【kkt夢】仕事で疲れ切った夢主を甘やかし、途中からちょっとエッチなこともする 月、火、水、木、金、の疲れが、地層のように体に溜まる。もちろん頭にも溜まっているようで、さっきからぼーっとしてばかりで、夢子はいっこうにソファから動けなかった。二十二時半に帰宅してから、三十分は経とうとしていた。やらなきゃいけないことはいっぱいある。夕飯、お風呂、それとできたら、今日忙しくてやり損ねた些末な仕事を少し。
けれど、体が鉛のように重いのだ。せめて眠気を吹き飛ばそうと首を左右に数度ふるが、あまり効果はなかった。
「おうおう、お疲れさんだなー」
同棲して二年になる恋人の菊田杢太郎が、ソファの左隣にすらりと長い脚を投げ出して座る。その腿を覆う柔らかいスウェット生地が、悪魔的な魅力を放っていた。そこで寝たい。どうしても寝たい。膝枕の誘惑に負けた夢子が倒れ込もうとすると、菊田ががっしりした腕でそれを止める。
「なんでよー!」
「だーめ。今寝たら朝まで起きないだろ」
「いいのーそれで!」
「よくねぇよ。ちゃんと風呂入ってベッドで寝ろ」
疲れている時ほど体を労われと言いたいのだろう。
けれど夢子にはそんな気力も体力もなかった。今週は仕事がとくに忙しかったのだ。急な納期変更やクレーム、体調不良で休んだ部下の仕事のフォローなど、色々ありすぎて、週はじめのほうの記憶はほぼない。
「動けない。立てない。もう寝たい」
泣き言をいって菊田の肩口にもたれかかった。肩なら貸してくれるようで、そのままぽんぽんと頭をあやされる。鼻先をすり寄せた首元から、シャンプーといつもの煙草の香りがした。
「あー安心する……やっぱりここで寝る……」
「おい夢子、おい、化粧落とさないとまずいんだろ」
夢子は答えず、すんと鼻をならして居心地の良いポジションをもぞもぞと探った。これは本格的に寝出すと察した菊田は、少し思案したあと、空いた手を夢子の内腿にそっと伸ばす。はじめは優しく叩くように触れ、そのあとはゆっくりと往復させて、手のひらの熱をうつすように際どい場所のぎりぎりまで何度も撫であげた。ぴくりと夢子が身じろぎする。
「今週すごい立て込んでるみたいだったもんな」
気にせず菊田は言葉と手の往復を続ける。
「じゃあ寝ちまってていいから、俺の好きにさせてくれるか? 俺も今週おまえにかまってもらえなくて寂しかったんだよ」
腿にあった手がするりとウエストにあがり、そのまま胸に這わされる。やわやわと揉まれて、頬に熱が集まった。
(どうしよう。私、寝てることにされてる?)
「昨日もキスと腕枕だけで我慢したろ? だから今日は沢山触っていいよな?」
左手で胸にふれながら、菊田はさっきまで頭を撫でていた右手で、今度は夢子の耳をそっとくすぐる。熱い手だった。夢子は自分からもたれてしまったせいで、今は逆に菊田の腕の囲いから出られない。耳から首筋におりてきた手が、わざと感じさせるような手つきで鎖骨を甘く引っ掻いた。
「っ……」
息を漏らした夢子に菊田が笑う。
さらに両手で追い詰めながら、いつも行為のさなかに使う低くて渋い声で、煽るように褒めていった。
「いちにち働いたあとでも、いい匂いがするな。化粧が落ちかけてちょっと疲れた顔も良い。ここも、ここも、こんなに白くてやわらかくて……」
頭のてっぺんにキスを落としながら言う。
「おまえは完璧にかわいいよ」
「………………もうわかったから!!!!!!」
完全に夢子の負けだった。
「わかったわかったもうわかった、離して、ちゃんとお風呂入るから離して、もうやだ」
顔を真っ赤にしながら菊田の胸を押す。あっさりと菊田は身を離した。からかうような表情で、
「えらいぞ。待ってるからな」
と頭を撫でる。
声にならない反論と文句を胸のなかでぐるぐる暴れさせながら、夢子は勢いよく立ち上がって菊田から離れた。
ほんとにもう、この人は!!
「待ってなくていい! おやすみ!」
投げつけられた可愛い言葉に、菊田は満足げに笑った。