ホワイトデー 夜に部屋で一人過ごしていると、連日の寒さに暖かいものが欲しくなる。昨日は沖野が暖かい飲み物を持ってきてくれたが、今日は自分で茶でも煎れようかと食堂へ向かった。
食堂に入ると、中央に置かれたダイニングテーブルには一人だけ着席しており、その座っていた人物もこちらに視線を向けたので目が合った。
「おー比治山」
網口だ。何やらテーブルの上に広げ、横に並んだグラスには琥珀色の液体が注がれている。
「網口、酒か?」
「そうそう。昨日由貴ちゃんにチョコレート貰ったからそれと合わせてちょっと、な」
笑う網口の嬉しそうなこと……本当に鷹宮のことが好きなのだなと伝わってくる。
そのチョコレートを大事そうに一つ摘まみ、少し齧る。一口で食べるのではなく何回かに分けて食べているようだった。
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