スキップ(降風)出会いと別れは双子の兄弟であり、愛と憎しみはジキル博士とハイド氏のようなもの。そして正義と悪意はコインの裏表。そんな分かったようなことを嘯く俺はまだ20代の、社会的に見れば人生の何たるかもまだわかっちゃいない若造だ。
それでも、そんな警句を弄びたくなる程度には色んなものを見てきた。警察官、それも公安なんて部署にいれば、人間の美しいところよりも醜いところの方が目にする機会は多い。人というのはこんなに残酷になれるのかと吐き気を覚えたことだって両手両指の数でも足りない。
そんな俺が、その日、世にも恐ろしいものを見た。
深夜の警視庁。その廊下でスキップする上司の上司だ。
「……あの先って」
「仮眠室だな」
「今、仮眠室にいるのって」
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