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    mya_kon

    @mya_kon

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    mya_kon

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    一緒に残業する同僚夏太郎です🌸全ての残業はこの世からなくなれと思いながら書きました

    #金カ夢
    aimingForTheGoldenHelix

    残業代はちゃんと出ます「おわんねーーーー!!!」
     そう言って俺はデスクに突っ伏した。もちろんキーボードはずらした上での行動だ。ここで変なところを押したり謎のショートカットが発動して今まで作っていたデータが消えたら俺も消える。消えたくなる。無理。まだ半年前の傷は癒えていません。
     突っ伏しながらも隣に座る××をちらっと見る。ここで一言「分かる」とか「こっちも」とか言ってくれたら「じゃあちょっと休憩しない? 息抜きも必要っしょ」なんて話しかけて、ビルの1階にあるコンビニに飲み物でも買いにいけるんだけど、××は真っ直ぐにディスプレイを見ているし、キーボードを叩く手は止まることを知らない。速いよー。分かってたけど××ってブラインドタッチできんだ、すご。
    「なー?」
     このフロア内で残業しているのは俺と××の二人だけだ。話しかける相手は××しかいないのに、それでも返事はない。無駄口を叩く暇があったら手を動かせってか。そらそーだな。
     節電節約経費削減! と総務が口うるさいので、明かりが点いているのは俺と××がいる島の上だけだ。まるで俺たちだけにスポットライトが当たってるみたいじゃない? どう? そんなロマンチックな気持ちにならない? 俺は今、なってんだけど。
    「××ー?」
     無視すんなよー、の気持ちを込めて名前を呼んだ。まあどうせ返事なんてないんだろうけど。
     俺はのろのろと体を起こす。
     不貞腐れても仕事は進まないし、今日は木曜日なのでそれはつまり明日も仕事だということなわけで、はー、一秒でも早く仕事を終わらせるべく手を動かす方がいいってわけですね、サーセンサーセン。
    「奥山くん」
    「へ」
     まさかの反応。驚いた俺は変な声を出す。
     ××の顔を見るけどやっぱり顔はこっちを向いていない。ダダダダダダダダダダダという効果音がよく似合う手の動き。はあー、俺もキーボードになったら××にそうやって叩いてもらえる? あ、ダメだ、疲れてんな、俺。
    「今日絶対この仕事終わらせて明日定時で上がるから」
    「はあ」
     何の報告? だから俺も真面目にやれって? それはそーですね。
    「そしたら明日、一緒に」
     言葉を切った××と目が合う。
     ××の顔は真剣で大真面目で真っ赤で真っ直ぐで、俺は思わず姿勢を正した。すぐに首を回される。俺から見えるのは赤くなった××の左耳。心臓の音がうるさいのは俺だけ? ××もそうでしょ?
    「なんでもない。仕事しないヤツとは飯行かない」
    「やだ、やる! 行く!」
     予想外のクソデカボイスで返事をしたら、××がこっちを向いて笑った。結果オーライ? てかマジで?
     確認したくても、××はすぐにディスプレイと向き合ったので取り付く島がない。えーん、ねえ、ほんとに? いいの? 期待しちゃうよ?
     今日の頑張りは明日の楽しみ! と自分に言い聞かせて普段の百倍集中して仕事をした。最初っからそうすればよかったな、と思ったけどそれだと××と二人っきりの残業タイムはなかったわけで、そうなると多分明日の飯会はなかったはずで、あーーーーーー好き!
     職場を出る時、××の顔が少し嬉しそうだったのは見間違いではないはず。
     ちなみに俺はニヤニヤしっぱなしだったからね!
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    コルテナ

    DONE現パロ勇尾のSSSです。とても短くてとても糖度がたかい。
    なんでも可愛い勇作さん「兄様の瞳に似て、とても可愛いですね」
    「……はぁ」
    勇作の小さな囁きに、百之助は気の抜けた返事を返す。弟の視線の先には、黄色っぽい頭をした小魚が、小石を掘った穴からひょこりと顔を出していた。魚特有の、どこを見ているか分からない、真っ黒な目。
    円柱の水槽は、近づいて見ると案外分厚い。じっと見ていると屈折がきつく、目が疲れる気がして、百之助は少し遠巻きに見ていたのだが、弟がにこにこ笑いながら指さすので、少し覗き込むように近づく。
    「…………」
    とりたてて人気のある水槽ではない。そもそも、百之助はあまり何かを「可愛い」と思うことがなかったので、それが世間一般的に言って可愛いかどうかは判断がつかなかった。だが、そんな百之助でもなんとなくわかる。たぶん、こういうのは可愛いと言っても、「逆に」とか、「一周まわって」とか、そういう枕詞がつくたぐいの可愛さのような。勇作のほうを振り返る。にこにこと笑っている。可愛いというのは、勇作のようなもののことを言うのでは、と真顔で考え、もう一度魚を見やる。勇作のきらきら輝く瞳、かたや魚の真っ黒な目。
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    コルテナ

    DONE生産工場は勇尾ですが、これは勇尾として成立しないふたりのお話です。おがたがゆうさくさんから確かに受け取ったものがあるし、それを受け取ったことを認められたのが310という解釈で、二度目は受け取ったそれをゆうさくさんにもかえしたいと思ったりしてほしいな、というきもちで書きました。
    ただ受け取ったものをかえすだけ腕時計に目を落とす。夏季休暇の空港を少々甘く見ていた。あとは搭乗するだけとはいえ、待つ身には気が気ではないだろう。足を早めて、人混みを少々強引に進む。ふと、後ろから自分を呼ぶ声がした。
    「勇作殿」
    決して大きな声ではないのに、よく通る低い声。足が止まる。振り返ると、歳のあまり変わらない男がこちらをまっすぐに見ていた。光を通さないような、真っ黒の瞳が、ひどく印象に残る。
    「あの、すみません……どこかでお会いしたでしょうか」
    人の顔と名前を覚えることは、不得手なほうではないというのに、彼の顔も名前も、全く出てこない。ならば初対面と断じていいはずなのに、なぜかためらってしまう。彼は小さく首を振った。
    「今から俺が言うことは、聞き流して頂いて結構です。なに、時間はかかりません。再びこうして姿を見ることになるとは思っていなかった。ただ、こうして向かい合った以上、俺はあなたに、伝えなければならないことがある。ははあ、戸惑ってますね。いいんですよ。狂人の戯言と思って頂いてかまいません。……俺は、かつて、あなたに多くのものを貰いました。その時は欲しくもないと思っていたんです。捨ててしまいたいとすら、いや、捨てたのだと思っていました。でも、本当は違っていた。あなたに貰ったものは、確かに俺の、“よすが”になった。本当です。それを直視したら、生きていけないと思っていたのに。……今でも俺は、あなたに貰ったものを抱えて生きています」
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