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    オルト

    どうしようもないものを投下

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    オルト

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    バレンタインのタイカケです。
    両片想いからの。
    そして、遂に毎日SSが半年を超えました!!!わー!
    ここまで続くとは思いませんでした。
    これからも頑張ります!

    「あれ? カズオは?」
     いつも通り食堂に行くと、そこに一人だけ、カズオの姿だけがなかった。
     朝食に手を付け始めていた皆は、ちらりと俺の方を見た。
    「おはよう、タイガくん! カケルさんなら、今朝早く出かけたよ」
    「はぁ?!」
    「なんだか誰かと会うみたいだったけど……」
     シンがウインナーを摘まみながら言った。
     聞いていない! 今日は宿題見て貰ったり、一緒にトレーニングしたりして過ごそうと思っていたのに。しかも今日は……。
    「なんでだよ。カズオの馬鹿」
     小声で呟きながらカズオの席を睨み、俺は自分の席に着いた。

     午後になっても、カズオは帰ってこなかった。俺は落ち着かなくて、地下で滑ったり外で筋トレをしたり、寮の中をうろうろして過ごした。キッチンからは甘ったるいチョコレートの匂いが漂う。レオが何か作っているみたいだ。
    「タイガくん、味見しますか?」
    「……いや、いいよ」
     レオが俺に声を掛けてくれたのは、朝からずっとソワソワしている俺を心配してくれてのことだと思うけど、今はチョコを食べる気にはなれなかった。
     部屋に戻ってベッドに寝転がる。スマホを確認しても、カズオからの連絡はない。
    「なんだよ、カズオの馬鹿……」
     今日はバレンタイン。チャラチャラしたイベントごとが好きなカズオのことだから、俺は絶対に俺にチョコをくれると思っていた朝一番で。いつも俺にベタベタしてくるし、一応俺が一番仲いい(と思ってる)から絶対バカみたいに高いチャラチャラしたチョコを(本命だとか義理だとか友チョコだとか種類はしらねぇ)俺にくれると思っていた。勝手に期待して落ち込んで、バカかよ俺は。
    「ん……?」
     ていうか、バレンタインの今日に朝から会う相手って誰だよ……?
     ぞくりと嫌な感覚が背中を走る。カケルが誰と会っていようが俺にはなにも言う資格はないけれど……。相手について、皆目見当がつかない。カズオは基本的に休みの日に仕事を入れない。だから、仕事ではないだろう。じゃあ、誰と?
     普段の休みは寮にいることが多い。そうでなければ、ヒロさんと秋葉原に行っているか、俺が高架下に行くのにくっついてくる。
    「ヒロさんと、か……?」
     そう思ったが、この土日はヒロさんは仕事が入っているとカヅキさんが言っていたのを思い出した。ますますカズオが会っている相手がわからない。時々パソコンで話してるアイツか? いや、でも海外にいる人って言ってたし……。
    「なんだよ、クソ……」
     俺の知らない相手と、どこかで一緒にチョコ食ったりしてるんだろうか?
     なんだか悔しくて涙が出て来た。カズオがバレンタインに会うのは、俺じゃない誰かなんだ。

    「……ガ。……タイ……」
    「……ん?」
     どうやら眠ってしまっていたらしい。誰かに呼ばれた気がしてそっと目を開けると、そこには今日一日めちゃくちゃ会いたかった男が、俺の顔を覗き込んでいた。
    「カズオ……っ!?」
     驚いて勢いよく身体を起こすと、カズオの額にごちんと頭をぶつけた。二人して「いってぇ!」とぶつけた箇所をおさえる。
    「おめぇ、今日どこ行ってたんだよ……」
    「え? 実家」
    「じ、実家ぁ?」
     あまりに予想外の外出先に、俺は間抜けな声で反応してしまった。
    「なんだ、実家かよ……」
     ホッとして全身の力が抜ける。それと同時に、先程勝手に落ち込んでいた自分が恥ずかしくなってきて俯いた。膝の上でぎゅっと拳を作り、睨みつける。そうしないと、また涙が出そうだから。
    「タイガ」
     カズオが俺を呼ぶ声が聞こえるのと同時に、睨んでいた拳が何かで隠れた。涙で滲んでよく見えない。乱暴に目を擦ってもう一度目をやる。
    「これって……」
     俺の目に映ったのは、ピンク色でハートの散りばめられた包み紙にくるまれた小さな箱。ハート形のシールが貼ってあり、たぶん「ハッピーバレンタインデー」って書いてある。
    「受け取ってくれる?」
     顔を上げると、しゃがみ込んだカズオが、顔を赤くして上目遣いで俺を見ていた。は? めんこい。なんだ、この状況は?
    「え、あ……ありがと」
     俺がそっとその小箱を受け取ると、カズオは安心したような顔を俺に向けた。
    「え、なんで、これ?」
     頭が回らないのは、寝起きだからなわけじゃない。
    「実はね、実家でチョコを手作りしてたの。うちの会社の製菓部門のショコラティエに頼んで、指導してもらったんだ。おれっちの作ったチョコ、タイガに渡したくて」
    「カズオ……」
     しょこらなんとかが何かはわからないが、とにかくコレは、カズオが俺の為に作ってくれたチョコらしい。
    「タイガきゅんは、バレンタインなんてチャラチャラしてるって言うかも知れないけど……おれっちは、ホンキで思いを込めてチョコ作ったんだ」
    「それ、って……」
    「……全部言わなきゃ、わかんない?」
     わからないというか、なんていうか……。俺が今考えてることは、俺の妄想と願望が混じっただけのものじゃないって、思っていいのか?
    「わ、わかんねーから、教えろよ」
     カズオはいつだって、俺に色々教えてくれる。聞けば、だいたいのことは答えてくれる。
    「しょ、しょうがないにゃあ」
     そう言って、教えてくれる。
    「あのね、おれっち……僕は、タイガのことが」
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