トライヨラに行く前に「オユちゃん今日は痛みはない?」
月の旅を終え帰ってきた相棒に問いかける、
足を無くしてしまったものの、命を取り留めた大切な相棒に、目を覚ましてからというもの毎日問いかける
「あぁ、もうなんともねぇ」ニッと笑うオユン、起きるまで手当をし続けた甲斐あって傷口は痛々しいものではなくなった。
しかしいつもの眉間の皺は寄らず以前の様なオユンではなくなっていた、よく窓を眺めている、オルカはドルジに教えて貰ったマッサージをオユンにして、栄養価が高いだろう食事を手作りし、身体が楽になる様にと毎日世話をした、それはずっと危険な目に遭わず穏やかな毎日だった。
オユンとずっと一緒、
それだけでどれだけ良いことか、ただ部族の戦い方を誰よりも楽しんでいた相棒はずっと静かなまま。
羊のメェ、という鳴き声を聞きながら考えていた。
オユンは考えていた、こんなにも安心して幸せそうな顔をしている相棒とまた以前の様な旅がしたいと、しかし第一世界で心配をかけてしまった自分が「なんでもない」と嘘をついてしまった、心配をかけたくなかった、頼れなかった、失いたくなかった、結果相棒の右眼を奪ってしまった、
これからはオルカの好きな様に、楽しめる様に生きよう。そう考えた。
だが過ぎる、あの自分自身が化け物になってしまった中でのオルカの瞳が脳裏に焼き付いて、またあの眼を見たい、次こそは背中を預けて戦いたい、傷の痛みが引いた朝、オルカが買い出しに出かけた時、オレはシドに連絡した。
アイツは許してくれるだろうか。
「ただいまオユちゃん、具合どう?」
「もう大丈夫だって、それより話がある、良いか?」
眼を丸くする相手に目をまっすぐ向ける。
「義足を作ってもらうことにした、シドさんに話をつけてる。」
「え、」
「また旅に出たい、その為に足をつけたいんだ、出かけないか一緒に。」
ぐっと目に力を入れ相手を見る、一気に涙が溢れる相棒の顔を見て合意の顔とすぐわかった。
「う、ん…」
「一緒に行く為にリハビリがしたい、手伝ってくれねぇか」
「うん……」
ボロボロ涙を流しながら飛びついてきたオルカ、2人分の涙で服はぐっしょり濡れた。
羊がメェと嬉しそうに鳴いた。