あさちゅん💛💜 日課のランニングを終えて軽くシャワーを浴びて、シュウが眠る寝室に戻る。シュウはまだうつ伏せのまま寝こけていて、俺はベッドの横にしゃがみ込んで彼の寝顔を盗み見た。
見方によっては少し強気にも見られるような大きな吊り目の瞳は閉じられていて、代わりに薄いくちびるが少し開いて小さな寝息を立てている。
一生見ていられるかもと思えるくらい愛おしい寝顔に、勝手に笑みが溢れる。だってやっと、長い時間をかけて、シュウとこうやって朝まで二人でいられるような関係になれたんだ。毎朝が幸せすぎて仕方がない。いくら堪能したって足りないんだ。
…とはいえずっとはこうしていられない。だって今日は二人で午前中からデートしようって約束していて、シュウ…は何時に起きるって言ってたっけな。もう起こしていいのかな。
と時間を確認しようと自分のスマホを取り出そうとしたとき、不意にアラーム音がなった。顔を上げると、枕元にあるシュウのスマホが震えていた。
シュウが起きちゃう! って思って、咄嗟にスマホのアラームを消す。シュウは起きようと思ってセットしていたのに、って、そのすぐあとに気づいた。
「あ………っと、どうしようかな」
目の前には相変わらず天使の寝顔のシュウ。起こすのは少し可哀想なくらいぐっすり眠っているけど、アラームが鳴ったってことは起こさなきゃだよね。
顔を寄せて、小さな声で名前を呼ぶ。
「しゅう、しゅーう…」
心なしかシュウの頬が緩んだ気がする。それが可愛くて、嬉しくて、ちょっと調子に乗ってしまう自分がいる。
「ふは、シュウ、俺のシュウ。ふはは」
鼻の頭にキス。頬と、瞼にもキス。楽しくなって、唇にも、三回連続でキス。遠慮のないキスの嵐にさすがにシュウの眉間に皺が寄って、少し不細工な顔で、僅かに目を開いた。
迷惑そうなシュウの顔が面白くて、ちゅっちゅっちゅっちゅ! って顔中にキスの雨を降らしてみる。シュウは顔をさらにくしゃくしゃにして、両手で顔を隠すように俺のキスを封じた。
「…ぅ、ねえ、いまなんじ………」
「今? えーと、八時十分!」
「え?! なんで、アラーム…っ」
がばっと起き上がり、枕元のスマホを確認する。昨夜の名残で、パンツだけ履いたシュウの肌が露わになった。昨日裸で抱き合った仲(まだ回数は片手で数えられるくらいだけど)なんだから、今更恥ずかしいなんてことはないんだけど、やっぱり恋人の素肌というのはいつ見ても興奮するもんだなあ、なんて。
「あー…と、アラーム俺が止めちゃった。だからその、シュウを起こさなきゃって思って、」
「うん?」
「寝顔が可愛かったから、なんか、キスしたくなっちゃって」
「ンなっ…! うぐ、」
ぽっと、シュウの頬が赤く色づく。あ、照れてる。可愛い。
ロボットみたいにぎこちない動きでベッドに逆もどりしたシュウは、枕に突っ伏して動かなくなってしまった。ねえ、背中が丸出しだよ。セクシーな腰と、ぷりんとしたお尻のラインも、ぜーんぶ見えてる。そんなの俺、ドキドキしちゃうんだけど。
「………アー、シュウ?」
「なに」
「照れてるところ悪いんだけど、今もだいぶ…その、アー、俺には、刺激が強いんだけど」
「へっ、え?」
「………」
「んは、は、えへへ。ご、ごめん、なんか」
「いやあの、俺こそ、ごめん。意識しちゃうから、その」
シュウはもう顔だけじゃなくて耳まで赤くなっていて、それでも、ベッドの端に丸められていた自分のTシャツを手繰り寄せて、頭からかぶった。ああなんか、ダメかも。全部可愛く見えちゃう。
これ以上見たら、またシュウを抱きたくなっちゃう。ていうか、もう抱きたいんだけど、その、我慢したくなくなっちゃうから、俺は両手で顔を覆って、シュウを見ないようにした。
シュウも、真っ赤の顔を、俺と同じように覆って隠した。
「ええと…じゃあとりあえず、朝食かな?」
「そ、そうだね。食べて準備して、出発しよ…っか」
「うん、そうしよう」
ちら、と指の間からシュウを見ると、シュウも同じようにして俺を盗み見てて、ちょうど目が合った。恥ずかしいスイッチが切れるまで、しばらく二人でこうしていようか?