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    オルト

    どうしようもないものを投下

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    オルト

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    成人タイカケ。自覚あり両片想い。

    『今からいいものを届けに行くぞ』
     ミナトッチからそう連絡が来たのは、十分ほど前。ちょうどシャワーを浴びて出て来たところだった。何を? と聞いても返事は無かった。既読のマークすらつかない。
    「なんだろ?」
     髪の毛を乾かしながら、「いいもの」に想像を巡らせる。ミナトッチ特製の玉子焼き? それともモツ煮?
     ちょうどデリバリーでも頼もうかと思ってたところだから、少し待ってみよう。乾いた髪を梳かしてバスルームを後にする。冷蔵庫の中身を確認していると、チャイムが鳴った。モニターに映るミナトッチ、それに、
    「あれ?」
     もう一人いる。俯いていて顔は見えないけど、きっとこれは……。
    「ミナトッチ!」
     ドアを開けると、ほんのり顔の赤いミナトッチと、そんなミナトッチに支えられているタイガが。
    「やっぱり……。どういうこと? ミナトッチ」
    「だからさっき、いいもの持っていくって言ったろ?」
    「タイガのこと?」
    「そ。今日仕事が一緒で、さっきまで夕飯食べて飲んでたんだけど、珍しく香賀美が潰れちゃってね。カズオの家が近かったから、置いて帰ろうと思って」
     ミナトッチ、意外と雑だな、なんて思いながらタイガを受け取る。確かに、この状態のタイガを帰すのは俺も躊躇う。でも、だからって……。
    「俺の気持ち知っててどうして?」
     タイガに聞こえないようにミナトッチに囁くと、意地悪そうな笑顔を返された。
    「だからだよ」
     ミナトッチはそう言って、おそらく食事をしていた店のものであろうお弁当の包を俺に渡して、さっさと帰ってしまった。俺はタイガを抱えていた腕を揺らして、声を掛ける。
    「タイガ、起きて……」
    「ん? あれ……」
     タイガは顔を上げて、辺りをきょろきょろと見回す。俺に預けていた身体をゆっくり起こし、俺の顔を見る。
    「おー、カズオだぁ……」
     いつもとは違い、ふにゃっとした笑顔を俺に向ける。
    「なんで? おめぇいんの? ミナト先輩は?」
    「酔っぱらったタイガを俺に預けて帰ったよ」
    「……そっか。ここカズオんちか」
     そう言えば、タイガがここに来るのは初めてだ。まさか、こんないきなり来るなんて……。
    「しっかりして、タイガきゅん。ほら、お水あげるからこっちおいで」
     とりあえず、こんなに酔ったままでは良くないだろうから何か飲ませないと。そう思ってキッチンに言おうとしたら、後ろからタイガに抱き締められた。
    「えぇ、た、タイガ?!」
     びっくりして裏返った声が出る。タイガは俺の背中にぐりぐりを額を押し付けている。
    「ど、どうしたのタイガきゅん?」
    「カズオの匂い、する……落ち着く」
    「ひえぇ……」
     タイガってば、どうしちゃったんだろう?
    「カズオ、おめぇ、かわいいな」
    「は、ちょ、タイガきゅん酔いすぎじゃない?」
     逃れようと思っても、タイガはちっとも話してくれない。酔っているとは思えない力だ。
    「かずお、好き……」
    「へっ?」
     タイガはそう言うとフッと力が抜けて、その場に座り込んでしまった。すぅすぅと規則正しい息が聞こえる。
    「ちょ、ちょっとぉ……」
     ドキドキして熱くて苦しいのに、その原因を作った本人は夢の中に言い逃げ。
    「好き、って、どういう意味だよぉ……」
     俺と同じ「好き」なの?
     明日の朝、良いが冷めたタイガに聞いてみよう。とりあえず今は、なんとかしてタイガをベッドに運ぶ方法を考えないと。
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