔を覗かれた。
「……いや」
その顔の近さにも思わず目を見張る。相手が背伸びをしているわけでもないのはつま先を見れば分かる。いつの間にか身長も伸びて、もうほぼ自分と並びそうだ。
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