夏五版ワンドロワンライ第71回お題「富本銭」 なにもかも変わってしまったように思える男にも、記憶のままの部分は存在する。例えば文字の書き方。綺麗なんだか汚いんだかわからんと担任に言われていた、ところどころ繋がった漢字。特に「悟」の口はほとんど丸である。
長期の任務を終えて、久しぶりに高専に戻ると、ほとんど使ったことはない一応五条専用の机の上にそれはあった。自然と、頬が緩む。
『東京都立呪術高等専門学校内 五条悟様』
いつものように、それ以外は差出人の名前すら書いていない。ひっくり返してみれば、某トトロにでも出てきそうな大きな木の下に小さな祠がある風景がある。
――いや、どこだよこれ、わかりづら。
消印は、5日前。この地名は、九州だっただろうか。その前は北陸あたりだったので、随分と移動したものだ。
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