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    nezumoto_

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    nezumoto_

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    そのうちR18になる幹部軸🎍愛され前提ココ武イヌ 並行する最終軸の記憶が、幹部軸の🥥と🐶にインプットされた話

     「……と、まァ、こんな感じで。」
     紹興酒の香りと皿を掠めるカトラリーの音。
     暗めに灯された暖光の下、料理に手をつけず纏められた書類を読み込んでいる稀咲の目が、薄いレンズの奥で光を放つ。
     「……随分とまァ……。ツキが見えたか?」
     隣で酒を煽っていた側近の半間が、稀咲が机上に広げた書面を覗き込んでニンマリ口端を上げた。
     「わお♡スゲー。向こう二年は安泰じゃねェの? やーっぱ、金を作る天才ってのは名前だけじゃねェンだなァ。ネ、稀咲サン。」
     「慢心して足元を掬われるようなヘマだけはするなよ。最近はイヌがよく嗅ぎ回ってる。」
     「そりゃモチロン。横から掻っ攫われちゃァ堪ンないですから。」
     横に流した髪の毛先を指先で捌け、陶杯を傾けて酒を舐める九井の横、乾がニヤつく半間を見据えながら匙に乗せた炒飯を口に運ぶ。
     「おいイヌピー、オレの分も残しといてよ。」
     「知らね。酒ばっか飲ンでねェでさっさと喰えよ。」
     淡々と食事をする乾に、半間は未だ笑みを携えたまま、目の前の海老へ箸を伸ばした。咎めるように横目で見る稀咲へ、「一口だけですから」と子供のような言い訳をして、実際に一口でそれを呑み込む。
     「よく食うなァイヌッコロ。」
     「……体力が必要なンで。」
     「ふーん? オンナでも囲ってンの?」
     口端についたソースをナフキンで拭いながらピアスを揺らして首を擡げた半間に、乾は応えない。
     皿の米粒ひとつ残さず、最後の一口を食んだのを見届けて、稀咲と半間は立ち上がった。
     「また連絡する。さっきも言ったが、くれぐれも気を抜くなよ。金も兵力も兼ね揃えたオマエらを失うのは惜しいからな。」
     「これはまた光栄なお言葉を。ですがご心配なく。こちらもこちらで手放せねェモンがありますから。」
     「ふん……何にご執心かは知らねェが、あまり現を抜かしすぎるな。」
     「肝に銘じておきますよ。」
     九井の食えない笑みに稀咲は顔を顰めたが、隣でスマートフォンを取り出して液晶をなぞっていた半間に目を向けると、その腕を引っ掴んで画面を覗き見る。
     「……動きは。」
     「ありませんね。松野には連絡をしているようですが。足抜けとも少し違う。」
     「何かあれば直ぐに言え。」
     臍を噛むような表情で目元に力を込めている稀咲へ、陶杯に新しく酒を注いだ九井は恭しく首を傾げて見せた。
     「……トラブルが?」
     「……花垣が姿を消した。」
     「花垣……、ああ、あの。」
     指先で垂れたピアスを弄りながらあからさまに思い当たったような素振りをする九井を、隣の乾は呆れ半分のような目で見て今先程九井が注いだばかりの酒を横から掠め取り一息に煽る。
     「イヌに捕縛されたワケでもなけりゃ、連絡にもレスポンスがある。……消えたのは姿だけだ。」
     「ヘェ。そりゃまた……まァ、アイツの成績なんてたかが知れてるでしょう。大した足しにもならねェのはよーくご存知でしょうし、ここらで邪魔な尻尾は切っちまってもいいンじゃ?」
     先程見せた書面を指先でトントンと叩く九井に、稀咲は僅かに目元をひくつかせた。
     それを見た半間も、血管が隆起する手でスマートフォンをひらひらと手持ち無沙汰に振る。
     「……なーァ、九井よォ。テメェが切る尻尾を決めれる立場かァ? 稼ぎと立場は比例しねェの。せっかく失うにゃ惜しいアタマしてンだ。どーせ閉めンなら財布の紐だけじゃなくて、余計な口も、な?」
     「あぁ……これはまた失言を。見逃してくださいよ、軽い世間話のつもりでしたから。」
     「……まァいい。オマエらも、花垣について何か掴めたら連絡しろ。行くぞ半間。無駄に確執をつくるな。」
     じとりと糸を引くような視線でもって九井と乾を見据えた稀咲は、レンズの奥の瞳をスっと細めた後に半間を引き連れ飯店の個室を出ていった。
     苛立ったような革靴の底が雑に廊下の絨毯を踏みつけていく音が遠ざかり、やがて完全に人の気が引いたのを察すると、今までピンと張っていた糸をすっかり切ったように九井が吹き出す。
     「……アハ、ハハッ! なァンだァ……半間、アイツもコッチのクチかよ。ンは、ヒト誑かし。浮気性でつれェなァ。」
     「……余計なコト匂わせンなよ、ココ。オマエの癖はタチが悪ィ。」
     「ンだよ、ちょーっとカマかけただけだろ? ア、てかイヌピー、オレの酒飲んだ?」
     「マズ。飲めたモンじゃねェ。こんなんのドコがうめーンだ。」
     訝しげに、それにしては空になった陶杯を掲げてみせる乾に、九井はへらへらと笑った。
     そんな彼へ器用に眉を左右別に寄せた乾が、残っていた海老に指を伸ばして掴みあげる。
     「ア、行儀ワル。」
     「るせェ。早く帰りてェのにタラタラくっちゃべってるオマエが悪い。」
     一口で詰め込み、弾力のあるソレを奥歯で咀嚼しながら指先についたソースを舐め取る様を見ていた九井は、口端に滲ませた笑みを隠すこともせずに深緑のマオカラーシャツの上から自身の腹へ指を這わせた。
     「アー、腹減った。帰ろうぜ、イヌピー。この店はハズレだな。」
     「……だから最初ッからメシなんか要らねーッて言っただろ。なんだってアイツらとなかよしこよしでマズい料理なんざ囲まなきゃいけねーンだ。」
     「まァまァ。あと少しの辛抱だからさァ。ホラ、稀咲サンも言ってたろ? 慢心して足元掬われるようなヘマすんなってさァ。何にしたって礎は必要だからな。」
     ソースの名残をつけたままの乾の口元をナフキンで拭ってやって立ち上がった九井が、心底おかしくてたまらないとでもいうように歪む口角を手の甲で押さえながら個室の扉へ手をかける。
     「ホラ行こうぜ。アイツも胎空かせてるだろうし。」
     
     電気のつけられていない浴室、成人男性が三人入っても余裕のある浴槽は、シャワーのホースを挟まれた上から蓋で閉じられている。
     脱衣所から浴室に続く折戸を乾が開けた途端、浴槽の中から何かが蓋を蹴りあげるような音が反響した。
     「アハハ、元気な出迎えだなァ。」
     愉快げに口ずさむ九井が壁に凭れかかりながら、乾が浴槽の蓋に手を掛けるのを見つめる。
     「……タダイマ、花垣。」
     「ッ……は、ゲホッ……」
     蓋を取り外して浴槽を覗き込めば、拘束された両手足をばたつかせる黒髪の男が、人中まで満たされた冷水から逃れるように顔を上げて乾を睨めつけた。
     「ベストタイミングだったな。ホラ、出してやれよ。」
     「ックソ、が……!」
     透けたシャツと下着のままの心もとない姿をした男は、乾に抱きかかえられ浴槽から引きずり出された体を、長時間冷水に晒されていたゆえに小刻みに震わせる。拘束を解いてやったあとの手や足はあまりの寒さに指の付け根から固く丸まっていた。
     「アーア、こんなに冷たくなっちまって……。暖めてやンねェと。な、イヌピー。」
     「……今日はオレが先だぞ。」
     「わーってるよ。前のは行きずりだろ? そんなに根に持つなって。」
     「は、なせ……ッ! 触ンな……! テメェらがとじこめたクセにッ、白々しいコト言ってンじゃねーよ……!」
     タオルで雑に拭かれた体を恭しく姫抱きにした乾の腕の中で、蒼白の顔のまま牙を剥く花垣の濡れた額に九井が負けず劣らずの冷えた唇で口付けた。
     「そうご機嫌ナナメになるなよ、ボス。帰りが遅くなったのはいくらでも謝るし、今すぐ暖めてやるからさ。」
     「っ、の、呼び方ッ……キモチワリィ、から……やめろっつったろ……!」
     廊下に水滴を落としながら向かう先に花垣が朦朧とする中で気づくと、未だ青いままの唇をさらに戦慄かせて体の震えを一層強くした。
     「離せ! 触んな、色狂いどもっ……」
     「花垣、落ちる。」
     「触ンな!」
     「ボース。」
     乾に片腕で押さえられながらも手足を我武者羅にばたつかせる花垣を、九井が覗き込む。その表情をみとめた途端に、花垣は普段伏し目がちな双眸を恐れのあまりに丸くした。
     「ボス。なァ。今日は雪が降るらしいぜ。近年稀に見る大寒波だって。……ああ、どうせなら、いちばん見やすい所へ行くか? バルコニーにさ、ハンギングチェアを置いたンだ。」
     「……は、ァ、あ……ッ、やだ……嫌だ……」
     「そう? そりゃ残念だな。まァ、ボスは寒いの嫌いだし……こんなに体が冷えちまって、風邪でも引いちゃコトだからなァ。どうする?」
     あくまでも選択権はそちらにある、とでも装う上辺だけの質問に、花垣は自身の体から流れた冷水でしっとりと濡れた乾のシャツを鬱血して青白くなった指先で掴む。それに応えるように、乾が濡れた鴉の羽のような髪に鼻先を埋めた。
     「……せ、っくすは……嫌だ…………」
     「嫌々って、ハハ。お姫様だなァ。まァ、別にオレはいーぜ。我慢出来ンなら。添い寝だけにしようか。」
     開け放たれた寝室の中は、緩く掛けられた暖房で仄かに温かい。入室してすぐに、その温かさに冷えて固まっていた花垣の体が僅かに撓む。
     「イヌピー、ベッド寝かせてやってよ。オレはカフェオレでも入れてくるからサ。」
     横目で目配せをする九井に乾は無言の了承を返し、壁際に設置されたキングサイズのシーツの海へそっと花垣を放流した。乾自身もジャケットを脱いでネクタイを緩め、値が張るソレをお構いなく床へ放ってからベッドに乗り上げる。
     踵を返す九井は寝室から出る間際に、既に花垣の体に覆いかぶさっている片割れの姿を横目で見止めてから、今までずっと上がりっぱなしの口角をさらに深めた。
     嫌な気遣いを含んだ閉扉音がことりと部屋に落ちる。
     それを合図に、乾は自身の腕で作った檻の下で寒さに身を震わせている花垣を見下ろした。
     「……花垣。」
     「……ン、だよ……っ」
     白いエナメルが青白い唇を噛み締めるのに気づき、それに指を伸ばして控えめに弄ぶ。
     「跡になる。噛むならこっちにしてくれ。」
     「る、せ……ッ、触ンじゃねェよ……!」
     あまりに寒さが染み付いているのか、乾が拘束を解いてやって手を伸ばしてもそれが叩き落とされることは無い。先程の抵抗で気力も体力も尽きたのだろう。
     意志薄弱になり始めた視線だけが取り繕うように乾を睨みつけているものの、伸ばした指先が噛み締められた唇を解くのは大人しく受け入れた。
     「……冷たい。」
     「ン、テメェらのッ、せいだろうが……!」
     深爪がちな乾の節くれだつ指が、緩んだ唇の隙間から口内に侵入する。
     「っ、ぅ……」
     「口ン中も冷えてる。ぬりぃな……」
     唾液でしとどに濡れる指先が頬粘膜を擦り、円を描くように硬口蓋を引っ掻くと、花垣の上歯が子猫の威嚇のように口内をまさぐる乾の指を軽く食んだ。
     「ゃえ、ろ……」
     つたなくそう言葉にするせいで、蠢いた舌が指を擽る。無言でそれを見下ろした乾が腰を折って、寒さから逃れようと縮こまる花垣の頤を持ち上げた。
     「はなれッ、ンッ……!」
     性急を形にしたようにされる口付けに、花垣の目が一瞬見開く。乾の伏せた白皙の睫毛が視線に絡まる中、浅い息をつぐ合間に開いた唇の隙間へ熱を内包した舌が滑り込んだ。
     「っ……ん、ぅっ、ぅあっ……は、」
     「……花垣……」
     「ャ、だ……っ、」
     覆い被さる乾の体を押し退けようとする花垣の腕に力は入っていない。
     下唇から銀糸の名残を垂らしたまま、先程よりかは体温を取り戻してきた花垣は振り切るようにして頭からシーツを被った。
     「花垣、寒いだろ?」
     「るせェ……っかまうな……!」
     シーツの塊の中からくぐもった声で投げかけられる拒否の言葉に、乾は無言で隣に寄り添ってシーツの上から花垣の腰を抱き寄せる。
     廊下の向こうから微かにスリッパがフローリングを擦る音がするのに気づくと、花垣の頭からシーツを引き剥がして顔だけをこちらへ向けた。
     「ン!? ァ、んぅっ、ふ、ぅ、んッ……!」
     「ん……」
     徐にまた唇を重ね合わせ、今度は半ば強引に舌を突っ込んで口腔を舐る。背後で扉が開く音がするのへ乾は視線だけを向けた。
     「はァ、んッ……ぅ、は、ぃっ、ぅい……」
     「オイオイ、オレ抜きで楽しむなよ。さびしーじゃん。」
     サイドテーブルに湯気が立つマグカップが乗せられたトレイを置いた九井が、乾の投げ捨てたジャケットとネクタイを隅へ足蹴にしながら同じようにベッドへ乗り上げる。スプリングを鳴らす音と共に新たに加わった体重へ、花垣が薄く瞼を開いて体を震わせた。
     「はァ、はっ……ん、ァ……っふ……」
     「イヌピー、息させてやれよ。」
     「ん、ワリ……」
     渋々といった表情で離れる乾の腕の下、完全に脱力した花垣は酸欠に喘いではくはくと唇を開閉させて呼吸を再開する。
     「ホラ、ボス。カフェオレ入れてきたぜ。飲んで体暖めような。」
     「……っンな、何が入ってっか分かンねェモン、飲めるかッ……!」
     「疑り深いなァ。」
     くつくつ喉を震わせながら笑う九井は、見せつけるようにカップを持ち上げて中身を一口煽った後に、「な?」と肩を竦めて花垣を見下ろした。
     「爪先まで青白い。そのままじゃ風邪ひくぞ。オレらはそれを口実にして好き勝手できるケド、ボス、アンタはそれでいい?」
     青白い肌に貼りつくシャツの裾から、中途半端に温い九井の指が擽るように入り込む。
     カッと沸騰するように耳介を発赤させた花垣はその手や乾の腕の拘束から逃れようと身を捩ったが、冬場に長時間冷水へさらされた体は言うことを聞かず、シーツを少し蹴っ飛ばした程度に終わった。
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