猫と遠乗り「あいつ面白えやつだな」
半日ほどの外出から帰ってきた父親は、荷物の整理もそこそこにどっかりと椅子に座り込んで、突然そう言い放った。
携帯用の回復薬をあらためていたベレトは、手を止めずにジェラルトを横目で確認する。出て行った時と変わらない健康そうな体を遠慮なく座面に沈めているのが見えてひとまず安心した。この稼業だ、帰ってきたら指一本無くなっているなんてことも珍しくはない。
「どこか行っていたのか」
「隊長さんに遠乗りに誘われてよ、水辺沿いまでちょっくら」
「この前調査隊が見つけたと言っていた所? 」
「そうそう、お前もちゃんと流行りの話を聞いてんじゃねえか。いい傾向だな。……そんでよ、……ふふ…」
肘置きに頬杖をついて笑う父親はかなり上機嫌な様子だ。よほど楽しいことがあったらしい。
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