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    レニ/右爆/轟爆
    眠れぬ夜の小さな図書館

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    轟爆/雄英一年生

    #轟爆
    bombardment

    ベッドの中で『爆豪、ちょっといいか?』

    初めて仮免補講に出向いたその夜に部屋にやってきたのはやたら目の据わった男で、自分の目つきの悪さを棚上げにして何だが、こんな顔付きのヤツを部屋に招き入れるのはゾッとしねェと本能が告げた。だから、“よくねえ明日にしろ”って言おうとしたのに“早い方がいいだろ、なるべく早く終わらせて一緒に寝ような“だなんて会話にもなっていない、微妙に意味深な台詞をぶっ込んできたから一瞬思考が停止した、

    それをいいことに不法侵入したやや物騒なポーカーフェイスはサイドテーブルを挟んで俺の目の前に陣取り、俺が作成した補講のレポートを覗き込んでいる。もちろん散々文句は言った、勝手に覗き込むな(顔が近ぇ)、1人でやれ(でもコイツの読み筋は悪くねェ)、悪かねぇ考察だ、次の補講は合わせ技やってみっか…って、いつの間にか絆されかけとるンじゃねェマジで調子が狂うっての。

    ムカついて強く睨み付けた筈なのにどうしてか少し顔が火照ってしまった気がして、

    それを打ち消すように追い討ちで思いつく限りの文句を並べ立ててやったのに相変わらずポーカーフェイスのまま、おお、とか、悪い、とか口先だけの返事をする造りだけは綺麗な顔に一矢報いたくて、近付いてきた所を狙って眉間に頭突きをしてやった、

    はずなのに。

    『痛ってェなァ何だその石頭は?!』

    形のいい丸い頭は思いのほか頑丈で、今まで頭突きで負けたことのねェ俺の額を見事にかち割っておいてなお表情を崩さないなんて、コイツこんな奴だったか?

    (つって、語るほどまだ知らねェか)

    何せ今日初めて白日の下2人きりだったのだ。陽の光の下でまじまじと見た隣に立つ轟はすっとしていて、端的に言えば美しかった。強いものと綺麗なものが好きな俺の、好きを2つとも併せ持った同級生に心がぐらりと揺れたのは確かだけれど、

    (そんなことは轟の知る由じゃねェのに)

    流れ落ちた赤い液体に片方の視界を奪われ、もう片方で拭くものを探しているうちに額をペロリと舐め上げられた、ヒッと情けない声が漏れて慌てて口を結ぶと柔らかい何かが唇に押し付けられ、それが轟の唇だと気が付いて慌てて押しのけると、ばくごう、と熱っぽい声で名前を呼ばれた。一体どうしたんだ、コイツいよいよ様子がおかしい。

    『爆豪、顔真っ赤だけれど寒くねぇか?』

    ア?

    この期に及んでまたしても意味不明、場面と台詞が合ってねェんだわ一体何を考えているんだ、寒くねーわと答えてからブルリと身体が震え、窓の外を見ると白い花びらが舞っている。いや、花じゃねぇ…これは、

    手のひらに掬い取ったソレは雪のカケラ、一体どうなって…

    いや、つい最近コイツと一緒に雪の降る中を歩いた、ハ?

    轟と出会ってまだ半年足らず、冬を迎えたことなんてねェのに何でそんな光景が浮かんでくるンだ?

    『なぁ勝己、今日は何月何日だ?』

    +++

    【爆豪に掛けられたのは、一番大切な記憶を消す個性だそうだ】

    大切な記憶と聞かされ心中は複雑になる。仮免補講から戻ってくる途中、突如意識を失った勝己が、次に目を覚ました時には俺のことを轟と呼んだ、

    (2人きりの時は焦凍って呼ぶのに?)

    その直後勝己以外にもバタバタと人が倒れたから個性事故だと気が付き先生を呼んだからそれ以後はろくに勝己とは話もできなかった、やっと会話が出来る余裕が出来た頃には、勝己は切島達に囲まれ心配されていた。

    (違うだろ?)

    そこは確かに勝己の居場所のひとつだが、一番は俺の隣の筈だ、この2ヶ月間必死に努力して勝ち取った俺の、俺だけの勝己がまるでリセットされたかのようでショックだったが、

    “一番大切な記憶を失う”

    という文言が辛うじて慰めになる。勝己にとって俺との2か月間が一番大切だったのだと、俺にとって一番大切な時間と勝己の大切が一緒なのだということに励まされながら俺は再び勝己の隣を取り戻すべく勝己の部屋を訪れたものの、

    (抑えられねえ)

    一度深く愛し合った相手を前に好きを調節することなんて不可能で、俺の顔を見る度に噛み付いてくる勝己はやたら可愛くて、でも鋭い彼に必要以上に怪しまれても困るからなるべく顔には出さないようにしていた。何故なら、

    【個性の解除方法は、掛けられた本人が記憶を失っていることに気が付けばいいらしい、あくまで自力ってのがポイントだ】

    それなら楽勝だと思った、何故なら勝己は賢くて鋭い、だからすぐにでも記憶の齟齬に気が付くだろう。そう思ったのに、俺を眼中に入れない勝己を前にすると焦れてしまう。俺はこんなにせっかちだったろうか、こんなに堪え性がねぇタチだったろうか、気が付くと勝己の人よりかなり広いパーソナルスペースに侵入してしまい頭突きをされた、

    その赤を見たらもう止まれなくてつい舐めてしまったけれど、よく考えたらそんなことを積み重ねて俺達は距離を縮めてきたのだ、日常的に起きることなら遠慮することはないと自分に言い聞かせながら重ねた唇を離し、覗き込んだ勝己の顔は今まで見せてくれたどの顔よりも真っ赤で可愛くて、

    仮免補講に初めて出向いた日に、勝己の胸の中に俺への好意が芽生えたのだと確信した。

    『しょうと』

    ああ、俺のかつきが戻ってきた、

    『寒ィ、暖めろ』

    両手を広げると真っ赤になってテメェから来いやと言う辺り、どうやらすっかり元に戻ったらしい。これからも一緒に大切を積み上げていこうと囁いたらもうすっかり茹だってしまった、とてつもなく照れ屋の恋人を腕に抱え込みながら、約束通り早めにベッドに入った。




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    eikokurobin

    DONE轟爆/雄英2年生
    無自覚でいさせて 朝、ハイツアライアンスのリビングに降りていくと半袖の者がチラホラ目に入った。すぐに6月に入り衣替えが許可されたのだと気が付き、ならば自分も半袖にすれば良かったとチラリと思うが、今から着替えに戻るのも面倒くさいし何よりなるべく早く学校に行きたい。今日のところは自前の個性で蒸し暑さを凌ぐとして足を急がせ、教室に入り目当てを探すと、

    いた。色彩の淡いのがひとり、椅子に座り耳にワイヤレスイヤホンを入れて何かを聴いている。それは、いつも誰より早く登校する、俺の爆豪。

    耳を封じたからといって他人の気配を気にしない男ではないが、そっと足音を忍ばせて近づきわざと耳元でおはようと囁くと、早速距離が近ぇと睨まれる。誰もまだきていない教室に2人きり、しかも恋人の関係でそんなことをいうなんて酷くねェか?と、ちっとも酷いだなんて思っていない口で言いながら唇に唇を寄せると、キスの代わりに鼻の頭を齧られそうになる。おはようのキスひとつ素直にさせてくれないなんて、本当に懐かない猫のような恋人だが、そこがまた可愛いと思ってしまう辺り、自分も中々に重症だと思う。まもなくほかの奴らも登校してくるだろう、それまでのほんの数分だけでも爆豪を眺めていたくて、ひとつ前の席を拝借して向かい合わせに座った所で、
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