尾月+勇 さとがえり「ならば、私もぜひご同行させていただきたいです!」
向けられた視線はそれは酷く眩しすぎて、火傷するかと思った。
この手の人間は常にああなのだろうか。
がたん、ごとん。
長く連なる座席から見える車窓が、長閑な田園風景を左から右へと流していく。普段乗っている通勤電車と違い、俺を含めて片手で収まる人数しか乗せていない車両は、酷く静かだ。
本来なら心地よい揺れと規則的な音が睡魔を引き寄せるはずなのだが、隣で不機嫌をあらわにして盛大にわざとらしい息を吐く男と、俺を挟んで反対隣に座る喜びを全身から溢れさせる男はそれに倣う気はないらしい。
「ふふ、楽しみですね。兄様、義兄様も」
上機嫌をそのまま言葉にも乗せて、花沢勇作は俺たち二人を交互に見ながら微笑んだ。男とは思えない長いまつ毛が動くと音がするような錯覚すらする。俺は思わずそれから視線を逸らした。
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