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    sakana_no_ayu14

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    sakana_no_ayu14

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    供養。だいぶ前に書いていたマリ司です。オチどうしたかったのか、もう分からないのでお焚き上げします🙏

    #エリオ夢R
    erioDreamR
    #HRHプラス
    hrhPlus
    #マリ司
    mariologyDepartment

    嫌いボクは司令のことが嫌いだ。

    「私もあの曲、好きなんです」と少しリズムの違う鼻歌を楽しそうに歌いながら花に水をやる姿が嫌いだ。次はこれを弾いてほしいと渡してきた楽譜には、最後のページに連弾の曲が載っていた。けど、それを一緒に弾く機会はまだ無いままだ。


    嫌いだった。

    ボクのことを気にかける司令が。何かと理由をつけてブラッドに報告したり、ノヴァに連絡したりと勝手にボクのことを窺う姿にイライラする。いつも煩いくらい送られてくるメッセージが、ボクの返答で、しかも読まれないまま終わっているのも腹が立つ。腹が立つのに、変わらない画面を見ては焦る自分にもムカムカする。


    嫌いなんだ。

    レンとガストが何か言ってくる。本当に煩い奴らだ。ヴィクターからも視線を感じる。物凄く鬱陶しい。
    どれもこれも、今のボクには必要ない。部屋に戻ったが、頭の中は煩いままだ。ジャックとジャクリーンがボクの手を握ってきた。ギュッと両の手を塞がれる。こんなことをしなくても、物に当たらないのに。ジャクリーンが悲しそうな声でボクを呼ぶから、少しだけ悲しくなった。





    司令がボクを庇って大怪我をした。目の前には、僕を突き飛ばした彼女に看板が乗っかっていた。普段目にする赤が広がる。本来看板のあった場所にいた残党の白に煮えたぎる程の怒りを感じ、瞬時に攻撃を繰り出していた。


    名前を呼ばれ、肩を引っ張られて我に帰った。もう動かない白かった躯に興味はない。

    『どけっ、司令!』

    司令は出血で意識を失っていた。黒の服から滲む血が、青白い顔が、沸騰した怒りを違うものに変えていく。彼女が病院へ運ばれるまでの時間がとてつもなく長く感じた。


    司令が病院へ運ばれたとき、ボクはタワーへ戻っていた。何ともないと言うのに、ヴィクターに研究室へと連れられ、病院からの連絡を待つようにと言われた。どうしてボクがこいつの命令を聞かなくてはならない?注射の効果も今日は全く感じず、休まらない感情の波に落ち着かなかった。





    「マリオンちゃま、泣かないデ」

    ジャクリーンの声に思わず自分の目へ手を伸ばすが、もちろん涙はない。

    「ジャクリーン、ボクは泣いてないよ」

    「でも、とっても悲しいお顔をしてるノ。司令ちゃま、大丈夫ナノ?」

    答えられなかった。もし、前と同じような生活が出来なくなってしまったら。もしかすると、もうまともに歩けないかもしれない。


    どうしてボクを庇ったんだ。

    ボクが気付いていれば、こんなことにはならなかった。

    なんでノースで会議があったんだ。



    嫌いだ。ボクに心配させる司令なんて。





    その日の夜、ノヴァに連絡があった。サブスタンスの影響がないか、エリオスで検査するために司令が運ばれてくると。手術後の司令は疲れや麻酔の影響かまだ眠っていた。青白かった顔色も生気が戻ったようだ。まだ日頃の疲れからか隈は残っているけど。

    検査の結果、サブスタンスの影響は無かった。もちろん、怪我をする前まで安全な範囲に居させたんだ。影響なんてあるはずない。そんなことよりも気にしていた足だ。包帯がぐるぐると巻かれてあって、本来の姿を隠していた。暫くは安静にしなければならない。車椅子と松葉杖の存在感が医務室を圧倒していた。
    静かすぎる空間に居心地が悪くて、医務室から出ようとしたとき、声が聞こえた。


    「…マリオン、さん………?」

    目を覚ました司令がボクの名前を呼んだ。

    掴んだドアノブから手を離せないでいると「良かったぁ」なんて呑気な声が聞こえた。

    「…何が良かったんだ、そんな足になってるのに」

    「私じゃなくて、マリオンさんのことですよ。何処も怪我してなくって、良かったぁ……」


    あぁ、やっぱり嫌いだ。ボクがこんな時間まで眠れないでいたのに、また穏やかな眠りに誘われている司令に腹が立つ。

    「どうしてボクに指示を出さなかった?司令がボクを突き飛ばすよりも先に、ボクなら看板の落下も防いだし、残ってたイクリプスもすぐに殲滅出来た!その足、何針縫ったと思ってるんだ。ずっと血が止まらなかったんだぞ!」

    怒りで握りしめている手が震える。指先の血もまるで凍ってしまったみたいだ。

    「………ごめんなさい、その………咄嗟に体が動いてたというか………そうですね、“司令”としては有り得ない行動でした。あの時は『危ない!』としか思ってなくて、えっと………」

    言葉を探していた司令だが、同じように「気付いたら動いてました」と繰り返した。

    呆れた。ボクのこの怒りが馬鹿みたいだ。ボクの溜息に被るように「でも」と聞こえた。

    「今になって考えると、あれが最善だったかなって思います。私がすぐにマリオンさんに指示が出来なかったら、今マリオンさんがこうなってたかもしれない…………。それよりも、私が怪我した方が、ほら、別に事務処理がメインなので足は使わないですし」

    長々と自分が怪我して良かったことを語り始めた。そんなこと、全く興味がなくて聞こえない。

    「…ボクは司令のそういうところが嫌いだ。ボクに任せておけばいいんだ。………………ノヴァを呼んでくる」



    今度こそ医務室から出た。
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