【オリジナル漫画】『these stones』閑話休題1 シナリオ[とある事務所。男性と女性1名ずつがそれぞれ書類を片付けている。]
ルッツ「失礼します。」
ルッツ「今月の報告書をお持ちしました。」
ザルディン「ああ……あの野郎の隊か。」
ザルディン「そこが提出場所になってる。置いておいてくれ」
ルッツ「分かりました。」
ザルディン「………今月はこれだけか?」
ルッツ「ええ。これだけです。」
ルッツ「何か?」
ザルディン「あの野郎の隊にしちゃあ、随分少ないと思ってな。」
ルッツ「私達も、そろそろ身の立ち回りを考えなければいけませんので……」
ザルディン「ほう?」
ザルディン「お前たちにしちゃあ、随分聞き分けがいいことじゃねぇか。」
ザルディン「さて……、果たしてその報告書とやらはどこまで目を通す価値があるのかね。」
ザルディン「お前たちの看破できないようなことも、ようやく通っているようなもんだ。」
ザルディン「どっかでそのキレイな面を売って歩いてたほうがよほどマシな人生になるかもしれないぜ? ルッツ・トゥループ殿。」
[ルッツ、ザルディンをまっすぐと見据える。本人も気づかないほどわずかに眉が動く。]
ルッツ「───ふむ。」
ルッツ「なるほど。そういう使い方もありますね。」
ザルディン「………………」
ザルディン「は?」
ルッツ「何を呆けていらっしゃるんですか?」
ルッツ「貴方が仰ったんですよ?」
ルッツ「私の顔は『売れる』…と。」
ルッツ「───ところで……」
ルッツ「既成事実というものについて……どうお考えです?」
[青ざめるザルディン。ルッツはザルディンに近寄り、そっと手を添える。]
ルッツ「人というものは都合の悪いことを隠したがります。」
ルッツ「立場、あるいは偏見の目から、過ぎたことを避けさせようとする。」
ルッツ「もちろん、成すべきことが『正式な命令』とあらば、逃げも隠れもできないでしょう。」
ルッツ「さて……実際にその時に特をするのは」
ルッツ「一体どなたなのでしょうね……?」
[額に汗をかきながら、ルッツの手を見つめるザルディン。ルッツは彼の様子をじっと見つめているが、やがて彼から返答がないことを確認するとゆっくりと手を離し、にっこりと微笑む。]
ルッツ「───ふふ、すみません。私としたことが、」
ルッツ「随分と長居をしてしまったようです。」
ルッツ「アルディナさん。貴女への書類もお持ちしていますので、よろしくお願いいたします。」
[ルッツに呼ばれた、奥のデスクの女性が手を振る。]
ルッツ「では……失礼致します。」
[礼をするルッツ。彼はそのまま部屋から出ていく。呆然とそれを見送るザルディンと、澄ました顔で見送るアルディナ。]
アルディナ「……あなた、喧嘩売る相手を間違えてるわね。」
ザルディン「……そうだな」
アルディナ「後が無いなら作ればいいんだもの。踏み台にされないことね。」
ザルディン「もしそんなことがあるなら、ウチはとっくに潰れてるだろうよ。」
アルディナ「……………ええ。」
アルディナ「それもそうね。」
[閑話休題1 終了]
あとがきメモ
「何なんですかね、このキャラ。」
「この物語ではキャラクター一人ずつに『主義』が存在しており、このお話においては政府側の立場にいる人間たちが自分が身を置いている『主義』に基づいて書いたつもりですが、如何せん作者がバカなので上手くかけないというアホさ加減。」
「解説しなきゃ意味のないもの描いてどーするつもりなんですかね……僕ぁ…?」
「ルッツ自体は見えませんが『革新派』の人間で、『革新派』に当たる人物は、基本的に物事が先に進めば手段や目的を選ばない人が多く、都合の悪いことをもみ消す実力や自信、もしくは経済力や政治力、何かしらの後ろ盾を持ち込める人間が多いです。」
「しかし、ルッツの上司兼雇い主(ということになっている)のイーギル・トーヴは『無所属派』という主義を持っており、この主義の人間は自分以外の物に何かがあっても基本的にほとんどの場合責任を持たない、興味が湧かなかったりします。誰にも支配されずやりたいことをやるという、見ようによっては羨ましくもこの世で一番はた迷惑な存在になりがちなのがこの主義ですが、」
「ルッツはその奔放さ加減を逆に当てにしており、組織なんぞにいたらやらかしまくるであろう彼にあえて従属することで、ある程度のことを『彼を隠れ蓑にして』行える立場になっています。」
「半分くらいはイーギルの存在を面白がっていなくもないのですが、彼がなぜ『革新派』なのか、この会話の裏で行われているのは何なのか? ということに関してはなるべく本編で書いていきたいところではある。」
「ヒントは第一話に出したイーハイ・トーヴとササラギの行動に無くは無いように作ってます。」