人魚姫「想楽は本当にセイレーンのようです!」
楽譜を受け取ったクリスが、頬を紅潮させて手を握ってくる。
「それよく言ってるけど、怪物なんでしょー……でもまあ、褒めてくれてるんだよねー。ありがとうー」
伝わってくる熱がじんわりと胸を満たし、少しばかりこちらの頬まで染めた。
「今日は助かりました。どうしてもこのパートが上手く表現出来なかったのです。想楽の歌を参考に、なんとか克服出来そうです」
「このくらいお安い御用だよー。僕も歌うの楽しいしねー」
「ありがとうございます。しかし大丈夫なのですか? 随分時間を取らせてしまいましたが」
「まあ特に予定も無かったしねー。セイレーン、さえずり手引き、声無き人魚へ……うーん、こっちはあんまり整ってないね……」
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