親友の結婚 美和子はコーヒーを一口飲んでカップを置くと、一呼吸置いた。
「由美、私、高木君と結婚することにした」
すこしはにかんだその笑顔は柔らかく、意思の籠った優しい音がじわっと私の心に沁み込んだ。
「よかったわね」
考えるよりも先にその言葉が出てきた。
ぐっと目頭の熱さを感じると、途端に溢れた。
湧き上がる感情が形になる前に流れ出ていく。
顎を伝う冷たさに自分が泣いていることを認識した。
心からの安堵と、少しの寂しさが混じっている。
慌てて紙ナプキンで目を押さえてから、その時作れる最大の笑みで言った。
「おめでとう、美和子」
言っているそばから口元が歪んで、また溢れ出てきてしまった。
「やだ、もう恥ずかしい、全然止まんない」
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