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    金白/白金

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    金白/白金

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    永遠の愛を込めて

    サヨナラといつかの明日「…ごめんナシラちゃん、もう君とは会えないんだ」


    彼の口から零れたその言葉は、
    まるで死刑宣告のようだった









    雨の降る森の中
    湖畔の近く、大きな木の下に2つの影があった



    「ラ、ラディスさん…っ、それは、どういう意味ですか…?」



    頭一つ分上にある彼の顔を見つめ、
    ナシラは戸惑いながら言葉を発する


    「…そのままの意味だよ」


    意味を問われ、困ったように笑うシドラディス
    彼のその表情から、ナシラが意味を汲み取ることはできない


    ぐるぐると色々な考えが頭の中を巡る



    もしかして怒らせてしまった?
    何か邪魔をしてしまった?
    酷いことを言ってしまった?




    それとも






    ボクを、嫌いになった?





    そう考えた途端、涙がボロボロと溢れた


    「ナシラちゃん…」
    「ラディス、さん…っ、どうして……なんで?」


    止まらない涙を拭いながら、
    シドラディスへと問いかける


    そんなナシラの涙を見たシドラディスは
    悲しそうに笑った



    「ボクの、こと…っ、き、嫌いになっちゃったんですか…?」




    どんな理由があろうと、本当は聞きたくない
    自分に非があるのではないかと思ってしまうから

    彼に嫌われないように努力してきた
    彼に釣り合うように頑張ってきた
    隣で笑い合っても、違和感がないようにと



    そう、たくさんのことを考えるほど



    彼のことが大好きなのだ



    だから、大好きな彼から言われた
    「もう会えない」という言葉は
    ナイフの如く胸に突き刺さり
    ナシラへ深々と傷を負わせた



    泣きじゃくるナシラを前に
    シドラディスは考えるように目を伏せる



    そして、ゆっくりと口を開く




    「…聞いて、ナシラちゃん」




    水面に落ちる朝露のような、
    はたまた新緑が香る風のような、
    そんな静かで穏やかな彼の声が、ナシラを包む




    「オレは、君を嫌いになったりしない」




    その言葉と同時に、
    シドラディスがナシラを抱き締める



    「…詳しくは言えないけど、どうしても此処を離れなくちゃいけなくて……もう戻っては来られないかもしれないから…だから、最後にお別れだけでもって思ってさ…誤解させちゃってゴメンね…」


    優しく落ちるシドラディスの言葉に嘘はなく、
    全てが真実なのだと分かる


    だからナシラは、黙って耳を傾ける



    「キミと過ごした時間は短かったけれど、ボクにとってはかけがえのない時間だったよ……凄く、楽しかった…」
    「…っ、ラディスさん…」



    ナシラを抱き締める彼の腕に力がこもる
    だからナシラも、それに答えるよう
    精一杯、彼の背中に腕を回した



    「キミのことが大好きだよ……ずっと側にいられるなら、そうしたい」
    「ボ、ボクも…っ、ラディスさんのことが大好きです…っ!一番、一番大好きです…!」



    ナシラの涙が、彼のベストへ染みを作る


    「ラディスさん…っ、どこにも行かないで…ボクのとなりにいてください…」
    「…ナシラちゃん」

    「ずっと、ずっと一緒にいたいです…っ」
    「……オレもだよ」




    別れを惜しむように、隙間なく抱き締め合う



    この時間が永遠なら良いのにと
    このまま、時間が止まればいいのにと


    二人はそう思っていた







    どのくらいそうしていたのか分からない

    どちらからともなく、身体を離す

    そして静かに、互いの目を見つめる




    「ナシラちゃん」
    「…はい」



    シドラディスの指が、ナシラの頬に触れる



    「オレ、もう行かないと…」
    「……はい…っ」



    優しく涙を拭い、笑いかける



    「……元気でね」
    「………ラディスさんも…っ」



    そして最後に、
    小さな額へ口づけを落とす





    永久の愛と、永劫の別れを込めて








    「…じゃあね、ナシラちゃん」




    二人の距離が、徐々に開いていく


    コレで最後だと、嫌でも分かる




    「…っ、ラディスさん!」




    遠くに見える背中へ、大きな声で叫ぶ



    「また…っ、またいつか……!」




    最後に、全てを込めて




    「またいつか会いましょう…っ!ボク、ずっと待ってますから…っ!!」




    大きく手を振り、愛しい人を笑顔で見送る









    いつかまた会える、明日のために
    小さな子ヤギは、今日も笑う


    いつの間にか、空は青く澄みわたり
    七色の橋が出ていた
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