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    金白/白金

    企画関連の絵や小説が完成したらここに投げます。
    鍵は一定期間経ったら多分外します

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    金白/白金

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    昔々の、日常の話
    寡黙な彼から見た、彼らの話

    興味のない日常いつもと変わらない日常
    毎日同じことの繰り返し
    日が沈んで、夜が明けるだけ

    それだけの日々だった筈なのに



    「それで僕は女神に言ってやったのさ……って、リベルタス!聞いてるのかい?!」



    そんな静かな日々の中に、音が増えた
    数歩先を歩く、俺より遥かに小さい金髪の男


    「…興味ない」


    俺の親友だと自称し、自分が何よりも美しいと豪語する騒がしい人物、アルジェナ

    わざと仕事の依頼がない日を狙って、
    俺を外へと引っ張り出す厄介者
    来たくもないのにアルジェナの家へ連れてこられる



    「なんだと!?美しい僕の武勇伝を聞かないなんて損しているぞ?!」



    会うたびにやれ武勇伝だの、やれ美しさだのを語ってくる

    いつもいつも、どうあしらっても騒がしい
    それに、増えた音は一つではなかった


    「おーい!アルジャナー!」
    「カデンス!遅かったじゃないか!」


    アルジェナの名を呼びながら駆けてくる男
    以前、唐突に「親友を紹介するぞ!」と勝手に引き合わされた黒髪のソイツ

    俺と同じく、一方的に巻き込まれた哀れな奴かと思っていたが、どうやらそうではなく
    自らアルジェナに関わろうとする奇怪な男だったと最近知った


    「悪い、寄り道してたら遅くなった」
    「む、美しい僕を待たせておくほどの寄り道があったのかい?」
    「花屋の前通ったら、そろそろだなって思い出してさ」



    そう言いながら、カデンスはアルジェナに赤いサザンカの花束を渡す


    「おぉ!確かにそろそろ枯れかけていたんだ、流石はカデンスだな!」


    花束を受け取ったアルジェナは、にこやかに笑う
    眩しくて直視ができないほどに、明るく

    そんなアルジェナを見つめるソイツを見て
    本当に奇怪で、気色の悪い男だと思った


    「流石って、普通だろ?」


    花を贈る行為も、その花と本数に込めた意味も
    アルジェナに向ける、意味の含んだ視線も



    全て



    「…バカバカしい」



    バカバカしくて、笑いも出てこない


    「…枯れるだけのゴミを渡す行為に、何の意味がある?」
    「意味って、別に…」


    冷たく言い放つが、ソイツは全く表情を変えない
    それが余計に、気色悪い

    そう思っていると


    「リベルタス、カデンスに謝れ」
    「……あ?」
    「早く謝りたまえ、彼がしてくれたことをそんな風に言う権利なんて、君にはない」


    カデンスではなく、アルジェナがそう言った


    「いくら君でも、僕の親友を侮辱することは許さないぞ」




    親友




    その言葉を先に受け取ったのは、俺のはずだ
    そんな奴よりも、遥か昔に


    なんてことは言わないし、一生言うつもりもない
    こんな関係に、興味はないのだから


    「リベルタス」


    アルジェナの瞳が、俺を見つめる
    責めるように、見下すように


    もう、考えるのも面倒だ


    「……悪かったな」


    思ってもいない、謝罪の言葉を述べる


    「別に、気にしてないから」


    ソイツは軽くそう言った
    本当に気にしていないようだ


    「よし、これで仲直りだな!それじゃあ早速花を生けようじゃないか!」


    何事もなかったかのように笑うアルジェナ
    バタバタと駆け出し、窓際に置いてある枯れた花が刺さった緑色の花瓶に近づく


    「ハハハッ、アルジャナは相変わらずだな」
    「……」


    そんなアルジェナを見て、ソイツは笑う
    そして、俺の方を見ずに話す


    「さっきのこと、本当に気にしてないからな」


    だから俺も、ソイツの方は見ない


    「それに、アンタに花を送る気なんか一切ないから安心しろよ」

    「…俺もお前から貰う気はないから心配するな」


    会話が止まり、一瞬の静寂が訪れるが
    それはすぐに書き消された


    「カデンス!こっちに来て花の一番美しい角度を一緒に探してくれ!」
    「おー、まかせとけー」



    静かな日々が懐かしいほどに、全てが忙しなく
    興味のないことばかり



    「リベルタス!カデンスがアップルパイを焼いてきてくれたそうだ!早く来たまえ!」
    「今日のは果実酒入れてみたぞー」



    だが、カデンスが作る食い物は、
    存外悪くなかった




    「とても美味しいぞ!カデンス!」
    「そりゃ良かった、アンタは?」
    「……普通だ」
    「ハハハッ、そうかよ」




    けれど、この関係の全てが気色悪く、
    バカバカしいことには変わりない

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