蒼穹のフロントライン・2 もうもうと砂塵が舞う。雲ひとつない、雨の降る兆しなど全くない空はどこまでも青く、抜けるように高かった。それも今は吹き渡る風が巻いあげた砂粒にまみれ、うっすらと黄土色にかすんでみえる。暑く乾燥した空気が皮膚や口腔内の水分を奪い、眼球さえも乾涸びさせていくようだった。
ここはアメストリス東部の辺境、大砂漠に面した戦地イシュヴァール。イシュヴァラなる一神教に支配された、褐色肌に赤い瞳の異人達が住まう土地。過酷な環境のせいか民族同士の結束は高く、ゆえに七年もの間、内戦は終わる気配もなく続いている。既に多くの人間が敵も味方も問わず犠牲になった。とても、たくさんの。
ここに送られてから、もうじき半月が経つ。軍人として、また国家錬金術師として在る上で決して逃れられない絶対的な責務。一度、招集がかかれば人間兵器として軍の求めるままに力を振るわねばならない。軍の狗として。今回、大総統はついに国家錬金術師の派兵を決断した。最大で約一年間を想定とした大規模掃討戦──否、殲滅戦だ。
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