②義手義足を赤色にすると決めてからそれはもう大変だった。意識が覚醒したことにより昼夜問わず酷い幻肢痛がファルガーを襲ったからだ。あまりの痛さに声も出ず大量の脂汗が流れるばかり。鎮痛剤もほぼ無意味に等しかった。昼間は召使いが汗を拭いてくれるから良かったものの、夜は誰もいない一人きりの部屋で痛みに堪える日々だった。上着だけですっかり自分の体が覆われてしまうことに、違和感を覚える暇もなかった。
痛みに苦しんでいるうちに一ヶ月があっという間に過ぎていった。その一ヶ月の間で例の輩達は捕まり、アジトとなっている場所も見つかった。警察に引っ張られていったらしいが詳しいことはよく知らない。だがこの一ヶ月で家族は比較的今まで通りの生活に戻っていた。父は当主としての仕事、母はより一層ヴォックスの教育に力を入れ、ヴォックスは勉学その他に励んでいた。痛みに苦しむ自分にずっと付き添ってくれとは言わない。ただ、家族は一ヶ月で変化を受け入れ、普段の生活に戻れるものなんだとぼんやり思った。そしてまた痛みがファルガーを襲う。夜は孤独をより一層感じさせた。
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