玉響~後日談ダウンジャケットの擦れる音と握った缶コーヒーから立ち上る湯気が真冬の空へと消えてゆく。
一郎の快気祝いには思いの外、人が集まりほろ酔いの二人は皆と別れて夜の街を並んで歩いた。
「一駅くらい歩けるだろ」
「誰に物言ってやがんだ。てめぇの方が病み上がりだろうが」
二人はほんの少し前のことを話し、笑いながら白い息を吐いた。
酒が飲める歳になった一郎は店でジョッキ片手にロストした世界の話を皆に語り聞かせその場を大いに湧かせてた。
ロストした世界に左馬刻が迎えに来るまで、一郎はそこにいた人間全員に声をかけ、噴水の前で待っていたのだ。
本来ならロストした世界では見えないはずの他人が一郎には見えていた。それはもう宿命のようだ。
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