鋼の翼 俺は子供らしくない子供だった。
我慢するより諦める方が楽だと早々に知ってしまったのだ。
初めからなかったのかもしれないと思えば、全てが不必要なものに感じられた。
生きていく上で必要なものはだいたい漫画とゲームが教えてくれた。人間の口から出るきれいごとが大嫌いだったし、俺が欲しかった言葉は同意でも否定でもない。現実だ。
無情で残酷で、たまにほんの少し優しくて、時に色んなことがどうでも良くなっちまいそうな、そんな現実。
泣かない子供の頃に比べて、今は身体と共に声も大きくなった。
あの日、俺は初めて自分の本当の声の大きさを知った。
全身から絞り出すように声を上げ、ただひたすらに名前を呼んだ。周りの目も気にならないほど夢中で、声にならない音が叫んでいるのを聞いたまま、咆哮を腹の底から唸らせ続ければ、顬がぎゅっと痛んで鼻の奥の苦味が降りてくる。
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