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    由乃⛄

    @y5yuno

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    短いお話と供養、書きかけ進捗など。

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    由乃⛄

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    オメガバプロヒ爆轟
    運命とわかっているけど言う気のないαの爆豪と絶対に番を作らないΩの轟のお話。
    📮していた妄言を書き直し、新たに3話目を追記しました。

    #爆轟
    BakuTodo

    オメガバプロヒ爆轟オメガバプロヒ爆轟
    運命とわかっているけど言う気のないαの爆豪と絶対に番を作らないΩの轟のお話。



     広い世界で運命に出逢える確率はどのくらいなんだろう。

     同じ未来を目標にし、同級生となって、クラスメイトになる確率は。それはゼロに等しいんじゃないかと思う。
     爆豪の運命は轟だ。高校に入学してすぐ、匂いでコイツだと察してしまった。自分の運命が同性であることに舌を打つ。次いで、冷たさを感じる目を見て残酷な運命を呪った。
     月日が流れる度、轟の目つきや態度が軟化していく。柔らかな笑顔を向けられた時、爆豪は呪いを解いた。やっぱりコイツが運命なのだと改めて思ったからだ。

     高校三年生の春。
     新学期を迎えると同時に轟がΩであることをクラスの皆に打ち明けた。爆豪は匂いでわかっていたが、気付いていない者もいたようだった。
     プロヒーローとして活動するにあたって、Ωであることは内密にしておくべきだ。なぜ打ち明けたのか皆が聞く中、轟は自身がΩであることの危うさやヒーローとして活躍して行きたいこと、皆を信頼していることを話し、最後に「番は絶対に作らない」と言った。

     轟の言葉に。
     真剣な眼差しに。

     爆豪の心臓が凍ったように静かになる。轟の個性が発動したのかと思った程だ。
     運命が目の前にいるというのに、手を伸ばしてはいけないという。俺なら守ってやれるのに。この手は何のためにあるのだろう。爆豪はいつだか解いた呪いを再びかけた。
     爆豪は轟が運命の人だと匂いで察していても言う気はない。轟の意思を尊重すると決めた。
     だからきっと、爆豪も番を作ることはないだろう。


     番を作る気はないけれど、子供はいても良いかもしれないと考えた轟は、バンクで優秀な遺伝子を探し始めた。
     相手の個性が自分の個性と合わさった姿を思い浮かべる。この個性は炎と相性が良くないかもしれない。この個性であれば、氷の威力が増すのではないか。何度かバンクに足を運んで考えていくうち、やっていることが親父と同じだと気が付いた。
     何をしているのだろう。酷く動揺すると共にショックを受けて、轟は子供を諦めた。


     轟がバンクに出入りしていると人伝に聞き、爆豪は焦りを覚えた。番を作らず子供を産む気でいるらしい。
     運命の人が、どこの誰かもわからないヤツの子供を産む。想像しただけで吐き気がする。そんな馬鹿があってなるものか。爆豪は急ぎ轟に会いに行く。
    「単刀直入に聞く。テメェ番作んないでガキ作ろうとしてるらしいな」
     轟を見た瞬間、爆豪の口からスルリと流れるように言葉が出てきた。焦りを覚えていたからだ。すぐに本題に入ってしまった。そんな爆豪に轟は本当に単刀直入だなと眉を寄せた。
     子供は諦めたのだと轟が言う前に爆豪が「俺じゃ不足か」と言う。轟は驚き、言葉を無くしてしまった。
    「俺なら個性も強ぇし頭も良い。テメェの相手が誰かってなってもヒーローとしてぜってぇ公言しねぇし、何かあったら守ってやる。父親が誰かガキに教えたくねぇならそれでも良い」
     爆豪が言った言葉を轟は一言一句違わず頭の中で復唱した。どうしてそんなことを言ってくるのだろう。
     爆豪の個性が強いことは確かだ。頭が良いことも認める。ヒーローとして公言しないと言うのも、何かあれば守ってくれると言うのも本当だろう。
     けれど、子供に自分の存在を知らせなくて良いというのはわからない。
    「なんで、そこまでしてくれるんだ?」
    「俺も番を作る気はねぇけど、一人くらいガキがいても良いと思ってた」
     番を作る気がないとの言葉に轟の胸が締め付けられる。やっぱりそうなのかと悲しくなった。
     それに、利害は一致しているようでしていない。爆豪が子供と会えないのなら、轟が爆豪の子を産む意味はないんじゃないかと思う。
    「お前が子供と会えねぇなら、子供作る意味ねぇんじゃねぇか?」
     聞くと、爆豪の赤い瞳が光った気がした。
    「いることに意味がある」
     力強い言葉に轟の心が揺らぐ。爆豪に頼れば轟も親父と同じことをしなくて済む。凄く良い話だ。


    良い話に揺れる轟と、深い話はする気がないけど自分の子供を産んで欲しい爆豪のお話。



    オメガバプロヒ爆轟 2

     子供の話をするために轟は爆豪の家へと通うようになった。
     子供を作る気がなくなっていた所に良い話が舞い込み、揺れる轟の心を爆豪がさらに大きく揺らしてくる。子供を作る気はないと言えば良いのに、轟はなかなか口にする事が出来ずにいた。
     学生の時、轟は爆豪が好きだった。
     彼との未来を考えて、そんな関係にはなれないだろうと諦めている。爆豪よりも好きになれる人が出来ず、絶対に番を作らないと周りに話していたのだ。
     それなのに、爆豪が心を乱してくる。好きだった人の子供が産めても番にはなれない。早く断れば良いのに。ほんの僅かな希望を捨てられない。
     もしかしたら、子供が出来たら。爆豪は轟を番にしてくれるんじゃないか。好きになってもらえるかもしれないと思ってしまう。


     ある日、仕事がもう少しかかると言って爆豪が轟に家の鍵を渡してきた。
    「先に行ってろ」
    「お前が終わるまで待たせてくれ」
    「ここにいられっと気になンだわ」
     いいから先に行ってろと轟は爆豪に背を押される。気になるってなんだ。そう思いながら、轟は爆豪の事務所から家へと向かうことにした。
     爆豪の家に着きドアを開けた瞬間、轟は身体に嫌な熱が回っていくのを感じた。

     入っちゃだめだ。

     そう思うのに、轟の足が勝手に中へと進んで行く。部屋の中心で思い切り息を吸い込めば、ブワリと身体中の熱が増す。だめだと思っているのに、轟の意思に関係なく本能的に身体が動いていた。
     爆豪のベッドに潜り込む。布団を深く被ると彼の香りが濃くなり、匂いに包まれて幸福を感じた。

     うっとりする。けれど、足りない。

     轟はクローゼットを漁り、洗濯物を漁り、服という服をかき集めた。
     集めた服達をベッドの上へと散らし、再び中へと潜り込む。さっきよりも、もっと、ずっと、幸福感に包まれた。

     何をしているんだろう。

     こんな事をしたのは初めてだ。爆豪が帰って来たら、怒り狂うに違いない。そう考えていると瞼が重くなっていく。爆豪の匂いと満足感に包まれながら、轟は眠りについた。


     仕事を終え帰宅した爆豪は、部屋の酷い有り様に泥棒でも入ったのかと驚く。人の気配がする寝室を見ると、布団が異様に膨らんでいた。
     そっと中を確かめる。轟が自分の服に埋もれながら幸せそうな顔をして眠っていた。服に埋もれる轟の姿はΩの巣作りそのものだ。Ωは本能的に好きな人の匂いに包まれたいと、こんな風に行動するらしい。
     爆豪はしばらく轟を眺めてから横になった。こんなゴワゴワした所でよく寝られたもんだ。轟を服ごと抱き締める。
    「どーすんだよ、この片付け…」
     初めて見たΩの巣作りは、酷く不格好であるのに愛おしかった。



    オメガバプロヒ爆轟 3 終話。

     温かさと心地の良い香りに包まれている。
     目を覚ました轟は、あまりの心地良さに再びまどろむ。温かさにもっと包まれたい。そんな欲が芽生えて温かさを求めるように腕を伸ばそうとしたが、壁に邪魔をされて叶わなかった。
     途端に切なさを感じる。轟が邪魔をしてくるなと言わんばかりに壁を強く掴むと、指先に布の質感が伝ってきた。爆豪の服だ。轟は眠ってしまう前に、爆豪の家中の服を集めるだけ集めてベッド上に散らしていた。その中に潜り込み眠りについていたのだ。
     けれど、壁になるような物は無かったはずだ。何かがおかしい。
     轟はパッと勢い良く瞼を持ち上げた。目を覚ましてもなお広がる爆豪の服達。轟は自分のしたことが夢ではなかったのだと驚き、次いで温かな壁の正体を知って息を飲んだ。
     こちらの動きを観察するように、赤い目がじっと真っ直ぐ向けられている。普段の鋭さがない爆豪の目は優しく見えて、轟は顔に熱が集まるのを感じた。
    「はよ」
     爆豪が普通に挨拶してくるものだから、轟は「え、お、おはよう」なんて、変な返しをしてしまった。
     それに爆豪が目を細めてフッと笑う。まだ、夢の中なんだろうか。驚く轟の頭を爆豪が優しい手付きで撫でた。
    「下手くそ」
    「え…?」
    「巣作ったンは、初めてなのか?」
     そう言われて、轟は自分のしたことがΩの巣作りだったのだと初めて知った。
    「俺…こんなことしたの、初めてで…だめだって思ったんだ…けど、身体が勝手に動いて…それで…ごめん…」
     轟の声がたどたどしくなる。ベッド上は酷い有り様だ。ごめんの一言で片付けられない。轟の額に嫌な汗が滲む。
     巣作りは求愛と捉えられてもおかしくない行動だ。子供が出来たら爆豪は轟を番にしてくれるんじゃないか、好きになってもらえるかもしれないと思っていたのに。
     それよりも前にとんでもないことをしでかした。嫌われただろうか。轟は不安になる。
    「別に怒りはしねーよ」
     怒らないと言う爆豪に轟は少しだけホッとした。
    「それより…お前、本当に番作る気ねぇのか?」
    「おう?」
    「どー見たって、俺のこと好きじゃねーか」
     爆豪が柔らかく笑いながら言って、轟は驚きに瞬きを忘れた。爆豪の唇がゆっくりと言葉を形作っていく。
    「俺と番になってくれ」
     聞こえた瞬間、轟は爆豪の胸に飛び込んでいた。腰に腕を回してギュッと強く抱き締める。力の強さに笑った爆豪は、轟を抱き締め返してやった。
    「それは番になるってことでいーンか?」
    「うん」
     轟が返事をすると、爆豪は白く柔らかな項に唇を寄せた。

     項を噛む。それは、番うための一度きりの行為。

     爆豪に噛まれることへの抵抗感はない。犬歯が食い込み、ピリッとした痛みが走る。けれど、轟は恐ろしさを感じなかった。
    「あ…っ、は…」
     爆豪が噛んだ項から、痛みと共に幸福感が全身へと一気に回っていく。噛まれているだけなのに、走った後のように息が上がって仕方ない。
    「は…ぁ、ばくごう…」

     これで、轟は爆豪の番になれたんだろうか。

     初めて感じた痛みと幸福感が何ともむず痒い。唇を離した爆豪が噛み跡を愛でるように撫でて、轟はくすぐったさにふるりと身体を震わせる。
     自然と、爆豪と轟は目を合わせた。一度だけ唇を重ねる。初めてのキスは、何だかしょっぱかった。
    「テメェは俺の運命なんだよ」
     爆豪がそう言って轟の頬を手で包む。優しく涙を拭われて、轟は自分が泣いていることに気がついた。
    「それ、本当か…?」
     轟の声が、喜びと困惑に震える。
    「本当だ。高校に入学した時、匂いですぐに運命だと気がついた。けどテメェが番は作んねぇって言うから、俺も一生番を作ることはねぇだろうなって思っとった」
    「じゃあ、なんで…」

     何で番にしてくれたんだ。

     聞くと爆豪が「テメェが番作らんでガキなんて作ろうとすっからだろが!」と声を張り上げて言った。
    「運命がどこの誰かもわからんヤツの子供作るの嫌だろ!」
    「それってもしかして、俺のこと好きだったり…するからか?」
     爆豪が照れくさそうな顔をして視線を反らす。
    「好きだ。ずっとお前と番いたかった」
     そう言った唇がムッと不貞腐れたように尖ったのを見て、轟は声を出して笑った。




    ここまでお読みくださりありがとうございます!
    作者、オメガバ設定や世界観は好きなのですが、妊娠中が地雷なためこれ以上を描くことが出来ません。

    轟くんの意思を尊重して子供を作らない選択をするも良し。
    大事にするあまり、なかなか子作りに励んでくれないかっちゃんに焦れったくなる轟くんがいても良し。
    想像妊娠しちゃっても可愛い。子供が出来たと喜んでいたけど病院で診察して妊娠していないとわかり、お腹から空気が抜けて引っ込んでいくのに「あぁ…」ってお腹を押さえながら泣いちゃう轟くん。そっと頭を撫でて「次がある」って優しい声を放つかっちゃん。
    でもやっぱり想像妊娠であってもお腹の大きな轟くんがダメだぁぁぁなんでだぁぁぁという葛藤が私の中にありました。

    彼らの未来は自由に想像して頂けますと幸いです。
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