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    たい焼き時雨

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    たい焼き時雨

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    毛玉シリーズの続き。ちょっとずつ進んでいきます。

    #五夏
    GoGe

    五条くんだけが知ってること 呪術専門執行機関東京本部。
     前で言う高専にあたる日本の呪術界の要だ。呪術師の育成から任務の斡旋、それから呪術の素養のある者のスカウトなどをこなす政府公認の特殊機関。前じゃ考えられないぐらい、僕ら呪術師の待遇が良くなっているこの世界。更には呪術師の人数も桁違い。
     特級呪術師は前同様、僕と憂太と九十九の3人だけだけどそこまで忙しくはない。

    「あーぁ、うまく行かないもんだねー」

     呪術専門執行機関東京本部…略して呪専にある僕の執務室。傑と共用で使うことを思って、広いスペースにしたのに傑は僕の隣にいない。
     このだだっ広い執務室の僕専用デスクに上半身を寝そべらせながら、溜息をつく。そんな僕をほっといて部屋の中央に設置されてるソファに座っている硝子は、難しい顔でこめかみに指を当てて記憶の整理をしている。そこそこ時間がかかっているからせっかく硝子の為に淹れたコーヒーは、いくらか冷めていた。
     その硝子の向かい側には七海が座っている。なんと、この世界の七海はまた僕らより年下で絶賛高校生だ。ちなみに伊地知は年上。

    「つまり、だ。私が五条だと思っていたアレは、五条の感情から生まれた呪霊なんだな」
    「正確には違うかな。あれは、傑への執着の成れの果て。五条悟に成り切れない僕モドキだ」
    「モドキの癖に貴方の呪術は使うわ、五条さん以外の呪術師では歯が立たないわで酷い有り様ですが」
    「当たり前じゃん。五条悟と対等にやり合えるのは僕自身もしくは夏油傑だけ、ていう認識がそうさせてるからね」

     デスクから立ち上がって、勝手に置いたコーヒーメーカーにマグカップをセットする。ほどなくして、コーヒーのいい匂いをたてながらマグカップに溜まっていく。半分ぐらいになったら止めて、冷蔵庫から牛乳をとりだして投入。一旦しまってから、砂糖とシロップを満足するまでいれる。
     そうすると2人が凄い顔をして僕を見てくる。やだー。

    「さて、硝子。僕がちゃんと認識出来てるね?」
    「あぁ。お前は五条だ」
    「じゃあ、こっちは?」
    「……すまない、七海だと聞いてるが顔が認識できない。なんなら、声も違うように感じる」
    「伊知地君や灰原も駄目でした」
    「……名前も駄目だ。聞こえない」

     険しい顔で深刻な声で喋る硝子。なんか面白くてまじまじと見てたら気付かれたのか、下から睨みつけられた。まぁ、でもほらずっと続くものじゃないから時間がたてば解呪される。そう告げると、次は溜息を吐かれた。
     特製のカフェオレも出来上がったし、再び自分の特注のオフィスチェアに座りカフェオレをすする。予想通りの味。…傑のいれたカフェオレ飲みたい。

    「硝子のそれ、暗示みたいなもんだよ。むちゃくちゃつよーい暗示」
    「ほぼ洗脳ですけどね」
    「そこまでしといてなんで、今の私は反転術を使えないと思わせたんだ?確かに大学にいた時は、怪我なんて全くしなかったが」
    「モドキにとって反転術はいらなくて、家入硝子が必要だったから、かな?」
    「ただの一般人になった私を?」
    「そ。理由は五条悟を間近で見た1人だから。
    さっき言ったでしょ?あのモドキは、僕こと五条悟に成りきれないモドキだって。
    つまり、あれが五条悟になるには僕が過ごしたあの青い春をなぞらないといけないんだ。つまるところ、儀式みたいにさ。
    それに必要不可欠なのが傑だ。アレはすぐさま傑を手に入れた。そして、次に硝子を手に入れたかった。
    けど、そこで問題が発生した。硝子、君は傑と接触する前に僕達呪専側にいたこと。僕達が傍にいる状態で硝子と、出会ったらどうなるか分かったもんじゃないとモドキは判断したんだろうね。
    こっちがモドキを確認してからは、大人しくしてはいたけど事態が急変した。そう、硝子がモドキに取り込まれたんだよ。いやぁ、あのときは下から上まで大騒ぎになったんだよね。
    運良く僕達から硝子を引き離せたモドキは早々に手をうった。硝子がモドキの側から離れないよう、余計な事をさせない為に硝子に暗示をかけた…って所かな。
    傑とは、たまたま大学で再会したってね。」

     そう言うと案の定、硝子は目を見張った。まぁ、強制的に忘れさせられてたから仕方ないリアクションだよね。
     元々、硝子は前と同じく呪術師の家系であり他人に反転術式を使えていた。だから、そのまま呪専に入り僕達と再会した。そこまでは、良かったと思う。
     誤算だったのが、まさか硝子が1人で傑に接触したこと。その結果が、今なんだけど。何を思って硝子は単独行動にでたのかは、本人にしか分からない。

    「私はおびき出されたのか?」
    「いいや?硝子は何か思うことがあったのか、1人で傑に会いに行って取り込まれたんだよ」

     私が?と硝子は呟くと、またこめかみに指をあてて考え込み始めた。いくらやっても、まだ解けてないから記憶は戻らないんだけどな。
     カフェオレに飲みながら、デスクの上に広げてある今回の報告書と傑と僕モドキの資料をなんとわなしに眺める。今は必要なくなった硝子の資料も一緒に置いてあるけど、こっちはシュレッダー行きだ。

    「どのくらい私は取り込まれていたんだ?」
    「大学始まる前ぐらいだから…1年経たないぐらい?」
    「その間、色々な手段で家入さんと接触しましたが…認識されず失敗で終わりました」
    「で、痺れを切らして五条を派遣したのか」
    「いえ、今回のは五条さんが勝手に動いただけです」
    「は?」
    「本来なら五条さんは来るべきじゃないんですよ」
    「僕とモドキが戦ったら街の1つや2つは消し飛んじゃうからね。上も周りもそれを嫌がって、中々僕を派遣しないし」

     七海が冷めた声で答えると、硝子が大きな溜息を吐いた。失礼じゃない?一応、硝子を救い出したようなもののに。
     そもそも、僕か傑以外対処出来ない相手なんだからさっさと僕を派遣すればいいんだ。そりゃ、周りの被害は大きいだろうけど街中でなければいいんだし。
     傑とモドキが居たならなら戦闘は避けられないだろうけど、今回の目的は硝子の救出だけ。更には硝子と毛玉だけで相当ラッキーだった。
     だいたい、他の奴らに任せたら1年近く進展しなかったのが僕が来たら秒で終わり。この流れで傑も早く僕の傍に取り戻したい。

    「なら、夏油はあのままなのか?」
    「まさか。そんなの僕が許すわけないだろ」
    「それは五条さんの意見で、上層部は五条悟モドキの目的を知りたいようなんです。それから対応を考えると」
    「それは、五条が言ってただろ。五条悟に成るためにって」
    「残念だけど、それは手段で目的じゃないんだよ」
    「と、言うのが五条さんの見解です」
    「五条になるのが手段なら、目的はあれか?夏油といる事か?なら今のモドキはその目的を達成しているだろ」
    「傑がモドキを"僕"だと認識するのがモドキの目的だよ」

     ありのままを告げると七海も硝子も顔をしかめた。硝子に至っては「糖分足りてないのか」て、テーブルに置いてあるスティックシュガーを僕の方へ投げてきた。
     もー、物を投げない〜。とりあえずスティックシュガーはカフェオレに投入しといた。

    「五条悟は六眼を持ち、無下限呪術を使いこなす、最強の呪術師だ。…そして、五条悟には夏油傑がいる」
    「あとクズ」
    「硝子ー?」
    「五条が夏油に執着しているのは分かってるけど、認識ってなんだ?記憶はないが、夏油はあの五条の事をちゃんと五条だと認識している」
    「毛玉の悟としてね。あのモドキは、傑に"僕"だと認識されたいんだよ。前の記憶こみで、夏油傑に自分は五条悟だと認められたい」
    「…家入さんを取り込んだのは、儀式に必要な人物であると同時に夏油さんの記憶を思い出させるピースとして利用するためだったと」
    「おそらくね」

     前の記憶がない傑、ねぇ…。
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