まるのうちキラキラあかくろ 駅前の商業施設の自動ドアを出ると、ひやっと冷たい風が頬を撫でた。辺りはもうすっかり暗くて、エントランスの広場にはきらびやかなイルミネーションとクリスマスツリーがきらきら光っている。家族連れや寄り添うカップルがしきりに写真を撮っていた。室内では暑くて外していたマフラーを、もう一度しっかり巻き直す。
「寒いね」
ロングコートのポケットに手を入れて、赤司はぽつりとそう呟いた。その言葉と息が、ふわりと白い息になってきらめく街に溶けてゆく。
「そうですね」
俯いて、それだけ返す。巻き直したマフラーは、さっきまでいた映画館の匂いが映ったのか、ほんのり甘いキャラメルみたいな匂いがした。
寒い、と言いながら、街ゆく人は肩をすくめて早足気味に家路を急いでいたり、カップルたちは手を繋いでいちゃいちゃ歩いていたり。けれど二人はどちらもせず、とぼとぼとした歩みでツリーの前を横切った。
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