Long Long Ago -むかしのはなし-ママは昔、お空が飛べたんだよ。
嘘だって?嘘じゃないヨー。
ママはちっちゃいときから、毎日飛び回ってたんだよ。でも、好き勝手に、自分の飛びたいように飛んでたから、いっしょにいたひとたちから毎日変な目で見られてた。みんなと同じように飛んで!って、怒られたこともあったなあ。
なんで怒られたかって?うーん、そうだなあ、みんな、自分にわからないものが怖かったんじゃないかな。ママは、みんなと違うことばっかりしてたから。自分と違いすぎると、どうすればいいかわかんなくて怖いんだよ。だから自分と同じようにさせたかったんじゃないかなあ。
きみだって、オバケが怖いでしょう?自分にとってよくわからないものだから。怖くないって?ふふ、そう?
でもママはどれだけ怒られても、どれだけ嫌われても、好き勝手飛ぶのが大好きだったから、知らんぷりしてひとりで飛んでた。自分が楽しいように飛ぶんだ!なんて。みんなと仲良くできないからってひとりぼっちでも、なんにも気にしなかった。
でもね、ある日、いつもみたいにひとりぼっちで飛んでたら、神さまに会ったの。
嘘だって?これも嘘じゃない、ほんとだヨ。真っ白な鷲の神さま。
うちにおいでって言って、おうちに連れてってくれた。すごく素敵なところにね。浦島太郎みたい?確かにそうかも。ママは鷲を助けたわけじゃないけどね。むしろ助けられたほう。
あ、でもね、神さまのおうちは、竜宮城みたいに綺麗なところだった。楽しくて優しい仲間がいて、みんなで毎日飛んだよ。そこでは、ママか好き勝手に飛んでも、誰も怒らなかった。それってすごいねって、みんなが褒めてくれてた。ほんと、楽園だったヨ。
パパにもね、そこで会ったの。パパは竜宮城のなかでもいちばん強くて、綺麗だった。毎日いっしょに飛びながら、ああ、美しいなあ、って、ずっと見てた。パパとみんなと飛ぶのは、ほんとに楽しかったよ。
じゃあなんで今は飛ばないのかって?
それはね、竜宮城から出なくちゃいけなくなったから。浦島太郎も、竜宮城を出たでしょ?それと同じで、ずっとあそこにいるわけにはいかなかったの。
それに、ママはもう、竜宮城以外の場所では飛びたくなかった。だって、みんながママの飛び方を褒めてくれるのなんて、あそこだけだったから。自由に楽しく飛べる場所は、あそこだけだったから。
だから、もう飛ばないって決めたんだ。パパはこれからも一緒に飛ぼうって言ってくれたんだけどね。
パパは竜宮城を出た今でも、あの頃みたく強く綺麗に飛んでるんだよ。
ほんとだよお。毎日飛んでるよ。見たいって?ふふ、じゃあ今度ママと一緒に見にいこっか。
いつか、きみも飛ぶのかもしれないね。
飛べるよ、飛ぼうと思えば、どこまでだって。だって、パパとママの子だもん。
さて、今日はパパが帰ってくるヨ!いっしょにハヤシライス作ろっか?きっとパパ喜ぶよ〜!