たとえ大地の恵になろうとも「ちょっと!今は近寄らないで!」
アジトに女性の悲鳴も拒絶の声が響き渡った。
広間にはソロモンが一人残された。
露出度の高い服からは普段の引き締まった体ではなく、たっぷりと脂肪を蓄えた腹が顔をのぞかせていた。
肥大化フォトンの影響だとアンドラスは説明した。
対象の肉体を肥大化させる。顔は丸くなり、至る所に脂肪が着く。
しばらくすれば元に戻る。
しかし、肥大化したソロモンがフォトンを扱うと、そのフォトンを使ったメギドも肥大化する。
そのため、女性メギドを中心に、「太りたくない」という意識を持つメギドから距離を置かれた。
「ハァ……はぁ……この体、重くてすぐに息が上がる……」
体重は150kgを超え、ソロモンの元から備わった筋肉では脂肪を動かすことが追いつかず、多少動くだけで体力を大幅にけずる。
吹き出す汗を拭いながらソファに転がるように腰掛けた。
「あはははっ!オマエ、なんだよ、その格好!」
そこに出かけていたバラムが帰ってきた。その顔は新しいオモチャを見つけた子供のようだ。
「バラム……」
「すれ違った人魚のカノジョから話は聞いたけどな」
バラムはソロモンの隣に座ると、じっとソロモンをみた。
口角をあげ、手を振りあげると、一気にソロモンの腹を揉みしだいた。
「うわっ!」
「へぇ。結構柔らかい……気持ちいいかもな…」
バラムはソロモンを押し倒すようにのりかかり、柔らかく肥大化した脂肪をまさぐった。
「やめろよバラム。くすぐったい……ははっ」
「……こっちは下着が必要じゃないか?今度買いに行くか……」
「着けないし、しばらくすれば戻るよ!」
ひとしきり楽しむとバラムはソロモンの手を引いて上体を起こし、体勢を整えた。
「悪いな。予想以上に面白かったぜ」
「謝ってる顔じゃないだろ……」
「あーあ。こんなに顔も丸くなっちまってなあ…」
バラムは両手でソロモンの頬を包み込んだ。
「でも、俺はどんなオマエでも観察させてもらうぜ。ずっとな」
「なんだよそれ」
「太っても痩せても歳食っても、姿形が変わったところでやめねぇから油断するなってこと」
バラムの手がソロモンの頬を撫でた。
「バラム……?」
次の瞬間、広間に大地をふみしめるような足音が響いた。
「話には聞いたが、なんという脂肪!鍛錬が足りンぞ!まずは走り込みじゃな!」
「ハック!?いや、これは太ったわけじゃ……」
「安心せい!鍛錬すれば元通りじゃ!」
「じゃあ、俺はこれで。ジャラジャラ王、しっかり鍛錬しろよな」
「ちょっとぉ!?」
数日後、元よりも引き締まったソロモンが戻ってきた。